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第82話 二人の成長

「一体、どこまで続いてるんだろうな。この洞窟は」


 滝の裏側にある洞窟に入った俺たちは、その中をしばらく歩いていた。しかし、しばらく歩いても特に何があるわけでもなく、ただ洞窟が広がっているだけだった。


 ダンジョンというにしては何も仕掛けがなさすぎる気がする。そうなってくると、タダの洞窟って感じなのか?


そんな事を考えて歩いていると、リリナが銀色の耳をぴくんっと動かした。


「ロイドさま。この先に何かいます」


 リリナはそう言って短剣を引き抜くと、俺の前に立つ。俺とアリシャはリリナの言葉を聞いて、各々武器を構えた。


「魔物か何かか?」


「おそらく、そうじゃないかなと。ロイドさま、ここは私にお任せを」


 リリナは得意げな笑みを俺に向けてから、数歩前に出ていつでも魔物に飛びかかれるように構える。


 川に流されたり、滝の裏側にある洞窟に来たりする中で、リリナとアリシャは自分たちの力不足を嘆いていた。


 そんな一件があったせいか、二人は今まで以上にやる気になっている気がする。


 すると、洞窟の岩陰から一メートルくらいの大きさのヤモリのような魔物が二体現れた。


 その姿が見えてリリナが飛び出そうとした瞬間、アリシャがリリナの前に立った。


「いいえ。ここは私にお任せください」


「え? ちょっと、アリシャ……」


「『瞬風』……『狙撃』、『狙撃』」


 そして、アリシャはリリナの制止しようとする声をスルーして、矢を二発放った。


「「ギュッ!!」」


 すると、アリシャの放った矢はヤモリのような魔物の頭に見事に命中し、ヤモリのような魔物は悲鳴を上げて動かなくなった。


「ああっ! ア、アリシャ! 私の分は?」


 倒されたヤモリのような魔物を見て、リリナが抗議するようにアリシャにずいっと詰め寄る。


 アリシャは一瞬眉根を下げてから、そのまま眉根を寄せてリリナを見る。


「わ、私も負けられないもの」


 それから、アリシャは俺の方をちらっと見た。


 どうやら、アリシャもリリナと同じようにさっきまでの一件を気にしているみたいだ。というか、さっきまでの失態を取り戻そうとしているのかもしれない。


 これだけアリシャが強気に出るというも珍しい気がする。


「むぅ。それなら、出てきた魔物は早い者勝ちってことでいいんだよね?」


「いいよ。私の方が先に魔物を倒せるしね」


「それなら、私はアリシャよりも先に魔物見つけるから!」


 二人はそう言うと、張り切ったように洞窟の中を進んでいった。


……いや、そこまで張り切らなくてもいいんじゃないか?


 俺はそんな張り切って歩いていく二人の姿を見て、そう思わずにはいられなかった。


 それから、二人の戦いは想像以上に白熱していった。


 リリナが魔物を見つけたと思ったら、すぐにアリシャが矢で魔物を撃ち抜き、リリナがそれよりも早く魔物を見つけようとして、アリシャもそれに対抗して。


 その結果……二人は新たにスキルを習得した。




「『空間認知』……いた、そこ!」


「『夜目』。『瞬風』、『狙撃』!」


 リリナとアリシャは新しいスキルを使って、暗い洞窟の中の魔物を次々に倒していった。


リリナの『空間認知』は、『気配感知』の上位互換のようなスキルだ。一定間隔にいる敵や攻撃などがどこから来るのか詳細な位置まで分かるスキルらしい。


そして、アリシャの『夜目』は暗い場所や霧の中でもどこに相手がいるのか見えるスキルらしい。


 ただでさえ強かった二人が競い合った結果、二人とも新たな力を手にしたらしい。


「いや、ヒロイン補正ってやつかもな」


 以前、俺が危険にさらされたとき、リリナが一気にスキルを覚えたときがあった。本人は愛の力だと言っていたが、俺はそれをヒロイン補正だと思っている。


 二人が俺のことを本気で主人公のようだと思っていれば、主人公の危機にヒロインが力に目覚めるというのも納得がいく。


 今回は自分のふがいなさを嘆いて強くなろうとした結果、新たなスキルを得たのだろう。


 そんなことを考えていると、リリナとアリシャが小走りで俺のもとに駆けつけてきた。


「ロイドさま、ロイドさま! 私の戦いどうでした?」


「ロイドさま。私の戦い見てくれましたか?」


 すると、二人は褒めて欲しそうに俺の顔を見上げていた。


 リリナの銀色の耳が何かを期待するようにぴょこぴょこっと揺れていたので、俺はいつもしていたようにリリナの頭を優しく撫でる。


「にへへっ」


 すると、リリナは嬉しそうに笑いながら、尻尾をフリフリとさせていた。


 あれ? そういえば、アリシャを褒めるってどうやればいいんだ?


「ろ、ロイドさま」


 俺がそんなことを考えていると、アリシャは頭を撫でられているリリナを羨ましそうに見てから、じっと俺のことを見つめてきた。


 アリシャが期待の込めた目でじっと見つめてきたので、俺はリリナと同じように頭を撫でる。


 すると、アリシャは満足げに目歩細めて心地よさげにしていた。


「ふふっ」


 ……心を開いた人に頭を撫でられて嫌がらないのって、獣人だけじゃないのか?


 俺は以前にリリナから聞いた言葉を思い出しながら、二人が満足するまで頭を撫でるのだった。


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