第47話 八乙女メル 球技大会 二部スタートだよ
10月27日 (火)晴れ 欠席一名 遅刻二名
来週の球技大会のメンツ、アタシいない間に秒で決まっててワロタ。ドッジボールみたいだから、当てられたら三倍返し確定……
「遅刻したら、その日の週直変わるとか、だるっ」
あっ……好き。言うのもだるっ……もちろん、泉さんは大好きだけど、あれは、告白の為のスイッチだから。もう、必要ないか。
ってか、アタシには知りたい事が、どうしてもある! ビデオ通話してた時に、本当に泉さんは寝てたのか? 怪しいんだよな……付き合ったから、気にする必要ないかもだけど、アタシ気になります! 謎を解かねば!!
「私、バスケットボール……」
「わっ、ビックリした! 急に後ろから覗か……」
「学級日誌。なに、書いてるのかな?って」
ひぃ 振り向いたら、至近距離にお美しい顔が……流し目すな! 前髪の隙間から覗く、切れ長の瞳……色気エグっ!! 生唾飲み込みないように、ペットボトルのミルクティーを口に含む。
「い、泉さん。バスケットボール上手いじゃん」
「身長が高いから、有利ってだけ。八乙女さんと一緒が良かった」
「あーね。でも、一緒の体育館だし、応援するよ! 」
優梨もドッジボールで、今日は欠席してる叶乃もドッジボール……ドッジボール人気なかったんだろうな。
「泉さんのバスケ姿、動画撮っちゃお」
「やめてほしい」
さり気なく『動画』と言うワードを出しておいてからの
「動画で思い出したけどさ、前にビデオ通話したじゃん」
本音を聞き出すには、こちらも本当の事を言わないといけないわけで
「あの時。寝ぼけてさ……『好きになっちゃった』って、言った気がするんだよね……アハハ……」
ほんとは寝ぼけてないし! 確実に言ったんだが!! なんか、思い出すと恥ずっ!!
「そう。私は知らないけれど」
冷たっ!!
「そ、そっか〜。でも、なんかさ……『わたしも好きだよ』って、聞こえたような……」
泉さんは、お美しいお顔を、お美しいお手々で、覆うと、魂が口から抜け出しそうなくらい、どデカいため息を吐いた。
「……はぁぁぁあーーーっ! ……もうダメ。穴があったら入って、そこでしばらく暮らしたい。今から言うことは、聞いたら絶対にすぐに忘れてね」
「う、うん」
穴に入っても、仲良く一緒に暮らそうね……ってか、いつもの凛としたイケボはどこへやら、耳まで真っ赤じゃないですか。
「八乙女さんの『好きになっちゃった』って、本当に私の事だったんだ」
「う、うん」
「ごめんなさい。私……画面収録してた……目覚ましで、使おうと思って……」
「う、うん?? 」
「だからね……いつの間にか、私も眠ってて……寝言で反応した……みたい」
そのままがっくりと項垂れる泉さん。ここまで、態度に出ること珍しいけど、どう言うこと? 画面収録?? 目覚ましで使おう???
「枕抱いて悶絶してて、オデコとか、ホッペタとか、鎖骨とかにキスして跡を」
「ストップ、ストップ!! もう、お腹いっぱいです。ごちそうさまでした! 」
泉さんが顔を赤くするのは分かるよ! そんな、恥ずかしい事をしてたんかいっ!!って……でも、そんなん聞かされた、アタシも赤くなるでしょーが!
ん? って、ことは……
「アハハ……泉さん。その頃から、アタシのこと、ガチで好きだったの? 」
「しょ、小学三年生の頃から……ずっと……好き」
「はっ? だるっ……好き!!! なにそれ、ぜんぜん言ってくれなかったじゃん!! なんで、そんな前から」
「だって。八乙女さん覚えてないでしょ」
「な、なにを? 」
泉さんは自分の形の良い鼻に、人差し指をそっと当て、アタシの耳元に顔を近付かせた。
「内緒」
ここで、いつもの凛としたイケボは反則だって……
脳が痺れるような甘い囁き。それだけじゃなく、泉さんはその指を私の唇の端へと滑らせて、そっと押し当ててきた。指先が少し熱く、泉さんの潤んだ瞳が暴力的な色気を感じる。
「早く治りますように」
狙ってやってるよね? 無自覚天然タラシじゃないよね??
「唇。痛いから、やめて」 めちゃくちゃトキメイたのが、なんか悔しいから、冷静に言ってやった……言えてたよね?
元は泉さんのせいじゃん!! 昨日の泉さんとずいぶん違う。今日のが、本当の泉さん……昨日の泉さんも、今日の泉さんも、同じ泉さんか。全部ひっくるめて泉さん……ダメだ。ゲシュタルト崩壊する。
球技大会……クラス対抗と、言う事は……
「ウチらのクラスは全競技、優勝のみを成功とする!! とくに! ウチのいるドッジボールは絶対の絶対だ!! 」
体育館裏の入り口で円陣を組む、ドッジボールになってしまった、可哀想なメンツ……ハチマキをキツク結び直す優梨の瞳には炎が宿っていた。
ですよね〜。負けず嫌いの優梨だもんね……アタシも負けず嫌いではあるけど、優梨ほどじゃないしな。楽しきゃ良いじゃんね!
「相手は2年3組、先輩だけど遠慮せず当てて行こ!! 」
「ユーリン。強そう? 」
なぜ、叶乃は11月なのに半袖短パンのジャージなんだ? 子どもは風の子と言うけど寒くないの?
「強いか分からないけど、生徒会長になったばかりの橘先輩と、美人で人気の一条先輩がいるクラスだよ」
ぜってーーーーー勝つ!!
まずは泉さんのバスケットの方が先か。応援しちゃお。
「優梨。アタシ、バスケ応援して来る」
「了解。しっかり勝てるよう応援、頼むわ」
「カノもバスケ応援、行く」
「黛はダメ! 」
「なんでさ? 」
「ウチと特訓をするから」
明らかにジト目で面倒くさそうな顔をする叶乃。
「カノには必要ないよ。誰もカノには当てられない」
なんか、能力系バトル漫画みたいな言い方してるんだけど……確かに、叶乃は面積小さいし、すばしっこいから当てるの難しそうだけど。
「じゃ、アタシ。行ってくるね」
「応援する時は、ギャラリーからな」
「分かった」
タオルを首に掛けて体育館に入る。2階のギャラリーに移動すると、すでに大量の生徒で埋まっていた。
なんで、こんなに人がいるの? 球技大会に参加してない三年生もいるじゃん!?
凄いザワザワしてるけど……なんか、嫌な予感がする。
何処からか「あっ。ほら、来たよ! 」って、声が上がると同時に、一気にザワツキ始めた。
みんなが視線を向ける方に目をやれば……ハイ。知ってました。
「めっちゃイケメン!! 」
「ヤバっ…ビジュ、エグっ」
「背、高っ。ほっそ! モデルかよ」
「あれで、頭も良いんでしょ? 最高すぎん?? 」
容姿端麗、才色兼備、国宝級のビジュアル、存在がファンタジー……泉さんへの褒め言葉が、あちこちから、出るわ出るわの大放出。
しかも、隣のグループでは『泉しか勝たん』書いてある、お揃いのTシャツ着てるし。
なんなんこれ? 一条先輩が言ってたけど、アタシ派もいるんじゃないの? 八乙女派の人たちは、どこ行ったん??
「せーの」
『『泉さーん! こっち向いてー!』』
うぉっ 黄色い声援が体育館に響き渡る……アイドルのライブ会場になったのかな?
「ちょ! こっち、見てるって! 」
「ヤバいヤバい! 手振る? 振ってみる?? 」
隣の泉さんファンクラブがギャーギャー言ってらっしゃるので、誰にも見つからないよう、超控えめに泉さんに手を振った。
「えー。こっち見て微笑んでない?? 」
「もっと、手を振ってみようよ! 」
さっきより、少しは大きく手を振ってみた。
「ヤバい! さっきより、微笑んでくれてない?? 」
「マジ? 手、振ってくれないかな?? 」
なんか、オモロ……口パクで泉さんに『手を振って』と、伝えてみる。
何回か口パクすると、分かってくれたのか
「きゃーー 私たちに手を振ってくれてるじゃん!! 」
『いっずみー! 私たちの王子様ー!』
ふふふ……アタシの王子様からの、お裾分けだぞ。
アタシ、性格悪くて草
泉さんに向かって拳を握り締めた
泉さん Fight!!




