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第80話 度重なる不幸

「このままだと滝に落ちるぞ!」


 俺は乗っている木が滝に向かってという状況を前にして、そんなふうに叫んでいた。


 辺りに何か『硬糸(魔)』を巻きつけられそうな物はないかと思って探すが、こんなときに限って何も見当たらない。


 徐々に滝に近づいていくという状況に、焦りってまともに頭が回らなくなっていく。


 ズウゥン!


 すると、さっき倒した魔物が俺たちの乗っている木に体をぶつけてきた。すでに死んでいるのだが、無駄にでかい体が木に衝突して揺らされる。


「うおっ、こいつでかい体しやがって」


「ロイドさま、なんだか流されるスピードが上がった気がします」


「ああ。何とかしないとではあるんだが……リリナ?」


 俺とアリシャがそう話していると、リリナが体を前のめりにさせて滝の方をじっと見ていた。銀色の耳をぴくぴくっと動かして、真剣にじぃっと何かを見ている。


「不自然に風が抜けて出てくるような音が聞こえます」


「風が抜出てくる音?」


「はい。洞窟とか何かがあるんじゃないかなと」


「もしかして、滝の裏とかにあるってことか?」


 ゲームなんかだと、滝の後ろに洞窟があったりする。結構定番のイベントな気もするが、『最強の支援魔法師、周りがスローライフを送らせてくれない』のアニメでそんなシーンがあった記憶はない。


 ただアニメで出てこなかっただけってことなのだろうか。


「正確な場所までは分かりませんけど、おそらくそうじゃないかと思います」


「それなら、そこになんと逃げ込むことを想定して動こう。滝の下に落ちて滝つぼにでも落ちたら、そこから上がってくるのは無理だろうし、それが一番生存率が高そうだ」


 この先にある滝の高さが分からない以上、滝つぼ以外の場所に落ちても無傷でいることはできない。


それなら、あるかもしれない洞窟に向けて飛んだ方がいいだろう。


「ですが、ロイドさま。岸壁までどうやって跳ぶんですか?」


 俺はアリシャの言葉に少し考えてから、プカプカと浮いているモササウルスのような魔物を親指で指さす。


「……こいつを蹴っ飛ばして、洞窟に跳ぶか。『縮地(魔)』があるから跳べるはずだ。足場はこいつがあれば問題ないだろう」


こいつの体重自体は知らないが、モササウルスって恐竜だし、体重は数トンくらいあってもおかしくない。それを足場に、でければ滝の裏にある洞窟に行くことも難しくはないだろう。


 俺はそこまで考えてから、迫ってきている滝の方をちらっと見る。


「時間もないし、この魔物に乗り換えよう。二人はさっきと同じように俺にしがみついていてくれ。『支援』をもう一度かけ直して置くから、振り落とされないでくれよ」


 俺はそう言って、二人に『支援』をかけ直す。さすがに、洞窟の方に飛び移っているときに、スキルの効果が切れるなんて事態は避けたいしな。


 俺が二人に支援をかけ終えてから、俺たちは木から魔物に飛び移る。それから、二人が俺に掴まるのを待っていると、二人は意気込んだように俺にしがみついてきた。


「分かりました! ちゃんと掴まっておきます!」


「ロイドさま。よろしくお願いいたします」


 すると、二人ともやけにぴったりと体を寄せてきて、俺は屈伸するのも難しいくらいにくっつかれてしまった。


「あの、二人とも俺が跳べる範囲でちゃんと掴まってくれればいいからな」


 ……せめて『縮地(魔)』を自由に使えるくらいのスペースは欲しい。


 俺はそう考えて、少しだけ二人にスペースを作ってもらってグッと膝を曲げてタイミングを計る。


 そして、モササウルスのような魔物が滝から滑り落ちていくのに合わせて、俺は魔物の体の上を走って壁際に向かっていく。


「見えました! あそこです!」


 俺はリリナが指さした方を確認して、滝の裏に洞窟のようなものがあるのを確認した。


「あれか! 行くぞ! 『縮地(魔)』」


 そして、俺はモササウルスのような魔物を足場にして、スキルを使ってその穴に向けて大きな跳躍をした。


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