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龍真、自分の身の上を明かす


荒野地帯での戦いに区切りが付くと龍真は再びシオンの背に乗って住居の洞窟付近に戻って来た。

行き掛けのシオンの初乗りは散々な物だったが、帰りはお互いに少し慣れた為かスレイリンクの影響か分からないが随分と安定した飛行で帰る事が出来ていた。


「最初からこれ位の飛び方なら、少しは楽だったんだけどな」


《私も初めての事は完璧こなせるとは限らないからな…だが数回数をこなせば問題も無くなるだろう。何せ私は聖獣なのだからなっ》


自分に絶対の自信を持つシオンは自分の修正のお陰だと豪語していたが、実際龍真は安定して乗れるなら何が要因でもどうでも良かった。


「シオンらしいな。少し早いが洞窟の中にでも戻るか?」


シオンから提案を受けて荒野地帯に向かい、本気の勝負を行ってスレイリンクを済ませ帰ってくるまでの一連の流れで大体2時間程度の時間しか経過しておらず、夜どころか夕方にもなっていないのだがいつもの鍛練に加えて激しい戦いを終えた龍真は早く身体を休めたかった。


《いや、私はもう少しその辺を歩いてこよう。どうすれば主を追い詰める力を得られるか考えなくてはな》


負けたばかりのシオンは勝負以前よりも自身の向上に身を入れていて更なる高みを目指してレベルアップを模索しているようだ。目標が出来たのはシオンにとって余程大きな収穫だったのだろう。意気揚々と洞窟前から姿を消して行ってしまった。


「…あれだけ動き回ったのに元気だな、あいつは」


「龍真さんの存在は聖獣様にとって良い暇潰しになってるみたいだねぇ、私もスレイモンスター達みたいに龍真様って呼ぼうか?」


「それは面倒臭いから止めてくれ……」


シオンの背中を呆れながら見送る龍真にもちこが茶々を入れる。スレイモンスターから何と呼ばれても気にしない龍真だったがこれだけ普通に話してる担当精霊が急にそんな呼び方をしてきたら気が滅入りそうだったので軽くあしらいながら断る。


「あ、マスター…おかえりなさい」


龍真ともちこが洞窟の中に入ると作業していたミアティスが手を止めて龍真の傍へ掛け寄って来た。俯き加減だった顔も幾らか改善され、声帯特訓の成果を披露するように人族の言語で出迎える。本人は龍真が大きく動く迄に読み書きと会話を一般レベルまで習得したいと意欲を燃やしていた。目標を持つのは良い事である。


「…ただいま、留守中何も無かったか?」


「はい、いつも通りに過ごしてました。マスターは…シオン、さんをスレイモンスターにしたみたいですね」


辿々しく幼い感じの会話力も向上して主人に対する敬意を見せる返事が出来る辺りミアティスの努力が伺える。シオンを様付けからさん付けに変えたのはスレイリンクの順番的にミアティスの方が先輩だからだろうか、と龍真は勝手に推察して頷いた。


「聖獣様のシオン、さんがマスターのスレイモンスターだなんて、凄い…ですね…っ」


「もしかして、それもスレイリンクしてるから分かるのか?」


恐らく、またもシオンを様付けで呼びそうになって一度言い直したミアティスは自然な笑顔を龍真に向けて主人を誇らしいとばかり称賛してきた。

龍真はそれを照れ臭く感じるものの素直に受け取り、まだ何の報告してないミアティスが既にシオンとスレイリンクを済ませた事を知ってるのは何故なのか、一番無難なところから問い掛けた。


「うん…じゃなくて、はい。それもあるけど、フェルスアピナは耳が良いので…その、作業に集中してたら聴こえてしまって」


覚えたてで拙いながら懸命に敬語を覚えようとしてるミアティスに龍真はわざわざ直さず普通に話しても良い…と思うもののそれを口に出す事はしなかった。

同じ主を持つスレイモンスター同士で繋がりを持った事も要因だったが、洞窟前で話してた

のがミアティスの耳に入っていたらしい。


「…だから、マスターなら勝つかな…って」


そして龍真の勝利を疑ってなかったのだ。はにかみながら笑顔を向けるミアティスは殆ど魔物と呼べない程人間らしさが強くなっていた。これもミアティスの努力と母親のレティスの教育の賜物である。


「そうか、有難うな。信じてくれて…」


「いえ、マスターを信じるのは当たり前ですから」


「成程、じゃあそれを裏切らないようにしないとな…それはそうとミアティス、実は今晩俺の事について話したい事が有るんだ」


「マスターの事…ですか?」


勝利を信じていたミアティスに感謝を伝えた龍真はシオンも揃った上で、と付け足して自分の事を知っておいて欲しいと思い話を切り出した。スレイリンクを行ったミアティスとシオンなら少なくとも龍真が生きてる間は内密にしてくれるだろうと判断したからだった。



────────────────────────────

───────────────

───…


「ご馳走様、ミアティス…それにシオン少し俺の事で知っておいて欲しい事が有るんだが、誰にも話さないで欲しい。例えばレティスとかにも内緒の話だ」


シオンが洞窟の住居に戻ってきて食事を済ませた後、龍真は先ず他言無用だというのを皮切りにミアティスとシオンに真剣な表情を向けて話を始めた。寛いでたシオンと食事道具を片付けようとしていたミアティスは姿勢を正して龍真の方を見る。


「実は、俺はこの世界で生まれ育った人族じゃない…地球という星の、日本っていう場所で物語を書いている人間なんだ。この世界の事について疎かったのも別な場所から突然移動してきたからだ」


「……っ」


意を決して自分の事情を話した龍真にミアティスは驚き、口を両手で塞ぎ眼を丸くして衝撃を受けてるもののシオンの方は大して動じた様子は無かった。


《急に真剣な面持ちで話し出すから何かと思えば…なんだ"異世界人"である事の周知か。主よ、私は初めから知っておったぞ》


「…シオン、どうして知ってたんだ?まさか他にも…」


シオンが最初から知っていたという事実を聞いて話を始めた龍真の方が驚きを隠せなかった。もちこは転移してきた人間は初めてだと言っていたが転生者に関しては可能性を捨てきれてなかった龍真は転生者に会った事があるかも知れないシオンに対して問い詰めてみたがシオンは首を横に振り接触した訳ではない事を明白にした。


《主、私はそなた以外に見たことはないが何故知っていたかという質問の答えは簡単だ。私も主程ではないが【鑑定】のスキルを持っていて多少ステータスを覗き見ることが出来るのだよ》


「そういう事か…初めて聞いたぞ?」


シオンが他人のステータスを覗き見れる鑑定スキル持ちだと聞いて自分の素性を知っていた事については納得するも、初めて聞いたスキルだと突っ込む龍真にシオンは聞かれなかったからな…と飄々と返答した。


「まぁ…そういう事に対策取ってなかった俺にも落ち度はあるけどな。因みにシオン、この事は誰かに話したりしたか?」


《話す訳あるまい、私とて聖獣としての誇りが有る…友となった者の情報を売るものか。今はスレイマスターなのだから余計売る意味がないのだしな》


情報の漏洩や拡散を心配していた龍真は無意識下で【識別眼】を発動させてシオンに問い詰めたが、シオンの言葉に偽りがないと証明されるとほっと胸を撫で下ろした。知らない所で漏れていたらもう収拾が付かないだろうし今後の行動にも大きく変動があると思えばそれを避けられた事は安心以外の何物でもない。


「あの、マスター?質問…」


シオンのスキル暴露に関して落ち着いた頃合いを見計らい今度はミアティスが口を開く。挙手している姿が愛らしく龍真の理性を刺激する物だったが龍真はどうした?と尋ねる。


「マスターがこの世界の人族でも、そうじゃなくても私にとってマスターはマスター、です。ただ…マスターの世界の人族は、マスターみたいに皆強いの?」


「いや、俺は最初来た時から強かった訳じゃないんだ…此処に来てスキルを得てから強くなっただけだから全員強くはないな」


ミアティスは異世界人だと知ったばかりの驚きも既になく、落ち着きを取り戻している様子で龍真は龍真だと割り切れていた。その上で龍真の強さを異世界特有のものかという質問をしてきたのだが龍真はそれをスキルの影響だと正直に答えた。


一部異世界転生や異世界転移してきた人間達は大抵チート揃いなので、一概に弱いとも決めつけられないのだが…龍真を含めて。


「そうなんですか、マスターが此処に来てくれて本当に良かったです…っ」


《ふむ、そういう事なら私も主で良かったな。でなければ心踊る戦いは出来なかったであろうしな》


自分が此処に来た経緯を思い出したからか、ミアティスは心底嬉しそうに龍真で良かったと告げる。シオンも戦闘目的とはいえミアティスの意見に賛同していた。そういう意見を隠しもせず伝えられて嬉しくないと感じる人は少ないだろう。龍真も気持ちが暖かくなるのを感じ自分のスレイモンスター達と絆が深まった気がした。


「そういう訳で、色々と疎い俺だけど…これからも宜しく頼むな」




龍真達は各々少しずつ成長を重ねながら共に過ごしていく。

そうして3年の月日が経過して龍真は無事17歳となった。





読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、いつも本当に有難うございます。

次回から新章に入ります、今後も宜しくお願いします。



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