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盗賊退治 2


(可哀想に…倒されるフラグを自分で立てたな。ちゃんと回収しておこう)


"やっちまえ野郎共!!"そんな台詞を耳にした龍真に沸き上がった感情は最早これだけだった。ミアティスが指摘した通りの盗賊団だった事に救う気持ちが失せてしまった龍真は取り囲まれたままエアル・ブレイカーを引き抜くと、振り向きもせずに一度背後を突いて素早く引き、横凪ぎに剣閃を走らせ目の前の頭領や幹部達の武器を破壊する。

イビルティグレスの牙を素材に加工したエアル・ブレイカーはフェルスアピナのミアティスが得意とする風の力を纏い背後の男を数人弾き飛ばして木や岩に激突させ、使い慣れた【識別眼】で武器の弱点部分を理解すると複数の武器を簡単に壊してしまったのだ。


「おい、なんだその武器は…そんなの見たことねぇぞ!?」


自分の得物を無くした頭領は驚き眼を見開き、更に龍真の武器を見ると思わず声を上げた。ミアティス特製の鞘から初めて姿を見せたエアル・ブレイカーは3年加工を重ねた事で素人でも一目で理解出来る程の存在感を発していて、見る者を惹き付けさせていた。


「その事を盗賊団のお前達に言うつもりは微塵も無いんだが……困ったな、この反応はきっと人里でもそうだろうな。対策は鞘だけじゃ甘いってことか」


「そうだ、良い事を思い付いたぜ!その剣を交換に出してくれりゃ、別の剣と服、それと金と女を付けてやるよ。どうだい?」


龍真が自分の今後の対策を考えていた所で盗賊団の頭領も悪知恵が働いたようでエアル・ブレイカーを対価に求めていた以上の物を提示してきた。打算的な思考は筒抜けだと教えたばかりなのに欲に目が眩んだのだろう…剣ばかり見て気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


「…駄目だな、これは愛着が有るし譲れない。そもそも約束を守る気が無いだろう?」


「…ちっ、お前等…一斉に掛かれ!」


龍真が頭領の考えを見透かし軽く笑い飛ばすと舌打ちして苛立ちを露にした頭領が一斉攻撃を命じる。溜め息を吐く龍真に逃げ場無く数々の武器が迫る光景は端から見ると危機的状況だろう。


「…全員の武器破壊じゃ生温いのかもな。腕一本、覚悟して貰うぞ?」


瞬眼成長(ブリンクグロウス)】のスキルのお陰で常に成長を続ける龍真と盗賊団の間には明白な実力差があり、どう攻撃しようと無意味なのだが盗賊団はそれを知る術を持っておらずどれかの武器が致命傷を与えると信じて疑わなかった。

武器を全て破壊すると制圧した時に【自由保存(フリーストレージ)】に収納出来る武器が減るだろうと感じた龍真は武器を使った攻撃ではなく素手での攻撃を試みた。

以前の龍真であればそんな無謀な事は避けていたのだが、聖獣のシオンと毎日のように戦闘してきた今では何とか出来る自信も着いていたのだ。


「気を付けろ、こいつが何かしでかす前に仕留めるんだ!」


エアル・ブレイカーを鞘に戻す龍真を見て危険だと判断した盗賊団の頭領が激を飛ばし、それに反応した団員達が一斉に攻撃を始めたが時既に遅しだった。


「…ライトニングスライサー」


龍真が一言呟いた刹那、団員達が武器を持つ腕に光が走り瞬く間に通過していき、その後次々と武器を落として(うずくま)ってしまった。

呟いた単語は所謂スキル併用で放った技の名称だった。【万物集束】で雷の力を集めて【万物纏合】で両手に纏い、【識別眼】で一斉に手の腱を貫いたのだ。貫かれた男達の手には外傷は無く、痛みと痺れだけが全身を駆け巡ってる状況だ。


「て、てめぇ…魔法も使えんのかよ……こっちも知らねぇ魔法じゃねぇか……」


口々に苦悶の声を漏らす団員達を見て頭領の腰は既に及び腰になっていた。突然現れた1人の男に手も足も出ず数の優位も活かせない上未知の物を次々と見せられればそれも当然の事だろう。


「この男達はもう手を使えない、お前が不意打ちを企んで用意してた伏兵も含めてな…治療したいのなら譲ってくれないか?」


【万物纏合】で纏わせた光を払い平常に戻った龍真は頭領を残した盗賊団の戦闘不能を指摘して忍ばせていた団員の対処も済ませたと告げる。すると茂みや木の上の中から5、6人程の男達が同じように悶絶して倒れて姿を現した。


「へっ…使えねぇ、奴等だ…っ!」


最後の交渉だと思い3度目の提案を行う龍真を尻目に幹部の剣を拾うと頭領は切っ先を地面に向け、龍真に返事も返さずに次々と自分の仲間に刃を突き立て生命を奪い、鮮血を撒き散らして行った。


「この人数治療して金を失う位なら一から集めた方が効率良い…幸い元手になるモノもそこに有るしなぁ!」


1人残さず団員を処分した頭領の凶刃は今度は龍真に向けられ、眼はエアル・ブレイカー一点に集中し血走っていた。


「…俺が無力化させたから、自分の仲間を始末したのか?要らなくなればお前は仲間でも平気で切り捨てるのか…」


龍真の意図に反して戦闘不能が原因となり仲間を簡単に切った頭領の行動は、日本でもこの世界に来てからも合わせて初めての凶行で迂闊にも驚いてしまい、対処が遅れた事と簡単に生命を奪った頭領に怒りが込み上げた龍真は小石を拾い人差し指と中指、中指と薬指に挟み頭領に向けた。


「そんな小石で何が出来る?こういうクズの代わりなんて沢山居るんだ、使い捨てで良いんだよぉ!!」


「……いや、クズはお前だ。消えろ……」


平静さを失った頭領は何度も油断しているにも関わらず、再び只の小石だと油断してしまった。剣を構えて飛び掛かって来た頭領に向けて龍真は【即死弾(キルバレット)】を連射する。二条の閃光が煌めき、悲鳴を上げる暇さえ与えずに衣服や荷物を残して盗賊団の頭領の姿は跡形も無く消失した。戦う人間が居なくなり辺りは静寂を取り戻した。


《ミアティス、シオン…もう良いぞ》


《マスター…お疲れ様でした》


《まさか自分の仲間を切り捨てるとは、見下げ果てた男であったな》


完全消滅した頭領の遺した衣服や装飾品を見て一度瞼を綴じ、一呼吸置くと龍真がミアティスとシオンを呼び寄せる。出て来た2人は当然ながら自分達の主人の戦いを一部始終を見ていたようでミアティスは龍真の傍に近寄ると自分の手を龍真の腕に添えて擦り始め、シオンは盗賊の頭領に憤慨していた。


「ふぅ…有難うミアティス、後は回収と浄化だな…このまま放置って訳にもいかないしな」


《ふむ、私は作業を手伝えないが浄化なら任せて貰おう》


「悪い事した人達ですけど、可哀想でしたからね…」


「この人達を弔うのですね?でしたら、手伝わせて下さい」


龍真達が盗賊団の亡骸を弔おうとした矢先、聞き慣れない声が混ざって来た。声の方に視線を向けるとそこに立っていたのは今まで隠れていた皇女・リオンだった。


「ん…盗賊団の仲間…って感じじゃ無さそうだな。襲われてた一団の生き残りか?」


リオンの立ち振舞い等を見て正体は大体生き残りの皇女だと知っていた龍真だったが敢えて全ては知らない旅人だと言う姿勢を貫いていた。既に遠くに逃げていたと思い【識別眼】で何処に居るか認識しなかった皇女が此処に居たという事は明らかに騒動に巻き込まれるフラグだと直感した為、少し惚ければ何とかなるかも知れないと咄嗟に判断したのだ。


「失礼しました、帝都リリーファルナの第一皇女のアイシス・リオン・リリーファルナと申します。危ないところだったリオンを助けて戴いてありがとうございました」


「それはご丁寧に。助けになってたなら何よりです…俺は龍真、こっちがミアティスで…シオンだ。皇女様とは驚きですね」


案の定自分の身分を明かしたリオンに龍真は無防備だな…と感じたものの、名乗られて自分が名乗らないのも礼儀に反すると思い自分達の名前もリオンに明かした。

34歳でこの世界に迷い込んだ龍真が3年過ごせば37歳という精神年齢だが実年齢の半分にも満たないリオンに対して敬語で対応していた。

皇族に無礼を働いて不幸に遭うのも遠慮したい出来事だし恨まれるのも御免だからだ。


「リョウマ様、ですね?本当に助かりました…貴方様が助けて下さらなければリオンの未来はありませんでした。命の恩人です!」


「いや、そんな"様"付けとかも結構ですし、大層な事をした訳でも無く偶々通り掛かっただけですから…」


「そんな事はありません、リョウマ様はリオンの命も未来も救ってくれたのに変わりありませんからっ」


「と、取り敢えず、先に作業を済ませましょうか」


リオンは龍真の手を両手で握り胸元に近付けはにかんだ微笑みを向けながら礼を告げ心底感謝しているのを体現していた。皇女が近くに隠れていたのを知らずに盗賊団に捕まった後の姫の末路を口に出したのは余計な事だったと今回の詰めの甘さを反省して当たり障りない会話を続けていく。

話が長引きそうだと判断したミアティスとシオンは龍真を置いて盗賊団の武器を一ヶ所に集め、ちゃっかり使えそうな服やアイテムの回収を始めていた。





少し時間が空いてしまいました。

読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、いつも本当に有難うございます。




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