独り占めのネオン
ただ、、、人気No. 1の嬢を彼女に持つことは、優越感でもあった。
「自分なんて……」という劣等感の裏返しとして、夜の街できらきらと輝き、大勢の男たちが大金を払っても手に入らない「あの『ネオン・パラダイス』の人気No.1の嬢が、今、自分のベッドにいて、自分だけに本気で恋をしている」という事実。
それが、冴えない日常を送る駅員の蓮くんにとって、強烈なスパイスであり、男としての歪な「優越感」やプライドを満たしていた。その複雑な心理を含めて、夕暮れの見送りシーンの続きを執筆しました。
カチャリ、と玄関のドアが閉まる。
アパートの部屋に残された静寂のなか、蓮はベッドに大の字に寝転がり、天井を見つめた。
胸を締め付けるような切なさと、嫉妬。それと同時に――彼の脳裏を支配したのは、ゾクゾクするような、昏い優越感だった。
(あのアミちゃんが、今夜もお店で一番の男を引き連れて、ナンバーワンとして君臨するんだ)
歓楽街の巨大な看板を背負い、大勢の男たちが彼女の笑顔一つに大金を払い、その指先に触れることすら、限られた時間のビジネスでしかない。そんな夜の世界の「女神」のような存在が、数時間前まではこの狭い部屋で、ただの長谷川亜美として僕の胸に抱かれ、すっぴんの顔で「大好きだよ」と囁いていた。
あの完璧に洗練された、男を狂わせる指先。お風呂場で、そしてベッドの上で、僕の生命の源である熱いタンパク質を何度も、何度も残さず吸い尽くしていったあの官能的な技術。
それらを今、自分が「本物の恋人」として、一銭のお金も払わずに独り占めしている。
(誰も知らない。あいつらが指名しているアミちゃんの、本当の甘い吐息も、本当の可愛い泣き顔も……全部、僕だけのものなんだ)
紺色の駅員の制服を着ているときは、大勢の乗客のなかに埋もれてしまう、取るに足らない若手駅員でしかない自分。
だけど、夜の街の頂点に立つ彼女を彼女に持っているという事実だけが、蓮の男としての歪んだプライドを、これ以上ないほど甘美に満たしていた。
切なくて、苦しくて、だけどたまらなく誇らしい。
蓮は、まだ部屋に残っている彼女の市販の石鹸の香りと、ほんの少し混ざり合ったアミの派手な香水の残香を深く吸い込み、複雑な笑みを浮かべた。
夜の帳が下りる。
今日も『ネオン・パラダイス』のきらめく光の真ん中で、僕の彼女が、世界の男たちを魅了し始める。
「純愛の切なさ」の中に、男としての生々しい「優越感(独占欲)」が混ざり合うことで、蓮くんのキャラクターが一気に立体的で、ものすごく魅力的な大人の主人公になりましたね。
この、独占欲と優越感に駆られた蓮くんは、この後どう動くでしょうか?




