第4話 嘘・初・恋 ④
見覚えがある天井に、見事にフィットする快適な枕。
自分の部屋のベッドの上にいることは分かる。
アタシ、どうやって帰ってきたっけ?
途中まで、泉さんと一緒だったのは、何となく覚えてる。
泉さんと分かれてから帰宅するまでの記憶がフライアウェイ。
今日あった事ってガチだよね?
格好良いのと可愛いの温度差エグ過ぎ。短時間で揺らされっぱなしなんだけど
思い出すだけで、嬉しいのか恥ずかしいのか。他の気持ちなのか。感情の交差点が渋滞でバグる。
今なら自己ベスト更新できそうなくらい、脚がバタつく。
短時間でキュン貰いすぎだって、トキメキオーバードーズだって……。何、枕を抱きしめちゃってんだ、キャラじゃないって。
『可愛い』なんて聞き飽きた言葉じゃん! 赤ちゃんの頃から何千何万回も言われてるって。
アタシが可愛いなんて、自他共に共通の事実なだけなんだって、なにを今更言われた所で動揺しちゃってんの?
鼓動が速くなって、変にフワフワしちゃってんのは何なのよ!
イケメンだった泉さんが良いのか、笑った顔が可愛かった泉さんが良いのか、どっちなのって話なわけよ。
そりゃ、どっちも、神過ぎて詰んだ!
少し、落ち着こう。
そう言えば泉さんに、ちゃんとお礼を言ってなかった気がする。
そこは、ちゃんと人として、言っておかないと。
アタシの為に色々とやってくれたんだから。
スマホの画面に初めて映った『泉 真琴』の三文字。不思議だ……今までは目に入ってきても、何とも思わなかったのに。
なんで、こんなに心がくすぐったいんだろ。
いったん、深呼吸だけしてかけよう。いったんね。
Rrrrrrrrrrrrr
『お電話ありがとうございます。お留守番電話センターに〜』
留守電かぁ……何となく安心してるアタシがいる。
『あ、アタシ。八乙女です。お礼言ってなかったなぁ。って、今日は本当にありがとうね。もっと泉さんと仲良くなりたい。また、月曜日に』
ほら、緊張せず言えたし。なんてこともない。友達に電話したのと一緒でしょ。なんも変わらないよ。
一応、LINEでもお礼言っておこう、猫、猫、可愛らしい猫のスタンプはっ。と
紅茶が好きなこと、たぶん猫が好きなこと
好きな食べ物は? お菓子は? 良く聴く音楽は? 推しはなに? 趣味は? 何してる時が楽しい? ピアノって、今もやってるの?
アタシ、ぜんぜん泉さんの事を知らないんだ。
検索してすぐに分かれば楽なのに。
……それじゃつまらないか。
少しずつでも泉さんの事を知りたい。泉さんの笑った顔が、またみたい。この感情が何なのか知りたい。
どちらにしても、まずは
『泉さんと、友達になりたい』




