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皇女は手伝って欲しそうだ


─────────────────────────

─────────────

────…


「これで一段落…だな、皆…お疲れさん」


龍真達は皇女のリオンの押しに負けて作業を共にする事を許し、数時間を掛けて亡骸となった者達の弔いを済ませた。実際ミアティスとシオンはリオンが加わろうと何処かへ行こうとどちらでも良かった為、龍真1人が押し負けた形ではあったが。

時間を数時間も要してしまったのは盗賊団の整理だけでなく、リオン立っての懇願でリオンの一団の中で使っていた道中に発見出来た一団の亡骸も見付けて弔ったからである。


《おい、主よ…幾ら何でも私にこの扱いは酷すぎではないかっ?》


リオンに悟られないように念話で龍真に抗議してきたシオンの背には荷馬の如く武具や荷物が積まれていた。


《悪いな、此処でお姫様に【自由保存(フリーストレージ)】の存在を知られる訳にはいかないんだ》


当初集めた物を龍真の【自由保存】に収納する予定だったのだがリオンが居る事で予定と大きく変わってしまい、考えた末シオンの背中に縄で括るという方法しか取れなかったのだ。

シオンの光魔法の力で羽根を見せていない為ミルガ・ヴォリオスだと言うのは誤魔化せているが、正体が分かるのは恐らく時間の問題だと龍真は感じていたのでなるべく早く終わらせようと作業を早めていた。


「リョウマ様、リオン達の一団までありがとうございました…皆さんも少しは安らかに眠れると良いんですが…。それにしてもリョウマ様は変わった馬をお持ちなのですね。まるでセフォル・ヴォリオスのように立派な馬です」


シオン自慢の黄金の角も霞ませ隠蔽しているものの雄大なオーラは消し切れず、リオンはシオンを誉めた。因みに"セフォル・ヴォリオス"というのはユニコーンのような角付き馬の事を指していて、天馬のミルガ・ヴォリオスの下位に当たる魔物である。


「譲り受けた馬だから詳しくは知らないのです…それより皇女様、守護する者が居ないのであれば一度帝都に戻られてはどうでしょうか?」


「そう、ですよね…」


シオンの立ち位置をはぐらかすと話題を変更し早々にこの場所からリオンを離し、別な相手に任せる方向に誘導を始める。この場合の選択肢の有力な1つとして"力を利用して儀式を済ませる"というイベントを回避させる為だ。

そこに入ってしまうと否応なしに皇族と関係を持ってしまうルートが明白になってしまうので今の龍真としては顔見知り程度の接点で済ませたかったのだ。


「自分達で良ければ安全なところまでお連れしますよ」


「皆さんは此処から帝都迄の道を知っているのですか?」


「この翼人族のミアティスがいます。彼女は自分の従者でして、彼女に空から探して貰えば最適な近道を辿れます」


二の足を踏んで思い直される前に龍真自ら帝都までの護衛を申し出た。此処で別れて放置するのは心情的に納得出来ない部分もあるし、多少一緒に居る時間が出来ても儀式からの流れを同行するのに比べれば明白な差があるからだ。

本音を言えば皇女という存在と親しくなりたい気持ちは勿論持っているし、龍真から見てもリオンは可愛いとも思っているのだが、それでも冒頭での時間を短縮したかったのだ。


「そうなのですね、───ですが…無茶を承知でお願いしますっ!リョウマ様、どうか"成人の儀"を行う守護者としてリオンと一緒に来て下さいっ」


龍真が一度帰還して立て直してから出向いた方が良いしその為の護衛をすると言っても尚、リオンは龍真の危惧していた通りの懇願をしてきた。

一応悩む素振りは見せていたが最初から同行を申し出るつもりだったのだろう、眼が真剣そのものだった。


「皇女様…貴女は出会ったばかりの自分が怖くはないのですか?もし仮に守護者を受けたとしてその道中で襲ったり、先程倒した彼等のように仲間を忍ばせて酷い目に遇わせるかも知れないとか思いませんか?」


「思いませんっ。リョウマ様が本当にそんな事をする方ならリオンはとっくに無事では居ないでしょう?それに…リョウマ様達は悪い方では無いとリオンの直感が言っています。それで万が一どうにかなってしまうとしたら、リオンの見る眼が皇女として相応しくなかったと言う事でしょう…それを恨んだり後悔したりはしません。だから、どうかリョウマ様の力を貸して下さいっ!」


龍真にとってリオンの判断や懇願は信じ難い物だった。もしも自分が皇女の立場でこのような状態に立たされていたなら会ったばかりの見ず知らずの相手に色々な物を頼むより、一度帰って自分が信頼する相手を選んで再挑戦した方が賢明な判断だと思っているからだ。

しかもそれで失敗しても自分に非があるとリオンは言うのだ。思わず龍真は【識別眼】を発動させてリオンの心境を探ってしまった。


(………迷いも不安も打算もない、か。この皇女様は本心から助けを望んでる…けどそれはそれで危険じゃないか?もし帝都の腹黒い奴に利用されたりしたら…)


「リョウマ様??」


「ん、あぁ…済みません、皇女様が可愛いので見惚れてました。しかしそこまで言うのなら分かりました、その儀式の護衛に同行しましょう」


「…あ……────っ…」


龍真は本心や識別してる事を悟られないように故意にリオンの容姿を褒め、同行しないで危険に晒されるのも目覚めが悪い事と神殿の中も興味が有るという知的好奇心が背中を押して護衛を承諾した。


《主よ、この小娘を口説くのか?》


《ん?…いや、そんなつもりじゃなかったんだけどな。一先ず神殿に向かうか》


不意に後ろから声を掛けられ視線だけ向けるとシオンが龍真を冷やかすような視線で面白そうにリオンに気が有るのか確めてきた。自分が何を口走ったのか気付いた龍真が視線をリオンに戻すと、リオンはその豊かな胸に手を当てて赤面して俯いてしまっている。


「という訳で皇女様、神殿迄の道は分かりますか?」


「ふぇ?あ…っ、ごめんなさい…リオン皆さんに任せ切りだったので知らないんです」


龍真としては社交辞令等でこの手の台詞は聞き慣れてると思ったのだが、リオンは真に受けたようで、しまったな…と罪悪感を感じ後頭部を掻きながら気を取り直して神殿への道を尋ねる。

本来"勇滅の森"を網羅した龍真達はこの場所から神殿への道は簡単に把握しているのだが、下手に何も言わず案内すると素性への追及が激しくなるだろうと懸念して故意に知らない振りを貫いたのだ。


「…ではミアティスに空から探索させましょう。ミアティス、取り敢えず移動しながら捜索を頼む」


「はい、マスター」


リオンが道を知らないと分かるや否やミアティスへ指示を出して空に上がらせる。リオンと会話しながら何パターンか答えを予想し、それに対して違和感無く即座に対応出来るようになったのはシオンの指導の賜物だった。

地力を作ってないままの龍真だったなら直ぐにボロを出していただろう。安全に生きる為に費やした3年の成果が早くも実感出来ていた。


「あの、リョウマ様…質問しても良いですか?」


ミアティスを上空へ上げ手探りで歩き始めた龍真の横に並び立ったリオンが少し接近して距離を詰め、何らかを疑問に思ったのか声を掛けて来た。


「答えられる事なら構いませんが、なんですか?」


リオンが接近してきた事で風に乗って花の蜜のような甘い香りが仄かに龍真の鼻腔を擽り、女性だと意識しないように念の為【感情保護(マインドガード)】を掛け草木を掻き分けながらリオンの声に耳を傾ける。


「ミアティスさんは従者さんだと聞きましたが、リョウマ様は何処か由緒有るお家柄の方なのですか?」


「成程…いえ、そういう訳ではありません。自分が旅をしている途中なんですが負傷したミアティスを助け、彼女の問題を解決したら恩返しという形で着いて来てくれたのです。以来色々と頼りにさせて貰ってるんですよ」


「…じゃあどうして貴方はファミリーネームを持ってるんです??」


「ん?」


リオンの質問は龍真が警戒していたような内容ではなく出で立ちの方の疑問だった。

これについては既に対策済みで事実を交えた上で、内情を包み込んで簡潔に返答出来た。フェルスアピナの住処での問題を解決してスレイリンクしたのだから嘘は言っていない…魔物だが。

リオンが納得して質問が終わろうとしてきた矢先、普段もちこから聴こえるような方向から聞き慣れない声が響いて来て龍真が視線を向けるともちこに良く似た精霊の姿があった。


「メリア、盗み見は良くないですよ?それに私達は見守る側なんだから口出しも控えないと…」


龍真が口を出す前に姿を消して同行していたもちこが空中に出現しリオン担当のステータスの精霊・メリアに注意する。


「え!?どうして先輩が…っ?」


2人は顔見知りらしくお互いの存在を確認して笑顔を見せる。龍真は何やら面倒な会話イベントが始まりそうだと静かに溜め息を漏らした。





読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、いつも本当に有難うございます。とても励みになります。



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