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リリーファルナの三帝


(…まさか、こういうことになるなんてな)


龍真、ミアティス、シオンの3人は観客に囲まれた闘技台の上に立っていた。

観客といっても一般の国民がいるわけではなく、リリーファルナの城に務める者達や貴族、重臣達だけであったが。



龍真達の前には皇帝の傍に寄り添い、密談最中も門前で待機していた3人の男が立っていた。


「やっと私も暴れられるなっ、多少は楽しめる輩だと良いが」


小さな身体とそれに似合わない大きな胸を張って少女姿のシオンが微笑む。

上から目線なのは聖獣たる身分故のご愛嬌である。


「…マスターに降り掛かる危険は全て私達で振り払いますっ!」


一方常に龍真の隣を位置取るミアティスは龍真を守る気満々だ。龍真の力を証明する為だというのにそれでは本末転倒ではないかと突っ込むべきところだがそこは誰も指摘しなかった。


(…さて、こんな相手と戦ってどうなることか……)




………──────時は数日前に遡る。


龍真達が皇帝とリオンと共に密談に耽っていたところ、今後龍真達がリオンの護衛を続けるにあたり臣下の者達を納得させる必要があるだろう、ということで話が纏まると皇帝は得意気な顔で1つの打開策を提示した。


「部屋の外に居る者達がおるだろう…あの者達は私直属の護衛を任せている精鋭、通称"三帝"と呼ばれ臣民に讃えられてる者達なのだが、龍真達も彼等の手合わせを臣下の者達に見せれば龍真がリオンの護衛に不足しないと自然に証明出来る形になるだろう。どうだ、受けてくれぬか?」


「三帝…ですか?」


「龍真様、"三帝"というのはリリーファルナの皇帝を常に守護する選び抜かれた方達のことです。実質リリーファルナ領地の全土で最高峰の実力者達で、今は"剣帝"、"武帝"、"魔帝"の3人となってます」


龍真が三帝について問い掛けるとリオンが会話に混ざりどういった人物達なのか説明してくれた。


「成程、国の序列トップの3名で剣を極めた帝王、武術を極めた帝王、魔道を極めた帝王の精鋭部隊ということですね。三帝については理解しましたがそれは自分が1人で相手する…ということですか?」


四天王とか五人衆とかそういったものでありがちな部隊だと突っ込みたい気持ちを呑み込み、どういう戦いにするか明白な回答を得る為に龍真は質問を続ける。


「護衛するのは龍真1人ではないのだから従者の者も参加して貰うことになる…そこの少女は神殿での儀式の後同行した者であろう?」


「分かりました、では全員でという形でお受けします。陛下のお察し通り彼女は儀式の神殿を後にして以降同行しておりますが我々と同じ状況でして、詳しくは話せませんが戦闘も可能です…ご安心下さい」


「このような少女も戦う術を持っているとは…苦境を潜り抜けて来たのだろうな。腕利きの男達を相手にするのは辛いと思うが宜しく頼む」


龍真の質問への返答を済ませた皇帝はふとシオンの方へ視線を向け護衛の数に入れるか迷っていたが、龍真が心配無用だと答えた。

まさか聖獣が人化しているのがシオンの正体だとは夢にも思っていない皇帝は、此処まで生きてきた時間の不遇さを想像し心を痛めていたようだったが、シオンはにっこりと微笑むだけで言葉を発することはしなかった。


余計な荒波を立てないように空気を読んだのか、暴れられる場に参加出来ることに喜んでいるかどちらかに見えた龍真だったが恐らく後者の方だろう…と少し呆れていた。


「ではその形で決まりで良いな?闘いの日取りは追って知らせる、それまでは私の権限で護衛の任を解かずにリオンの傍にいて貰おう」


皇帝が話をまとめた一声で龍真達は皇帝守護の最強部隊、三帝と闘うことになったのだった。


──────────────────────

────────────────

──────…そして現在。


「…貴様達がリオン皇女様をお守りしてきたというのも未だに信じられんが、栄誉ある護衛の任を陛下が推薦なされたというのも到底信じられん。この剣で見極めてやる」


初めから龍真達に否定的で現在も敵意を向けてるのは三帝の中の剣帝である。

この場で龍真達に醜態を晒させて追い出す気満々のようだ。


「我々も愚かではない…対峙した者が強者か弱者かの力量を推し測ることは出来る。君達からは驚異を感じないし未だ年若い、疑うなという方が無理というものだ」


剣帝に続き本意ではないが疑う要素が多いと述べるのは深紅の金属甲を嵌めた武帝だった。

少しは会話の余地がありそうな存在だと思われたが龍真は一瞬眉をひそめると盗賊退治で手に入れた剣を引き抜き臨戦態勢を取る。


「少女や子供にまで我々が手を下すというのはあまりに理不尽ですが陛下や皆の手前、手加減は許されていません。本来こんな戦力差で戦うべきではないのですが…許して下さい」


残る三帝の1人、魔帝はこの戦いに乗り気ではなさそうだが命令とあれば仕方無いと困り顔で杖を構える。

帝王の名を冠する人物にしてはかなりの優男のようだ。


「双方準備は良いか…?これより第一皇女・護衛認定試験を始める」


三帝が構えを取ると、謁見の間にも皇帝の近くに並列していた老齢で身体の大きな男が開始の合図を告げた。

この場に居る大半の関係者は三帝側の蹂躙戦になることを疑っていないだろう。


開始の合図と共に全員が散開し、龍真と剣帝の刃が交わる。


(俺と剣帝、ミアティスと武帝、シオンと魔帝…手筈通りだな)


龍真達は互いに3人同士なことを考えて事前に誰が誰と相対するかを決めていた。

「剣帝は俺に一番敵意を向けているからそのまま相手しよう。多彩な魔術を使う魔帝は戦闘経験豊富なシオン、間合いを取れるミアティスが武帝を担当してくれ」…という龍真の提案にスレイモンスターの2人は何の異論を唱えることなく同意した。

シオンは纏めて相手にしたそうだったが聖獣だと知られるわけにはいかないので却下である。


「…ほう、我が剣を受けて体勢を崩しもしないか。少しは楽しめそうだな」


(今の一撃は別に本気じゃないとは思うけど…完全に舐められてるな。まぁ、当然か)


龍真が剣帝の一撃に動じなかったことを評価した剣帝は不敵な笑みを浮かべると一度距離を取り、龍真の力量を試すようにダッシュを加えて愛剣を振り下ろす。


けたたましい音を発して闘技台を割り、粉塵が舞い上がったがそこに龍真の姿はない。


「避けたか!?良い反応だ。だが守勢ばかりでは認められんぞ!ロディック殿に勝る強さを見せてみろ!」


「では、お言葉に甘えて…」


龍真に向けて振り下ろした剣は【識別眼】によって難なく回避出来た。

力量の差が開き過ぎている相手ならば致命傷を受けるレベルの攻撃を防ぐどころか回避した龍真の姿を直ぐに捉え、再び構えを取った剣帝は横薙ぎに剣閃を振るい龍真を挑発してきた。


手持ちの武器の強度では防いでしまうと壊れるのを理解していた龍真は剣帝の攻撃をしゃがみ込んで再び回避すると、空振りした剣帝が体勢を崩す。

龍真はその隙を突いて剣帝の鎧に向け剣を走らせた。


しかし確実に捉えた筈の龍真の攻撃は剣帝の愛剣によって阻まれる。

姿勢を崩していた剣帝だが龍真の攻撃は視界に入っており、そのまま一回転して自身の身体と龍真の剣の間に愛剣を立てて防いだのだった。


「続いて行きますよ…?」


阻まれた龍真の方も特に動揺を見せるわけでもなく、追撃を告げる言葉と同時に脚蹴りを放っていた。


「…っぐ!」


龍真の追撃は剣帝の左膝の裏に直撃し、膝ががくりと崩れ落ちて再び剣帝がよろめく。

蹴り足を振り抜き一度着地した龍真は剣を振り上げ剣帝同様腕を振り下ろす。

しかしこの攻撃も剣帝は防御の構えを取り、再度剣と剣がぶつかり合った。


「動きや攻撃の組み立て方は見事だ…しかしその攻撃、軽過ぎる!貴様剣技を習得してないな?」


攻撃を防がれた龍真は競り合ったりせずに直ぐに離れて間合いを作る。

構えを戻した剣帝は龍真が剣の扱いに不慣れなことを指摘したのだった。



読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、評価下さってる皆さん、いつも本当にありがとうございます。




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