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第75話 馬車での攻防

「え、検問? なんでこんな所で」


 御者の男は突然現れた馬車に体をビクンとさせて、馬車を減速させようとした。


 俺は馬車の速度が緩まったのを見てから、慌てて御者に口を開く。


「御者さん! 止まらないで下さ、あれ憲兵じゃないですよ!」


「え? 確かに、憲兵というのにしては強面過ぎる気もしますな。もしかして……山賊? うわっ! こっちからも来ましたよ!」


 御者はちらっと反対側を見てから、現状を理解したのか馬車のスピードを上げた。


 賊たちを山賊と間違えているようだが、手綱を強く握って追ってくる馬車を引き離そうとする。


 しかし、一度スピードを落としたということもあり、俺たちを追ってくる馬車は徐々に俺たちとの距離を詰めてきた。


 このままだと、そこまでしないうちに追ってくる馬車に追いつかれてしまう。


「ロ、ロイドさま。どうしましょう」


 リリナは初めに現れた馬車とは反対側から迫ってきている馬車を見て、焦った表情で俺を見る。


 馬車で走っている中、追いかけてくる馬車を止める方法……。


 俺はそこまで考えて、アリシャをちらっと見た。すると、アリシャは俺の言いたいことを察したのか、俺が言葉を口にする前に頷いた。


「アリシャ。馬車の車輪を弓で狙えるか?」


「お任せください、ロイドさま」


 アリシャは口元緩めてそう言うと、弓矢を持って窓の外から少し身を乗り出す。


 そして、馬車の振動を全く気にしない素振りで照準を合わせて、いつものように魔法と共に矢を放つ。


「『瞬風』……『狙撃』!」


 シューン、パーンッ!


 すると、放たれた矢は見事に俺たちを追ってきた馬車の車輪に当たり、車輪を破壊破裂させた。


「ぐおっ、おおおっ!!」


 そして、車輪を壊された馬車は制御が難しくなり、右に左にとバランスを崩して、がくんっと速度を落とした。


「揺れる馬車での正確な射撃、さすがだな」


「ロイドさまに褒めていただけて嬉しいです」


 アリシャは大人びた笑みを浮かべて、ちらっと俺を見た。


 すると、俺たちを追いかけていた他の二台の馬車たちは、一気に遠のいた一台の馬車を見てから俺たちを強く睨んできた、


「やりやがったな! おいっ、ぶっ放せ!」


「ん? ぶっ放せ?」


 なんか物騒な言葉が聞こえてきたと思った次の瞬間、二台の馬車の窓からガラの悪い男たちが姿を見せた。


 よく見ると、一人は半身くらいのロッドをもう一人はステッキのようなものを俺達の方に向けている。


「『火炎弾』」「『風球』」


 そして、そんな声が聞こえたと思った次の瞬間、各々のロッドとステッキから炎と風の塊が吹っ飛んできた。


 追っ手の賊たち、魔法を使える奴らもいるのかよ!


 俺はこのままでは馬車に直撃すると思い、御者に叫ぶ。


「御者さん! 馬車を右に切ってください!」


「え? み、右に?」


 しかし、御者は突然の俺の言葉に反応できず、馬車を右に切らなかった。このままでは、賊たちの撃った魔法が馬車に直撃すると思った俺は、咄嗟に剣を引き抜いて窓から身を乗り出す。


「仕方がないか。『竜風(魔)』!」


 俺は少し荒々しいなと思いながら、剣を振り下ろした。


 すると、渦の中心を相手に向けるようにした竜巻が地面をえぐりながら飛んでいった。


 そして、こちらに放たれた魔法たちを呑み込みながら、後ろにいる馬車の方に飛んでいく。


「「うおおっ、おわっ!!」」


二台の馬車は『竜風(魔)』を避けようとしたが、一台の馬車は『竜風(魔)』にかすめてしまい、その衝撃で壁を破壊されながら急停止した。


 残る一台も『竜風(魔)』の風にあおられたようで、バランスを崩して木に馬車をぶつけて急停止した。


 ガンッ!


 そして、俺たちの馬車も『竜風(魔)』の風にあおられて少しよろめいた後、御者がいる方から何か鈍い音が聞こえてきた気がした。


 あれ? 大丈夫だよな?


「クソがっ! 逃がさねーぞ!」


俺が倒した方の馬車からそんな音が聞こえてきた思った次の瞬間、空に何かが打ち上げられた。


 そして、それはある程度上空に上がってからパンッと弾けて、赤い煙を出した。


「ロイドさま、何か打ちあがりましたね」


「あ、ああ。救難信号だろうな。すぐに逃げないと」


 アリシャと一緒に空を見上げてから、俺は表情を引きつらせる。


 本来は隠れ流れ逃げるべきな所を、がっつり見つかって仲間まで呼ばれてしまった。


 まぁ、反撃に出なければ馬車を止められていたし、仕方がなかったといえば仕方がなかったか。


 さすがに、三台の馬車に乗っている賊たちを声も上げさせないで制圧しきるのは無理だしな。


「……ん? ていうか、馬車のスピードが遅くなっていないか?」


 すると、今度はなぜか俺たちの乗っている馬車のスピードが減速し始めた。一瞬、煽られたからその影響かと思ったが、馬車は徐々にスピードを落として、そのままピタッと停止した。


「と、止まってしまいましたよ」


「いやいや、今のうちに賊たちと距離を取らないとだろ。御者さん、何かありましたか!」


 俺が大声で御者を呼ぶが、御者は何も反応しない。


 あれだけ道中話していた御者が突然喋らなくなるなんてことあるのか?


「私、様子見てきます!」


 リリナはそう言って、急いで御者がいる御者台へと向かった。すると、リリナは驚く声を漏らしてから、何度も御者のことを大声で呼んでいた。


 それから少しして、リリナが俺達の方に顔を覗かせて続ける。


「ロイドさま! 御者さん、気を失ってます!」


「気、気を失ってる?」


 リリナの言葉を聞いた瞬間、俺はさっき御者台の方から鈍い音が聞こえてきたことを思い出すのだった。


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