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第74話 迷いの森を抜けて


「や、やっと着いたな」


 水浴びを終えて少し歩いていくと、やっと迷いの森を抜けて村の近くまで来ることができた。


 慣れない森の中を汗だくになって歩いたり、土の上で文字通りの野宿をしたりと散々だったりしたが、ようやく馬車で移動をすることができる。


 そう考えると、安堵のため息が漏れ出た。


「さて、俺たちの追っ手がこの村に先回りしていないことを祈るばかりだな」


 俺はそう言いながら、目視できる距離にある村を見て目を細める。


 せっかく、バレないように村まで来れても、追っ手があの村にいたら意味がない。少しこの村に来るまでに時間がかかったということもあり、それだけが少し不安だった。


「あっ、ロイドさま。馬車の音が聞こえますよ」


「なに? 本当か?」


リリナは銀色の耳をぴくぴくっとさせて、辺りを見渡してから音のする方を指さした。


 村に入らないで馬車を拾えたら、追っ手が村にいても関係なく馬車に乗ることができるし、ぜひともその馬車を捕まえたい。


 そう考えてリリナが指さした方を見ながらしばらく待つと、大通りを通ってくる馬車が一台見えた。


「よっし。リリナ、アリシャあの馬車の御者に、俺の手配書のことを知っているか聞いてきてくれないか? 知らなければ、村に入る前にあの馬車でガランまで向かってもらうことにしよう」


 御者が手配書のことを知っていたら、俺たちのことなんか乗せてはくれないだろうし、懸賞金欲しさに売られる可能性だってある。


 そうなったら後が面倒なので、一旦俺がいない状態で確認してもらった方がいいだろう。


 俺がそう考えて言うと、リリナとアリシャは頷く。


「分かりました。いこっか、アリシャ」


「うん。ロイドさま、いってきますね」


 二人は俺にそう言い残して、走って馬車に俺の手配書のことを聞きにいってくれた。それからしばらくして、幸運にも御者が俺の手配書のことを知らないことが分かり、俺たちは馬車に乗ることにしたのだった。




 それから、御者は俺たちを乗せてガランへと向かってくれた。


 馬車を走らせてもらっている道中、俺たちが『迷いの森』から来たのだと話すと、御者は驚いて声を漏らした。


「『迷いの森』を抜けてやってきたんですかい? そりゃあ、大変だったでしょう」


「ええ。道も険しくて結構疲れましたね」


 俺は馬車で揺られながら、涼しい顔でそう答えた。


 御者と少し会話をしたところによると、御者は遠くに客を送り届けていた所で、しばらくぶりに村に戻ってこようとしていたらしい。


もしも、村にそのまま戻らせてしまったら、村の人から俺たちのことを聞いていた可能性もあるし、村に入る前にこの馬車を拾えたことはかなり運がいい。


 ……これなら、しばらくは気を張らずにいられそうだ。


 俺が胸を撫でおろしていると、御者が再び口を開く。


「それにしても、なんであんな危険な所に何しに行ったんですかい?」


「え、えーっと、依頼がありまして。湖にいる魔物の素材が欲しいだとか」


「はぁー、そうでしたか。依頼とはいえ『迷いの森』にいくなんて、冒険者は大変ですなぁ」


 俺が適当にそう言うと、御者は納得するようにそんな言葉を口にした。


 どうやら、変に疑われたりはしていないようだ。


 俺がそう考えて胸を撫でおろすと、リリナの銀色の耳がぴくぴくっと動いていた。それから、リリナは緊張感のある顔で馬車の外を覗いた。


「リリナ?」


「……馬車の音がします。それも複数」


「複数の馬車?」


 俺は一瞬リリナの言葉を意味が分からず首を傾げて、リリナが見ている方角を見る。しかし、窓の外を見ても馬車らしきものは見えなかった。


 すると、リリナがバッと勢いよくこちらに振り向いてきた。


「それもかなりのスピードでこっちに向かってきてます!」


「かなりのスピードって、もしかしてーー」


 俺は緊迫感のあるリリナの声色に体を起こす。


 今の状況の俺たちが乗っている馬車を追いかけてくる奴らなんて、あいつらしかいないだろう。


 そう考えていると、馬車が目視できるくらいの距離まで近づいてきた。


 そして、ガラの悪い男が馬車の手綱を持ちながら、俺たちに大声で叫ぶ。


「そこの馬車! 止まれ!! 検問だ!!」


 明らかに検問をするようなガラではない男は、何度もそのようなことを叫びながら馬車のスピードを上げてきた。


 どうやら、『迷いの森』を抜けても、俺たちに気を抜ける暇などあるはずがないみたいだ。



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