表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高の王子様は、アタシにだけ重すぎる   作者: ちーよー
八乙女 める 近付きたい距離
PR
9/47

第9話 心のセキュリティ解除出来ず


いずみさん、おはよ』


 爽やかな五月の風が吹き抜ける、青空のもと。挨拶の非公開オーディションを始める。

 役者も審査員もアタシ……自然体に出来るかどうか。

 

『泉さん! おっはよ!!』


 これは、さすがにテンション高いか? 朝からウザッ。って、思われても嫌だもんね 


 通学中、入念に色んなパターンで何回も脳内オーディションをした。

 それは、もう。全く知らない赤の他人にすら、すれ違いざま、心の中で挨拶するくらいに。

 ただの挨拶、されど挨拶。好感度を上げるための大切な日常イベント。

 合格を出したいけれど、微妙にハマらず、不合格ばかりが出てしまう。

 

 もはや美少女の笑顔だけでも十分でしょ、……でも、せっかくなら、より可愛くは観られたい

 手鏡を片手に持ち、前髪を整え口角を上げる。

 うん、可愛い!  


 通りすがりの猫ちゃんを泉さんだと思って、心の中で『おはよ』


 おっ 今の口角の上がり方とか、たぶん完璧じゃん。これだねこれ。心なしか猫ちゃんも喜んでるように尻尾振ってたもん。

 小声で最終練習やってみよう。


 ゴミ捨て場にいるカラスさんに

 満面の笑みでーー


「おはよ! 」

「いつもより早……くね」



 あっ……横を向けば


「お、おは。優梨ゆうり

「おぉ……おは…よ。ってか、あの、優雅に飛び去って行った、カラスはお知り合いで?? 」


 見られたのが優梨ともだちで良かったのか悪かったのか。泉さんに見られるよりは全然良い。


「それには、理由があって」

「八乙女の式神的なカラス? 」

「そんな、特別な力は持ってない。笑顔で人を幸せにする事しか、アタシには出来ないよ」

「朝から、うっざ」


 どちらにしてもアタシはウザかったらしい。優梨に思われる分には、どうでもいいけど。

 隣を歩く『持田もちだ 優梨ゆうり』中学では一・二年で同クラだった友達。

 出席順が前後だったから仲良くなったけれど、高校でも同じように前後の出席順になってしまった。

 

 泉さんほどではないにしても、165cmの高身長。

 パット見で『キレイ! 』と、おもわせる、大人びた美貌の黒髪ロング。


 「優梨。クラス委員の仕事って、なんかあるの? 」

 「近いのだと、合唱コンクールかな」

 「ふ〜ん。高校でも、クラス委員になるとはね」  

 「仕方ないだろ、多数決で決められたんだから」


 同じ中学の子も数人はいるから、その子たちの票も集まったんだろうけど、謎のカリスマ性は凄いと純粋に思ってしまう。


 「アタシはクラスのスローガンにも、ビビったけどね」

 「まさか、本当になるとは思わなかったし。ウチは何回か、クラス全員に確認は取ったからな」

「それはそう」

 


  クラスのスローガン

『毎日ハッピー。とりまエモさとメロいを追求するクラス!』


 優梨も最初だから、場を和ませる意味合いで、冗談のつもりで言ったんだろう。

 本人的には不本意なのかも知れないけど、クラス総意の上でスローガンになってしまった。

 三学期が終わるころには、どんなクラスになるのか楽しみでもあり不安でもある。

 



 

 




 なんか、教室に近付くにつれて。ガチで息が詰まるみたいな、ピリピリ感がしてきた。

 泉さん、もう来てるかな?


 教室に入るなり廊下側、前から3番目。泉さんの席に目をやる。

 何か、本を読んでるのかな?

 相変わらず姿勢が綺麗だ。


 クラスメイトから大好評のキラキラスマイルで、全体に『おはよう』と言いつつ、意識は泉さんの方を向いている。

 少しドキドキしているのが分かる。大丈夫、大丈夫、ナチュラルに……

 自分に言い聞かせ、いつもとは違うルートで席へと向かう途中。


「泉さん。おはよ」


 うわっ。なんか、かたいなぁ。。

 練習したのに全然ダメだ、マジ有りえん。なんで、挨拶だけでこんなに緊張してんのよ。

 初対面でもないのに。


「お、おはよ」


 視線だけチラッと向けてくれたけど、まだ泉さんの心のセキュリティは解除出来ず。

 ここから。どう、距離を縮めて行けば良いのか。


 窓側の一番後ろがアタシの席だから、泉さんとは遠いし、話し掛けるタイミングが分からない。



「……なに? 今の雰囲気? 事後?? 」


 席に座るなり、優梨が振り向きながら、ブッ込んで来た。


「は!? 」

「いや、だって。土曜デートだったんでしょ」

「説明したじゃん! 泉さんに手伝ってもらうって」

「だから、その後」

「あのさ、こっちは大変だったんだから」

「いや、しらんけど。八乙女と泉の間に流れる空気感が、完全事後だったし」


 いや、それこそしらんけど。そんな風に見えた? 

 認証番号に失敗して、心のセキュリティ解除出来ず、時間を置いて再挑戦だよ。




『誘ってみる?』と、言いながら、優梨は泉さんの方に視線を向けた。


「先週4.5人で班を作れって、先生言ってたやつ」

「あーね。アタシと優梨と叶乃かのに……泉さんか」

 

 隣の席に目をやるも、叶乃は当たり前に来てなかった。

 いつも遅刻ギリギリか遅刻しちゃってる問題児。


 「泉が、良ければだけど」

 「さっそく、言ってくる! 」



 再挑戦が早くもやってきたじゃん。

 今まではグループを作るときは出席順だった。入学して一カ月以上は経つタイミングで、好きに作って良いことになったのだ。

 すでに出来上がってるグループも少なくないけど、泉さんが特定の人と仲良くしてるとこは見ていない。

 

 良し!と、心の中で握り拳を作り気合を入れてみたものの……なんか、嘘の彼氏役を頼んだ時より緊張してるんだけど。

 近付きたいと思えば思うほど、意識しちゃって普通に出来ない。

 意外とアタシって、乙女だったんだな。

 


「あの、泉さん。良いかな? 」


 今度は本を閉じて、しっかりと顔を向けてくれた。

 しゃがみ込み、泉さんと目線を合わせる。

 う〜ん。オデコ出した泉さんもきゃわいい。

 あれ? 人差し指にテーピング?


「指、どうしたの? 」

「何でもない」


 視線逸らした上に、指まで隠されちゃった。


「もしかして、土曜日」

「違う。大丈夫」

 

 言葉の圧こそ変わらないものの、これ以上は聞きづらい。


「えっと、班を作る。って、あったじゃん」

「ええ」

「あのさ。もし、良かったらさ、アタシたちと同じ班にならない。かなって? 」


 普段、アタシと泉さんが話すことなんてないから、クラスメイトの視線を浴びてるような…


「ごめんなさい」

「え? もう決まってる?」

「……ううん」

「じゃあ何で? 」


 泉さんの指先が、テーピングの端を弄る。

 視線を逸らして――


「ごめんなさい」

「アハハ……そっか。もう、決まっちゃってるよね」


 スッと立ち上がった泉さんは、アタシと目を合わせないように、きゅっと唇を噛み締めていた。なんか、身構えてる? そんなにアタシに誘われたの嫌だった? 嫌われるようなこと、したっけ??

  

 あぁぁぁ 振られたぁ 振られたよぉ〜


 再々挑戦ってあるのか? なんで、もっと早くに誘ってなかったんだ。

 いや、まぁ。土曜の出来事がなかったら、誘う気にもならなかっただろうけど 


「ただいま……てんさげ。情緒死んだ」

「こっから見てたから、分かるよ。泉、どの班になったんだろ? 」

「アタシたちの班じゃないことだけは分かる」

「泉に限った話じゃないけど。あぶれる子がいたら、ウチらの班にしてもらおうと思って、空けておいたんだよ」

「さすが、面倒見の良いクラス委員ですね」

「そんな、ふくれっ面で言うな。すぐ、顔に出る」


 自分でも悪い癖だとは思いつつ、直らないのだから仕方ないじゃん。

 少しイラッと来たので、思わず机に突っ伏した。

 なんで断られただけで、こんなにも凹むんだろ。


 「各班長が持ってきたリストに、泉の名前なかった気がするけど」

 

 そんなの、まだ出してない班があるだけでしょ。同じ班なら掃除とか日直とか、一緒にやれたのになぁ


 アタシと泉さんの距離って、どんだけ離れてんだろ?

 

 もう、今日一日。な〜んも

 やる気、起こんないや

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ