第83話 鉄格子の先に
「なんだこれ?」
それから魔物を倒しながら進んでいくと、大きな鉄格子が見えてきた。洞窟の天井や壁に刺すように設置されており、これ以上先に進むことができない。
「鉄格子ですよね? なんでこんなものがあるんでしょうか?」
「ロイドさま。どうされますか?」
俺はリリナとアリシャに言われて少し考える。それから、鉄格子に近づいてよく観察すると、その格子が内側から設置されていることに気づいた。
「わざわざ鉄柵を作るってことは、この先に入ってこないようにしてるんだよな? て言うことは、俺たちが入ってきたところ以外に入り口があるってことだ」
設置の仕方もそうだが、危険だからここに入るなということなら、滝の裏側の洞窟の入り口すぐの所にこの鉄格子を作るはずだ。
そうではないということは、俺たちが入ってきたところとは別の所から入ってきた人が、この鉄格子をつけたということになる。
「あんまり手荒な真似はしたくないけど、ここは通らせてもらうとするか。二人とも、少し離れていてくれ」
俺は二人に距離を取ってもらってから、鉄格子の一本を掴んでぐっと引っ張る。当然、タダ引っ張っただけで壊せるとは思っていない。
俺はそのまま引っ張っている手に力を入れながらスキルを使う。
「『豪力(魔)』!」
バギバギッ!! ガランッ、ガラッ!
すると、一本の鉄格子がそんな音を立てて、折れながら抜けた。俺はその調子で他の鉄格子も壊して、自分たちが通れるだけのスペースを作っていく。
……あんまり壊し過ぎるのも悪いから、俺たちが横になって通れるギリギリくらいのスペースを作るだけにしておこう。
俺はそう考えて、慎重にかつ大胆に鉄格子を壊していった。
「よっし、これだけスペースがあれば平気だな」
俺が十分なスペースを作って振り向くと、二人は目をぱちぱちとさせていた。
「す、凄いですね、ロイドさま」
「ロイドさま、ワイルドな突破方法ですね」
俺は二人の反応を見てから、壊した鉄格子を見て目を細める。
確かに、普通の人間がやることじゃないよな、鉄格子を手で壊すって。
俺は壊した鉄格子を見て、自分のバケモノ染みているということを再確認するのだった。
それから鉄格子の奥を少し進んでいくと、リリナが何かに気づいたように声を漏らした。
「え?」
「リリナ? どうかしたのか?」
リリナは『ちょっと待ってください』と言って、よく耳を澄ませる。それから、ピコピコッと銀色の耳を動かしてから俺を見る。
「車輪の音がします」
「車輪の音?」
俺はリリナの言葉に眉根をひそめる。
こんな洞窟の中でそんな音が聞こえるってどういうことだ?
俺が首を傾げていると、アリシャがリリナをちらっと見る。
「トロッコが通ってるってこと?」
「ううん。なんかレールの上を走ってるような音」
「レール?」
アリシャはリリナの言葉を聞いて俺と同じように首を傾げる。
洞窟でレールの上を通って車輪の音がするもの。
「……トロッコでも通っているのか?」
俺がそう言うと、リリナがこくんと頷いた。
洞窟などで物資を運搬するときなどにトロッコを使うことがあると聞いたことがある。おそらく、リリナが聞こえたという車輪とレールの音は物資運搬用のトロッコの音なのだろう。
なるほど。それなら、鉄格子をして魔物が入ってこないようにしていたのも納得がいく。
「もしかしたら、そのトロッコに頼めば、俺たちを出口まで乗せてもらえるかもしれないな。少し急ぐか」
トロッコが使われているということは、この洞窟の中は結構広いのかもしれない。それなら、そこに乗せてもらった方がいいだろう。
俺はそう言ってから、リリナの耳を頼りにトロッコの音がする方へと走って向かっていった。
少し走っていくと、道が徐々に洞窟がひらけてきて敷かれているレールを発見した。それから少しして、俺たちでも分かるくらいにレールの音が近くなってきた。
「お、あれかな」
俺は遠くに見えてきたトロッコに見つけてもらえるように、大きく手を振ろうと片手を上げようとした。
「……なにあれ」
「リリナ?」
すると、リリナがトロッコの方を見ながら目を見開いて動かなくなった。銀色の耳を小刻みに動かしながら、リリナはトロッコを見る目を険しいものに変えた。
リリナの様子がおかしいと思っていると、リリナはハッとしてから、俺とアリシャの手を取って岩陰に俺たちを連れて行った。
「どうしたんだ、リリナ?」
「リリナ、トロッコ行っちゃうよ」
俺とアリシャがリリナの突然の行動に戸惑っていると、リリナはトロッコの方を指さして慌てた様子で口を開く。
「あのトロッコ、後ろに積んでる荷物がおかしいんです」
「おかしい? トロッコなんだから、炭鉱とか運んでるんじゃないのか?」
俺が首を傾げると、リリナは静かに首を横に振って眉根を下げる。
「『空間認知』で確認しましたけど、多分人を運んでます」
「「……え?」」
人を運ぶ? 何だその急激なホラー展開は。
俺は思いもしなかったリリナの言葉に、少しだけ固まってしまうのだった。




