破られた嘘
個室の微灯の下、セーラー服の短いプリーツスカートから伸びる、アミの細い脚が露わになっていた。
いつもなら自信に満ち溢れているはずの彼女の指先が、今夜はなぜか、ミニスカートの裾を隠すように何度も落ち着きなく引っ張っている。
「……アミちゃん」
先に沈黙を破ったのは、蓮だった。
「ごめん。僕、もうここに来るの、最後にしようと思う」
アミの身体が、目に見えてビクッと跳ねた。
彼女はゆっくりと顔を上げ、大きな瞳にじわじわと涙を溜めながら、震える声で蓮を見つめた。
「どうして……? やっぱり、私のこと、嫌いになったの? それとも……この前の駅で、私が無視したから怒ってる?」
ついに、お店の「アミ」の口から、駅での出来事が飛び出した。プロの仮面が、音を立てて崩れ落ちていく。
「違う! 怒るわけないだろ!」
蓮は思わず、アミの細い両肩を掴んでいた。
「駅でアミちゃんを見たとき、僕、すごく胸が痛かったんだ。昼間の君は、あんなに一生懸命に夢を追って、真っ直ぐに生きているのに。なのに夜は、僕みたいな冴えない客のために、こんな無理な格好をして、身体を安売りさせているんじゃないかって……。自分が君をここに縛り付けている気がして、たまらなかったんだ」
「違う……違いうよ、蓮さん……っ」
アミの目から、大粒の涙がポロポロと溢れ、セーラー服の襟元を濡らしていく。彼女は蓮の胸に顔を埋め、子供のように泣きじゃくりながら本音を吐き出した。
「私は……高木さんが駅で、あんなに格好よく大勢の人の安全を守って働いているのを見て、自分が急に惨めになったの。こんな夜の街でしか生きられない汚れた私が、高木さんみたいな真っ当な人の特別になりたいなんて思っちゃいけないって……。嫌われるのが怖くて、だから逃げちゃったの……!」
「アミちゃん……」
「アミじゃない……っ。私の名前は、亜美です。長谷川亜美。お願い、高木さん……お店の私じゃなくて、本当の私を、忘れないで……」
お互いに「相手にふさわしくない」と思い込んで傷つけ合っていた二人の心が、冷たい雨の夜、静かな個室の中で初めて真っ直ぐに重なり合った。




