アミのテクニック
湯気に満ちた狭いバスルームに、シャワーの規則正しい音が響いている。
タイル張りの壁に反響する水音が、外の世界の喧騒を完全に遮断していた。
アミの、プロとしての容赦のない、けれどどこまでも優しい手つき。白い泡に包まれた彼女の手のひらが、蓮の最も敏感な部分を捉え、ゆっくりと、しかし確実に熱を帯びさせていく。
駅のホームでの張り詰めた緊張感、一昼夜眠れなかった脳の疲労、それらすべてが、アミの指先がもたらす刺激によって、ドロドロに溶かされていく感覚。
「蓮さん、ここ、すごく固くなってる……。気持ちよくなって、全部置いていっていいんだよ?」
耳元で囁かれる甘い言葉が、最後の引き金だった。
24時間、安全運行のために張り詰めていた蓮の『限界』が、彼女の手の中で一気に決壊する。
「は、……あ……っ!」
蓮はアミの細い肩にしがみつき、のけぞるようにして身体を震わせた。
アミの手のひらの温もりに吸い出されるように、蓮の生命の源である熱いタンパク質が、激しい奔流となってすべて解き放たれた。頭の中が真っ白になるほどの強烈な快感が蓮を支配し、一瞬、呼吸の仕方を忘れるほどだった。
「――っ、はぁ、はぁ……」
すべてを出し尽くし、蓮の身体から完全に力が抜ける。彼はアミの胸元に顔を埋めるようにして、荒い息を繰り返した。お風呂場の床を流れる水が、二人の足元で白く濁り、やがて排水口へと吸い込まれていく。
アミは、そんな蓮の背中を、優しくトントンと叩いた。
「よく頑張ったね、蓮さん。全部出せて、スッキリした?」
そのプロフェッショナルで、完璧な優しさ。
だからこそ、蓮は行為のあとの静寂の中で、またしても自分を現実に引き戻してしまうのだった。
(こんなに凄い快感をくれるアミちゃんが、僕個人に惹かれるわけがない。これは彼女の『技術』で、僕はただ、お金を払って救われているだけの、大勢いる客の一人に過ぎないんだ……)




