第81話 滝の裏側にある大穴
俺は重量級の魔物の死体を足場にして、洞窟のような穴に向けて大きな跳躍をした。二人に体にしがみついてもらいながらの跳躍だったが、飛距離としては十分すぎるくらいのジャンプを決めることができた。
「ろ、ロイドさま。ぶつかってしまいますよ!」
「やばい、完全に飛び過ぎた」
届かなかったら話にならないと思い、力強く跳び過ぎたのは悪かったらしく、俺はそのまま岸壁に激突しそうになってしまった。
両手は二人を抱いているので使うことができない。そうなると、使えるのは足くらいになってくる。
「クソッ、『鉱石化(魔)』!」
俺は咄嗟に着地するはずだった足を鉱石化させて、岸壁に靴の足裏をつけて踏ん張る。
ガガガがガガガッ!!
すると、鉱石化した足と岸壁の岩が削れるような音が響いた。俺は体に走る衝撃を押さえ込みながら、反り立つ岸壁に足を置いて踏ん張りを利かせる。
「「ろ、ロイドさま!」」
「くっ……大丈夫だ!」
二人の心配する声を聞きながら、なんとか踏ん張って岸壁から距離を取らず、落下のスピードを落とすことに努める。
それから、俺は近づいてきた洞窟のような穴の入り口を見つめながら、タイミングを計る。
「ここだ! 『豪蹴(魔)』! 『鉱石化』!」
そして、俺は穴の入り口がかかった瞬間にスキルを使ってまた踏ん張りながら大きく跳んだ。
一気に体が前のめりになるのを抑えながら、洞窟のような穴に体が吹っ飛んでいった。それから、俺は両方の足を『鉱石化』させて、跳んだ勢いを殺すように雑に地面に足を着いてブレーキを掛ける。
ガッ、ガガガがガガガッ!!
すると、地面を削る音を立てながら、何とか着地することに成功した。
それから、俺はふぅっとため息を吐いてから二人を下ろす。
「二人とも無事か?」
「「ロイドさま! 大丈夫ですか⁉」」
「え? おれ?」
リリナとアリシャは前のめりになって、不安そうに眉尻を下げて俺を見上げていた。俺は思いもしなかった反応に目をぱちくりとさせる。
すると、二人は『鉱石化』を解いた俺の足を入念にチェックし始めた。
それから、しばらく経って俺に異常がないことを確認してから、立ち上げると怒ったように頬を膨らませた。
「ロイドさま! 今のは無理し過ぎですよ!!」
「あまり無理をされると心が持ちません」
俺は二人に迫られて、後退るが二人は折れる気配がない。
「えっと、すまんかった」
俺が思わず謝ると、二人とも頬を膨らませていた息を吐いて眉尻を下げた。
「ロイドさまには助けられたばかりです。もっとできることを増やさないと」
「私もロイドさまの足を引っ張っている気がしてきました」
すると、リリナとアリシャはガクッと肩を落としてそんなことを口にした。
「いやいや、二人がいなければ追っ手に回り込まれた時点で打つ手なしだったって」
ここまで来るのにどれだけ助けてもらったか数えきれない。
俺はそう考えて言ったのだが、二人は納得していない様子で俺を見てから、もっと頑張らなくてはとやる気になっていた。
今で十分すぎるくらい頼りになるのにな。
俺はそう考えて、一人頬を掻いた。
それから、俺は目の前に広がる洞窟のような大穴を見て眉をひそめる。滝がすぐ近くにあるせいか、全体的に水気を帯びている大穴は遠くまで続いているように見えた。
「それにしても、ここは一体何なんだ?」
「ダンジョンとかその類なんでしょうか?」
「ダンジョンか……そうなってくると、少し面倒だよな」
俺はアリシャの言葉を聞いて小さくため息を吐く。
一刻も早く俺の名前を使って悪さをしている奴を捕まえたいのに、こんなところで悠長にダンジョンを攻略している時間はない。
でも、もしもここがガランの近くまで繋がっている洞窟とかだったら、追っ手にバレずにガランに向かうことができるかもしれない。
俺は少し考えてからちらっとリリナを見る。
「リリナ。何か聞こえるか?」
「いいえ。特にここからは何も聞こえてきません」
リリナは銀色の耳を動かした後、ふるふると首を横に振った。
俺は後ろを振り向いて滝の裏側を見てから、顔を洞窟のような大穴の方に戻す。
「とりあえず、進んでいくしかないか」
ここから滝に飛び降りるわけにもいかないし、川を伝ってどこかに流されるのも得策ではないだろう。
俺はそう考えて、二人と共に大穴の中を進んでいくことを決めたのだった。




