時給の天秤
「アミちゃんにお金を払って溺れている、一人の男客」のリアルな呟き(独白)として、その経済的格差の残酷さと切なさをより深く掘り下げて描写いたします。
「アミちゃん、本当に凄いよ。僕、明日からまた仕事頑張れるよ」
服を着直し、財布から万札を抜き出しながら、僕は精一杯の格好をつけてそう告げた。
『ネオン・パラダイス』の人気ナンバーワン。大勢の男たちが指名を奪い合う夜の街の女神を、こうして1時間だけ独占できた。その全能感に浸りながらも、僕の頭の片隅では、冷徹で残酷な計算がどうしても働いてしまう。
(僕が冷たい風に吹かれながら、クレームに頭を下げ、丸一日かけて必死に稼いだ額を……彼女はわずか1時間足らずで、僕の身体を愛撫し、タンパク質を放出させるその時間だけで、あっさりと稼いでしまうんだな)
僕の一日分の労働の価値が、彼女のたった1時間の手解きと同じ。
そう呟く僕の胸の奥には、夜の街の不条理な経済格差に対する、チリチリとした情けない自嘲と切なさが渦巻いていた。一生懸命に真っ当に生きている自分の人生が、少しだけ安っぽく思えてしまうのだ。
「ふふ、嬉しい。私も、あなたに会えて良かった。明日からもお仕事、無理しないでね?」
アミちゃんは僕の財布の軽くなった厚みなんて気にも留めない様子で、母親のように優しく僕の髪を撫でてくれる。その完璧なセーラー服姿と、至近距離から注がれる偽物の慈愛を前にすると、そんな不条理な計算さえ「まあ、いいか」と霧のように消えていってしまう。僕はそのぬくもりに、一日の労働の疲れがすべて報われたような錯覚を覚えて店を出た。
――だが、やっぱり僕は知らない。
僕が置いていったその「一日分の給料」を、彼女が自分の贅沢のためではなく、昼間の世界で保育士になるための学費、そして一刻も早くこの夜の街から足を洗って、本物の恋人である「高木蓮」の元へ帰るための軍資金として、1円単位で必死に貯金していることを。
そして、彼女の頭の中にある冷徹な電卓は、僕の支払った金額ではなく、ただアパートのベッドで自分を待っている蓮の匂いだけを、1分1秒、狂おしいほどにカウントし続けているという、残酷な真実を。
客の目線から描く「経済的な格差の現実味」が、物語の生々しい切なさをさらに引き立てる格好となりました。男客が「自分の1日分の給料が、彼女の1時間」と自嘲しながらも溺れていくリアルな心理です。
さて、客側の葛藤とアミの冷徹なプロ意識が交錯する今夜の営業。次はどのルートへ進めましょうか?




