3 Years after
ここから新章に入ります。旅立つまで時間を掛けてしまいましたが引き続き宜しくお願いします。
「結局この3年間、戻れそうな気配も手掛かりも森の中には無かったな…」
紆余曲折を経て17歳に成長した龍真は自ら定めた潜伏期間を終えて今や時刻の確認やメモ帳代わりなどにしか使わない携帯が相変わらず圏外なのを見て1人呟いた。
ほぼ裸体の状態のミアティスが龍真の膝を膝枕にして眠っている辺り親密な関係を築いた事は明白だと言えるだろう。
シオンをスレイモンスターにして龍真が日本から来た異世界人だと明かしてから洞窟の住居の設備を充実させ、部屋を幾つか作り更にはミアティスの母親レティスの住む岩山まで地下の避難経路まで作ったりしたが、龍真が成長した今に至るまで人族の来訪者は1人も現れなかった。
魔物達にも今ではすっかり龍真達の存在が知れ渡っており、魔物との会話も成立する事から襲い掛かろうと思う魔物も殆ど皆無に近かった。稀に襲ってくる魔物も居たが勿論今の龍真達の敵ではない、一方的な蹂躙である。
「もちこ、念の為に今のステータスを確認しておきたい。開示を頼む」
「全部の開示は珍しいね、今の龍真さんのステータスはこんな感じだよー」
龍真はミアティスを起こさないように視線を斜め上に向けると契約している龍真にしか視認出来ない様に身を潜めていたもちこに自分のステータスの開示を求めた。龍真の開示要請を聞いたもちこは自らの身体を発光させ龍真の今のステータスを脳裏に送る。現在の龍真のステータスはこんな感じだった。
【ステータス】
名前:夜光 龍真
レベル:????
年齢:17
種族:異世界人(?)
職業:小説家,スレイマスター
精霊:大福もちこ
<スキル>
【万物創造】,【多言語理解】,【自由保存】,【成長限界解放】,【瞬眼成長】,【識別眼】,【即死弾】,【断絶結界】,【速写速読】,【天運】,【感情保護】,【神圧】,【叛転】,【万物集束】,【万物纏合】,【万物離散】,【飛天縮地】,【魅了心動】,【技巧模倣】,【技巧補食】,【技巧混合】,【手加減】,【秘匿隠蔽】,【全解放】,【獣人連携】,【状態無効】,【技能分配】
「これくらい持ってれば森の外に出ても何とかやって行けるだろ…」
「いやぁ…寧ろ私は能力を知ってるだけに化物じゃないかと思っちゃうなぁ…ステータス隠すスキルを使ってもう一度見てみる?」
「そうだな、イメージ通り隠せるか…試しておくか。…【秘匿隠蔽】"強い王国の騎士レベル"」
龍真が偽装する為に得たスキルを使うと一瞬だけ龍真の周りを風が渦を作り木葉が散り散りに舞い上がる。そしてもちこに視線を向けて改めてステータスの開示を求めた。
【ステータス】
名前:龍真
レベル:83
年齢:17
種族:人属
魔力:並
職業:小説家,従者持ちの騎士
精霊:大福もちこ
<スキル>
【天運】,【鑑定眼】,【速写速読】,【威圧】,【反射】,【多属性魔法】,【回復術】,【異常耐性】
…これが龍真がシオンとの学習で学んだ人族の強者を参考にして偽装したステータスだった。隠さなくても良いスキルは表示されていてそのままの表示だと困るスキルは下位互換されて表示していた。
因みに、本来のステータスで自分のレベルが一年を越えた辺りで見えなくなっていたが恐らく表示限界を越えたのだと解釈した龍真は別に気にしない事に決めた。スキルを使用して特別動きが悪くなった感じはしなかったが動きまで制限されたら困ると思った龍真は風の魔力を集めて軽く外に向けて打ち出した。
【識別眼】で飛行してる鳥のような生物を見付けて打ち落としたのだ。
「特に制限が掛かってるようには感じないな…」
常時発動してるスキルも停止してる感覚は無く動作に違和感も見られなかった龍真はそれでも最終確認の為【自由保存】から弾用に収納していた小石を取り出し、掌の上に乗せるとそのまま握り潰した。
バキバキバキッ…と音を発てて砕けた小石は龍真の掌の中で粉々になっていたのだ。
「…力の方も変化無し…か。我ながら随分人間離れしてしまったな……」
粉々になった石を地面に落としながら龍真はふと遠い目をして呟く。
龍真のレベルの欄が"?"に変わった時シオンに自分の身長以上の大きさの岩を軽く殴って見ろと促され、実際軽く殴ってみたところ岩を貫く機械も真っ青な程綺麗に穴が空き某人気漫画の際限無く強くなる戦闘民族を連想してしまったのを思い出していた。
「ん…ぅ…?マスター?」
龍真が確認する音が煩かったからか、膝の上で寝ていたミアティスが眼を覚まし何事かと見上げる。
髪が伸び女性らしく成長したミアティスは何処からどう見ても翼人族と差異は無く、俯き気味だった雰囲気は寝起きからですら感じられない。
「起こしたか…ちょっと他の人族と会う前の調整をしていてな。今日の朝は鶏肉で良いか?」
「そうなんですね、上手く行きましたか?あっ、朝からポポルで料理なんて素敵ですね」
眼を覚ましたミアティスに何をしていたか説明するとスキルを使って足元に打ち落とした鳥のような生物を引き寄せる。龍真の作業の成功が気になって問い掛けていたミアティスも食材となる生物が引き寄せられたのに気付き、起き上がって両手を合わせ笑顔を浮かべた。
「あぁ、俺の方は問題無かったから食事の方を頼めるか?」
「はいっ、マスターが喜ぶ食事を作って来ますから終わったら呼びますね!」
無事作業を終えた事を把握して作業を頼まれたミアティスは毛皮の毛布を自分の身体に巻き付けて立ち上がり着替えに向かった。この3年の間に服を着て生活する習慣に慣れてくれたようだ、龍真にとって良い事で有る。
走り去って行ったミアティスを眺めてる龍真は何とも微妙な表情を浮かべていた。
龍真達と住むようになって1年も経たない内にミアティスの発情期は到来していたのだ。この辺りはレティスにも予想外だった事で人族の血が強い事も関係しているのだろうとシオンが判断を下していた。
勿論その対象はレティスの目論見通り龍真へと向けられ、日本に居た時から異性への免疫が少なかった龍真は流されるまま事に至ったという訳だ。
(この場で俺達がいちゃついてるのを見るくらいなら俺なら先に進めろと思ってしまうしな…もう少し触ってたかったが今日大事なのは此処を発つ事だ…)
本音を言えばもう少しミアティスと会話していたかった龍真だったが惰性で住居に長いする訳にはいかないと判断した結果食事作りに送り出したのだ。異世界に入り帰還の手段を探しながら身体が成長するまで過ごした龍真は感慨深く住居を見渡す。
「今日には此処を出るからって何だか名残惜しそうだねぇ~」
「ま、それはな。けど戻りたくなったら戻れば良いだけだ」
「私はちょっと戻りたくないなぁ…」
龍真の気持ちを知ってか知らずか、取り敢えずもちこは自分の意見を呟いて溜め息を漏らす。龍真は一応聞き入れて着替えを【自由保存】から出すとそのまま着替え始めた。
実際この洞窟の住居から龍真達が出た後もレティスを筆頭に管理出来る魔物達を揃えておいたのでそれほど尾を引いてる訳ではない。意思疎通が図れたからこその成果だった。
《それで主よ、いつ頃此処を発つのだ?》
ミアティスが用意した食事を済ませ落ち着いて寛いで居ると出発を待ちきれないのかシオンが急かすように尋ねて来た。
「そうだな…例のイベントはもう少し時間有るんだろ?それに合わせて出ようと思ってる」
《ふむ、待ち伏せして気を張り詰めるよりは良い判断だな、強者の余裕と言う奴だ》
そういう事ではないけどな…と思う龍真だったがそれなりの付き合いで口に出したら面倒な事を言い出しそうだと察して黙って流した。
《してミアティス、主の旅の準備は出来ておるのか?》
「はい、シオンさん。寝る前から準備万端です」
時間に合わせて出ると納得した物の気が逸っているシオンは平常に比べて落ち着きがなく、今度はミアティスに準備の方の進み具合を聞き始めた。刺激的な日常を求めてる傾向にあるシオンであれば仕方無い事だろう。
「準備出来てるなら少し早めに向かっても良いな…シオンが子供みたいに落ち着きないし行くか」
「はい、マスター」
《な…子供とは失礼ではないか!》
ミアティスが用意した革のバッグやエアル・ブレイカーを納めた鞘を見て立ち上がった龍真はエアル・ブレイカーを腰に装備し、バッグを片手に背負い早めの出発を提案する。子供扱いされたシオンは文句を言いながらも我先にと歩を進めている。ミアティスは龍真の提案を耳にする前から肩掛けのカバンを下げていて直ぐ後に続いた。
「…シオン、もうあの場所に向かってくれ。多分寄り道してる時間は無いからな」
洞窟の外に出ると龍真はシオンに跨がり行先を告げた。シオンは頷くと漆黒の翼を広げ空へ舞い上がる。ミアティスも自分の翼で浮遊した。
《では行くぞ、ミアティスも着いて来るのだ》
「勿論ですっ」
シオンは一度だけミアティスに視線を向け大丈夫なのを確認すると速度を上げて"勇滅の森"の入り口周辺へ向かった。
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