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秘密を暴いて


「何故、私がそうだと思うのだ?この城から儀式の神殿までは相当な距離があるというのに」


"神殿を管理する存在と皇帝は同一人物ではないか"という龍真の問い掛けに険しい顔を見せた皇帝だが、先程謁見の間で見せたような威圧感は感じられなかった。

問い掛けた龍真に何故そう思ったのか根拠を訊ねると皇帝の表情は元の落ち着いたものへと戻る。


(…成程、表面上の平静を装うのは相当なものだな。流石皇帝…っていうところか)


「では根拠を申し上げます。これは私自身の推測の話ですが、先ず気になったのは口調の雰囲気でした。そして次に違和感を感じたのは謁見の間での我々への対応です…城下門の守衛から話を聴いただけではこれ程寛大な態度で接するには情報不足、得体の知れない者として警戒するのが必然です」


「………」


表情にこそ大した変化は見られないものの、【識別眼】で内面まで捉えている龍真には皇帝の感情変化は筒抜けだ。プライバシーも何もあったものではない。

龍真はスキルの事を皇帝に伝えず自分の推測だと伝え、共通していた言葉使いと寛大過ぎる違和感を話すも皇帝からの反応はなく、じっと龍真を見ているだけだった。


「…護衛部隊との戦力差も追及しない、ご自身の護衛が先走らないように諌める…そして、今も否定を口にせず根拠を求めました。事前に我々の事を知っているとしか思えませんでしたので、そうなると消去法で"神殿を管理する姿を見せない存在"に辿り着いたのです」


「…………─やれやれ、皇族の秘匿までこうも容易に見破られるとは…敵わんな。そなたの言う通りだ」


龍真が言葉を紡ぎ皇帝をじっと見据えると皇帝は観念したようで深く溜め息を吐き、龍真の推測を肯定し頷いた。

龍真達に無礼を働くなというのも建前で側近の臣下を止めたことも間違っていなかったのだろう。

どうやらこれはリリーファルナの皇族にとって秘匿事項だったらしい。


「で、では…父様は護衛部隊ではなく龍真様達と試練に挑んでいたことも無事達成したことも、事前にご存知だったのですね?龍真様のお力も…」


「その通りだ、眼が届くのは神殿の中に限られるが。だから剣帝が彼等を触発しようとしたのも止めたのだ…無礼に当たるのも間違いではないからな」


皇帝と龍真の話を聴いていたリオンも最初こそ驚いていたものの全て聴き終えると納得した様子だった。

龍真達と皇族親娘が対談するのを止めようとした男は剣帝という立場の男だったのかというのを龍真は聴き逃さなかった。


「龍真…いや、龍真殿と呼んだ方が適切か」


「龍真で構いません、陛下」


龍真に敬意を示そうと呼び方を訂正した皇帝だったが元々平凡な暮らしをしていた龍真としては逆に畏れ多いと感じ、そのような対応は遠慮して貰った。


「カイレン種を単独で倒してしまうそなたには妥当だと思うが、それならばそうしよう。…龍真、先ずは改めて感謝したい。娘リオンを守り此処まで連れ帰ってくれて礼を言う」


「陛下、先程も申し上げましたが当然のことをしたまでです…だから顔を上げて下さい」


神殿の試練において龍真が模造体とはいえゴラムゾッドカイレンを1人で倒したことは皇帝の中でも評価を上げる大部分を占めていたようだ。

皇帝は場を改めてリオンの護衛をしてきたことに対して感謝を示し頭を下げる。

そんな場面を誰かに見られては大事だと判断した龍真は直ぐに皇帝が頭を上げられるように促したが皇帝は頭を下げたままだった。


「この場にはそなた達と娘しかいない、だからこれは皇帝としてではなく"リオンの父親"として礼をしているのだ。娘が大した傷も負わず心に深い闇も持たず成人の儀を終えて戻って来れたのはそなた達のお陰だ…感謝する」


「父様…」


「…そういうことでしたら、この場では確りとお受けします」


皇帝ではなく1人の父親としての礼ならばと告げる皇帝を前に龍真はこの場限りと釘指して感謝の礼を受け入れた。


「うむ、そうしてくれると助かるな」


「もぉ、父様…リオンの事でお話するのはそのくらいにして、龍真様への恩賞の話を…」


「あぁ…そうだったな、済まなかった。しかしリオン、神殿の中では親しく話していたではないか。父の前では気兼ねする必要はないのだぞ?」


リオンが皇帝の子煩悩振りに恥ずかしそうに苦笑いを浮かべ話を戻そうと指摘すると皇帝は一度気付いたものの、神殿の試練を行ってる最中のリオンを思い出して同じように話すことを進める。


「話に介入して済みません、陛下。我々とリオン様は他の者の眼がある以上公私の区別は付けるという約束をしています。陛下がご存知なのは皇家の秘匿の内での話というのなら、如何にお許しがあったとしてもこのままでいなければなりません…ご了承下さい」


話が進まないと実感した龍真はリオンの返答を待たずに会話に入り、現状維持を口にした。

リオンは少し残念そうな顔をしていたが国の頂点に位置する存在と密談するのは早めに済ませてしまいたい龍真であったのだ。


「成程、一理あるな…。では龍真達に与える褒美の話をしよう。全て叶えることは難しいだろうがそなた達の望みを言ってみるがいい、娘の恩人達には出来る限りのことはしよう」


龍真の意見に考える素振りを見せていた皇帝だったが程なく納得すると恩賞の話へと移る。

皇族…まして愛娘の命の恩人ということで破格の対応をしてくれるようだ。寛容な皇帝である。


「寛大な対処ありがとうございます…それでは陛下、我々の望みを2つ程お聴き下さい」


龍真は姿勢を正しリオンに教えられた敬意を現す姿勢を取ると皇帝を前に望みを口にした。


「1つ目は我々全員の身分の確保です。恥ずかしながら我々は身分を与えられなかった者の集まり…礼節や知識も我流の物が多く明白な証明がありません。今後動くに当たって確実な身分の証明が必要だと実感したので陛下、若しくはリオン様からそれを証明して戴ければ幸いです」


「なんと…そういうことであったか。それにしては随分と礼儀正しいように見えるが、その程度のことで良いのか?この程度のことなら冒険者のギルドにでも行けば簡単な物が手に入るというのに」


「はい、我々にはとても必要なことですので」


皇帝は龍真達の生い立ちや事情を追及することはしなかったが不思議そうな顔をしていた。

望みの内容があまりにも容易な物だった為拍子抜けした部分も混ざっていたが龍真は真剣に返答する。


「では私が確固たる証明を人数分授けることを約束しよう。して、2つ目の望みはなんなのだ?」


龍真の様子を見て皇帝はしっかりと頷き身分の証明を確約してくれた。


「ありがとうございます。2つ目の望みは……我々を今暫くリオン様の護衛として傍にいることを許して戴きたいのです」


「ほう…なんと」


龍真達の次の望みが娘リオンの護衛だと聴いた皇帝の表情は驚きの色を見せていた。


「正直な話、我々は儀式の神殿の内部以外の場所で数回襲撃を受けました。成人の儀を無事終えて、帝都…城内に送り届けるまでの護衛と考えていましたが不穏な気配を感じています。護衛部隊が全滅したのも隊長だった者が変異して襲って来たのも、リオン様暗殺を企ててる者達の仕業だという可能性が濃厚でしょう」


「……うむ」


「なのでそういう事情を知らない者を新たに側近として置くよりは対処可能な我々が事が落ち着くまでお守りした方が良いのではないかと判断致しました」


「事情は理解した…そなた達は、それが褒美で良いのか?」


求める褒美と与えようとしていた褒美にかなりの誤差があったのだろう。思わず問い掛けた皇帝に龍真は迷いなく頷いた。


「勿論です、それが我々の望みですから」


「………───ふ、こうも金品に欲を見せない者も珍しい。普通もっと恩着せがましく成果を誇張して己の欲に忠実になるものだがな」


「そうでしょうか?」


最初は偶然助ける型になったものの、一度助けた以上最後まで放っておけないのは龍真にとって呼吸と同等に当然のことであったが、皇帝が見てきた外部の人間は私利私欲に走るケースが多かったようだ。


「この帝都リリーファルナでは強さというのは大きな評価対象だ。申し分無い強さに加えてその配慮…私はそなたを気に入った!そもそも護衛はこちらから依頼しようと思っていたのだ、それを龍真の口から聴いて断る理由はない」


「龍真様…父様…」


「実は私が成人する時にも同じような輩はいたのだ。リオンの件についても相応の警護が必要なのは明白だ…しかし国の内部の犯行の可能性が高い為公に出来なかったのだ」


龍真の対応は皇帝にとって好感に繋がるものだったらしい。

護衛の為に編成した1部隊を凌駕する強さを持ち、内情を知る国の部外者…というのは娘の身を案じる皇帝にとって最も好都合な形だった。


リオンはリオンで此処で龍真達と離れたりせず、今後も暫く共にいられる時間が増えたことに喜びを現していた。


「陛下もそれを考えて下さってたのなら話は早いですね…ただこれには問題があります…」


「うむ、我々だけが事情を知り龍真を安易にリオンの護衛に着かせては余りに不自然、不満の声を挙げる者も少なくないだろう」


「仰る通りです。不要な戦闘や試練は避けたいのが本音ですが、これらを円滑に進める為にも臣下の方々を納得させるような何かを行わなければなりませんね」


龍真と皇帝が進めていた話は城下門で一騒動あった時リオンが皇帝に相談しようと思っていたことであった。

正確には"今後護衛を行うことに納得させる為の証明"ではなく"護衛部隊に代わり護衛を務めた実力の証明"であったがやりたい事は一致していたのだ。

自分が提案しなくても同じことへ話を進める2人を見たリオンは更に喜びを深めていた。

何かを思い付いた皇帝は龍真達へ提案を持ち掛ける。



「…私に考えがある。実はな………─────」





この日を忘れない為に、何とか更新することが出来ました。

読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、評価下さってる皆さん、最近連動したTwitterでフォローして下さってる皆さん、いつも本当にありがとうございます。



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