表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/74

どうせ旅をするなら快適な方が良い


「マスター…リオン皇女様と随分親しくなりましたね。もしかして…」


「いや、ミアティスの思うような関係にはなってない。友人関係にはなった…取り敢えずだけどな」


"勇滅の森"から一番最寄りの砦街テムジェへ向けて歩いていた龍真達だったが歩き始めた矢先ミアティスが龍真に進展の確認をしてきた。

龍真とリオンの進展を推奨してきたミアティスだ、神殿から出て来て明らかに距離が縮まっていれば聴かずにいられないのも当然だろう。

ミアティスが何を求めてるのか察した龍真は現在の関係の進展具合を包み隠さず教えることにした。今後更に進展しないとも限らない為現状は…という話で納めたが。


「ミアティスさん、リオンが少し無理を言って龍真君にお願いしたんです。気を悪くしたらごめんなさい」


「いいえ、寧ろ私にとって喜ばしいことですから。…じゃあ、私の時もマスターと同じように話して下さい」


「え…良い、の?」


「勿論です、私がマスターより上になるような話し方はマスターに失礼ですから。私もリオン様、と名前で呼ばせて貰いますね?」


リオンが確認したのは"友人として接して貰えるのか"という意味合いでのことだったがミアティスは飽くまでもマスターの龍真が主体だ。従者と偽っていようがスレイモンスターだと今後明かすことになろうが龍真より畏まった話され方をされるのは自分が許せなかったのだ。

それを聴いたリオンは少し納得出来ない表情を浮かべたが龍真とミアティスの主従関係を思い出し了承していた。龍真程執着が無かったのもあるのだろうがこの2人の関係も始まったばかりである。今後どうなるかは本人達次第だ。


「うん、分かった…じゃあリオンはミアちゃんって呼ぶから、宜しくねっ」


「宜しくお願いします、リオン様」


2人の会話を一歩下がって聴いていた龍真はあまり喧嘩に発展したりしないなら複数の異性がいるパーティーも悪くないというハーレム系主人公達の気持ちが僅かながら理解出来てしまった。

その後の展開を見ても大体トラブルはあるだろうし面倒事になったりしてるので自分からはそれを望まなかったし彼女達にも自我がある以上、衝突しないことはないだろうと密かに腹を括ったのだった。


────────────────────────────────

────────────────────

─────…


「……そうだ、リオン…"勇滅の森"を出る前に話しておきたいことがあるんだ。出来ればこれも、口外しない形で頼みたいんだよな…」


龍真が口を開き改まってリオンに話し掛けたのは龍真達が"勇滅の森"を出る直前、眼を凝らして見れば視界が開け平野が見えるという位置で椅子のように座れる岩を見付け休憩を取っている時だった。

リオンにとって帰る道中でも龍真達からすれば新たな場所へ足を踏み入れるのだ、込み入った話は誰かに聴かれる危険性の高い場所より今が頃合いだと判断したのだ。龍真のスレイモンスターになる前は自由奔放に暮らしていたシオンは別だが。


「うん、誰にも言わないから教えて欲しいな」


「ん…じゃあ先ずは俺の持ってる能力の方からだな…」


リオンの同意を得られると龍真は先ず自分達の周りの空間に【断絶結界】を展開してその部分だけ隔離する…森の入口付近ということもあり誰かに内容を見聞きされないように対策を取ったのだ。

自己防衛する為のスキルだった【断絶結界】を自分の周囲にも展開出来るように特訓で応用を利かせるようにしたのは仲間も守れるようにする為だった。傷付くのは受けるのも見るのも嫌いな龍真ならではの思考である。密会にも使えると気付いたのは住処を出る数日前のことだったが。

ミアティスとシオンは空間の断絶に気付いたものの、リオンは気付いたように見えない…どうやら自然に発動出来たようで一安心する龍真だった。

順を追って説明する為に龍真は腰に装備していたエアル・ブレイカーを引き抜くと【自由保存(フリーストレージ)】の中へ戻す。


「え!?」


急に武器が消えたのを目にしたリオンは驚きの声を漏らした。以前もちこからアイテムボックスのような便利収納はないと聴いていた龍真は皇族のリオンならもしかしたら何処かで存在を確認してるかも知れないと思ったが今の反応を見る限り少なくともリオンは知らなさそうだった。


「実は俺のスキルの1つにこうしてアイテムを収納したり、分別したり、取り出したりするものがあるんだ。このままシオンに荷物を背負わせておいても良いとは思ったんだが、帝都リリーファルナに着く手前まで俺が隠し持っておこうと思うんだけど構わないか?」


「う、うん…それは良いんだけど、そんなに凄い固有のスキルがあるなら冒険者より運輸商とかの方が楽で安全な生活が出来そうじゃない?あ、秘密のだから多用とか出来ないんだね」


"ま、そんなとこだな"とリオンに返答した龍真はシオンの背に積んでいる荷物の中から盗賊団が持っていた剣を1本抜いて地面に突き刺し、残りの全てを【自由保存(フリーストレージ)】に収納した。


「分別は後で出来るからこうして纏めても収納出来るんだが、あまり人に見せられるものじゃないんだよな…。この剣だけ俺が使っても良いか?」


「大丈夫だよ。龍真君が使ってた剣にも、何かあるの?」


「あの剣…エアル・ブレイカーっていうんだが、あれはイビルティグレスの牙を加工して剣にした物なんだ。あの剣を目利き出来る商人とかの前で出してたりしたら余計な面倒事が増えるだろ」


「イビル…ティグレス、でも龍真君がゴラムゾッドカイレンを一回の攻撃で倒しちゃってたから納得出来るかも」


龍真が所持する剣を慣れ親しんだものから即席のものに変更する理由を説明するとリオンは納得顔して頷いた。最終試練でリオンの目の前で見せた力の一端で思った程イビルティグレスを倒してても驚かなかったようだ。


《マスター、ゴラムゾッドカイレンと戦ったんですか?》


《いや、模造の奴と遭遇したけど面倒臭いから【即死弾(キルバレット)】を使った》


《そういうことでしたか、此処でリオン様に説明するのも納得です》


ミアティスは龍真が口にしたゴラムゾッドカイレンとの戦闘がどういったものだったのか説明を求めるように念話で問い掛けると龍真は隠蔽してるスキルを使って倒したのだと手短に教える。

そんな行為をした自分の主人がリオンをどう見てるかある程度伝わったミアティスは大人しく引き下がったが、実際のところミアティスはそんなことは二の次だった。龍真の決定に意見するつもりは全く無いのだから。


ミアティスが気にしていたのは自分が不在な時に龍真に傷を負わせてしまったかどうかの方であった。

一般的に絶望的なカイレン種との遭遇でも普段の龍真なら何の心配もないが、皇女を前に隠蔽した龍真が万が一傷付くことがあればミアティスは入口で待っていた自分を責めていただろう。


「そういう訳だからある程度の立場が固まるまでこっちを使わないとな」


「うん…といっても、盗賊団を倒してくれたのは龍真君だしそっちの荷物は龍真君が所有してるんだからリオンに断りを入れなくても良いんだけどねっ」


「そうなるのか?」


"成人の儀"を行う為に神殿へ向かう道中で遭遇した盗賊団に護衛の一団は壊滅させられ、それを倒して回収したのだから所有権はリオンにあるものだと当然のように思っていた龍真だったがそれはどうやら違っていたようだ。

龍真が首を傾げるとリオンは笑みを溢しながら"そうだよ?"と肯定する。

盗賊団からの回収品に関して遠慮無く使えることを今更ながら知る龍真だった。


「次に知っておいて欲しくて秘密にして欲しいのはミアティスとシオンのこと、だな」


「うん、リオンに教えてくれるの?」


龍真が気を取り直して次の情報を話そうとするとリオンが興味津々で身を乗り出して聴こうとしてきた。積極的で良いことである。


「あぁ、勿論だ。先ずミアティスのことからだが、彼女にステータスの精霊がいないのをリオンは見抜いただろ?何でいないのかっていうと、ミアティスは翼人族じゃないんだ」


「え!?でもそれじゃあミアちゃんって…?」


「リオンは"フェルスアピナ"っていう魔物を知ってるか?」


自分達の事を知ろうとしてくれるリオンに龍真はミアティスのことから話し始める。

ミアティスは何者なのかというリオンの台詞を終える前に龍真はリオンに問い掛けた。"勇滅の森"の生態分布的なものを皇族のリオンが何処まで知っているのか試しておきたかったからだ。

ミアティスはというと、自分のことを話されるというのに平然としていた。ミアティスは龍真に絶対の信頼を置いているし誰に何を言われても一人になることも虐げられることもないと確信しているからに他ならなかった。


「森の奥に生息していてごく稀に人里近くに姿を現すって噂されてる書物上の魔物っていうくらいしか…。じゃあミアちゃんはそのフェルスアピナなの?」


リオンの知識は書物で得た知識と噂で聞いた程度のものであった。次のリオンの問い掛けは龍真が首を縦に振り肯定を示す。


「ミアティスはフェルスアピナの特殊個体っていう奴なんだ。ミアティスだけ特殊な姿をしていたら…大体の扱いは予想が付くだろ?大雑把に話すとそれを俺が助けた形になる」


「信じられないような話だけど、龍真君がリオンに嘘を話す意味はないもんね。あれ?でもミアちゃん言葉話せてるよ?フェルスアピナは人族の言葉を話せるの?」


ミアティスが魔物だということに驚いていたが改まって話す龍真が意味のないことは言わないだろうとリオンはそれを受け入れる。

しかしミアティスと普通に話せていたのが不思議に思ったのだろう、聴いて受け入れるスタンスを取っていたリオンが龍真にフェルスアピナの生態を尋ねた。


「いや、フェルスアピナで人族の言葉を喋れるのはミアティスだけだろうな。一緒に過ごしている中で旅の足手まといにはなりたくないと懸命に覚えてくれたんだ」


「マスターは人族で、私も翼人族に近しい姿をしてますからね。マスターの旅にご迷惑掛けてしまう訳にはいきませんから当然です」


自分と行動を共にすることを目標に魔物としての概念を超えて努力したのだと誇らしげに語る龍真を見て、これまで主人の邪魔をしないようにと口を閉ざしていたミアティスが此処で口を開いた。


「ミアちゃんが龍真君のことを凄く思ってる…って今日知り合ったばかりのリオンでも分かる。でも龍真君、フェルスアピナで従者ってことは…ミアちゃんはスレイモンスターなの?」


「あ、それは知ってたか。リオンの推察通りミアティスは俺のスレイモンスターっていうのが正しい関係性になるな」


「そうなんだ、それだったらリオンも龍真君達に少し恩返しが出来そうだね!スレイマスターになってる人族なんて本の中でしか見たことないけど、凄い秘密を教えて貰っちゃった!」


龍真とミアティスの関係の真実を聴いたリオンは龍真の予想外に興奮しており、その秘密を共有することに掌を合わせて喜びを現していた。

龍真達のことを知れば知る程共に居たいし力になりたい気持ちが増しているのに龍真の【識別眼】はしっかりと捉えていたのだった。



読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、評価下さった方々、いつも本当に有難うございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ