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女子高の王子様は、アタシにだけ重すぎる   作者: ちーよー
八乙女める 遮二無二ガール
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33/57

第33話 文化祭 ①

 教室のドアを開ける前から、皆の声が漏れていた。

 さすが、夏休み明け初日……いつもより、だんぜん声の大きさが違う。

 

 泉さん来てるかな? 少し緊張しながらドアを開けた。

 グループごとに散らばっているからか、教室のあちこちから、一気に音の洪水が耳に入って来る。

 

 アタシを見るなり、すぐにお土産を渡され『めるちょ、聞いて』と、夏休みにあった出来事を話し始める、クラスメイトたち。


 話に付き合いながらも、横目で泉さんの席を確認する。まだ泉さんは来ていなかった。

 珍しいな、アタシの方が先に来るなんて……はっ!? あれか? 夏休み明け初日は、お土産渡す口実で呼び出して、告白をしちゃう。って、聞いたことがある……実際、中学の頃されたし。

 もしや、泉さんも告白受けてたりする?? 

 

「優梨、おは」

「おはよ。ってか、すげーな」

「なにが……あぁ、これ」


 両腕に抱える、クラスメイトから貰ったお土産を机に置いた。


「なんか、教室入る前にも別クラとか、先輩なのかな? 顔しか見掛けた事ない人たちからも、貰ったから」


 机の上に置かれた、大量のご当地お菓子……ありがたいけど、特に遠出してないアタシには返せるものもないんだけど


「貰いっぱなしも、なんか悪いじゃんね」

「別に催促したわけでも、八乙女から欲しい言った訳でもないから良いだろ」

「かなぁ……」


 少し困惑していると、ドサッドサッ。と隣から聞こえてきた。


 「ヤバっ! 」

 「黛……どした? ハロウィンには早いぞ」


 叶乃の机には、お菓子やぬいぐるみが、アタシの3倍の高さで積み上がっていた


「ん。ここに来るまでに、いろんな人から渡された」

「黛が学校公認マスコットだって、噂は本当だったのか? 」

「それ、カノが知らないんだけど、カノ非公認なんだけど」

「で、叶乃はお返しするの? 」

「一応、スイス行ってたから、バタークッキーとか、ハチミツ、チョコはあるけど……さすがに全員に渡す分はない」



 スイスとか、どこにあんのよ。て、感じなん……あっ! 泉さん来た!! と、思ったらすぐに取り囲まれてる。

 告白とかじゃなく、お土産渡されてるだけか。でも、あの人数に囲まれてる時点で十分おかしいよ。

 

 クラスどころか、今では学校のイケメン枠筆頭みたいな感じになっちゃってるもんね。

 

 あとで、話に行こう……そして、直接聞きいてみたい。通話してた時に起きていたのか?……『起きてたよ』言われたら、アタシはなんて言えば良いんだ? シミュレーションしようにも、どう着地させて良いのかも分からない。



「八乙女と黛に先に言っとくけど、今日のLHRさ、文化祭のクラス出し物決めるから、何したいか、簡単な理由と一緒に紙に書いて、意見箱に入れておいて。誰も案を出さかなった時の保険で」

「「おっけー」」


 叶乃と返事がかぶるも、文化祭の出し物は、アタシの中では決めていた。

 高校の文化祭でやってみたかったんだよね。ベタと言えばベタだけど。




 


 ホワイトボードには、意見箱から出された文化祭の出し物についての、提案と票数が書かれていた。


 ①演劇   5

 ②模擬店(屋台) 9

 ③脱出ゲーム 11

 ④メイドカフェ 12

 ⑤模擬裁判 1



 ⑤の模擬裁判ってなんだ? 理由聞いてもイマイチ分からなかったし。授業の一環としてやるのは分かるけど、文化祭の出し物で模擬裁判なんてある?? 誰だよ、こんなの書いたの。


 優梨がホワイトボードを確認し、振り向いた。


「じゃ。多数決で上位2つ、③の脱出ゲームと④のメイドカフェで決戦投票します」

「異議あり! 」


 隣から勢いのある鋭い声が聞こえてきた……模擬裁判いたよ! なんとなく見当はついていたけど、やっぱ叶乃じゃん!!


「却下」

「横暴だ! 被告人のくせに」


 手を挙げながら立ち上がる叶乃……クラスメイトからは『叶乃ちゃんが提案したなら、そっちにしようかな』的な声も、ちょいちょい聴こえては来た。


「なんで、ウチが被告人なんだよ。座らないと退出させるよ」

「くっ……権力の犬が」

「はい。黛さん、退出します。みんな拍手で送りましょう」

「せめて、投票のやり直しを……」

「民主主義を捻じ曲げるな。時間なくなるから、決戦投票します。ウチが今から③か④聞いていくので、手を挙げてください」



 叶乃に目をやれば悔しそうに、こぶしを握りながら座りなおした。小声で「法廷で会おう」言ってたのは聞き取れた。


「ってか。叶乃、そんなに模擬裁判やりたいの? 」

「今の推しキャラが」

「あっ。やっぱ、言わなくて良いや」


 そんな事だとは思ったけど、クラスを巻き込むのは辞めて欲しい。


「あれだよ。推しキャラが弁護士言っても、悪徳のほうね」

「分かったから、あとで聞くよ。今は優梨の話聞いてないと、本当に出て行け。言われるよ」



 って、優梨はわざわざこっちをみて、静かになるまで待っているみたいだけど……アハハと苦笑いで誤魔化してみる。


「はぁ〜。じゃあ、③の脱出ゲームがいい人……15。ウチを入れて16人かな」


 「優梨が指差して確認するも、結果はもう決まったみたいだった


「④のメイドカフェがいい人。……21……22人、決まり。メイドカフェになります」


 やった! アタシが提案したんだけどね!! メイドカフェをしたい理由なんて一つだけだ。泉さんのメイド姿が見たい!!


「ユーリン。せっかくなら、メイドと執事にしない? 女子校だし、執事もいたら盛り上がるって」


 は? 何を勝手に叶乃は言っちゃってくれてんの? そんな事言ったら……


「それ、良い! 泉さんが……」

「賛成、泉さんのみたい……」

「執事とか似合い過ぎでしょ」


 ほら、みんな泉さん見ながら好き勝手言ってる……って、アタシも人のこと言えないんだけど。

 泉さんの執事姿が似合うなんて当たり前じゃん。

 でも違うんだよ。

 アタシは泉さんのメイド姿が見たいの!絶対似合うし、尊いに決まってる!



「じゃ、多数決で。メイドのみが良い人……八乙女だけ? 泉もか」


 泉さん…………好き!いや待って。

 アタシの提案が通ったはずなのに、なんで最後はアタシと泉さんだけなん? ガチで意味わかんないんだけど。



「いちおう、聞くけど、メイド+執事カフェが良い人……35……ウチ入れて36」  


 優梨、お前もか……そして、自分で提案した模擬裁判が叶乃ひとりだったのに、なんで勝ち誇ったような顔でアタシを見るの?

 おかしいでしょ!! 勝手に付け足された上に大差で負けた……なんだ、このやりきれない感情は!!


「では。ウチらのクラスは、メイド執事カフェに決定。企画書を実行委員に渡して許可が降り次第、役割は追って決めます。各々で何やりたいか決めといてください」


 民主主義なんて嫌いだ……数の暴力なんて大嫌いだ……思わず机に突っ伏してしまった。

 どうにかして、泉さんをメイドにさせる方法を考えないと。



 謎の惨敗感を抱えたままLHRが終わり、放課後になるや気持ちを切り替えて、泉さんの席へと向かった。

 軽い朝の挨拶と昼休みに少しだけ、しゃべったくらいで、今日はガッツリ絡めてない。

 だって、意識しちゃうじゃん! こちとら、恋するピュアガールなんだから!!



「い、泉さん。帰ろう」

「えぇ あと、これ。渡せなかったから、いま渡すね」


 泉さんは通学バックに手を入れ、紙袋を取り出した。


「北海道のお土産のホワイトチョコレートと、チョコポテト」

「やった! ありがとう!! このチョコポテト好きなんだよね!! 甘さとしょっぱさの無限ループ入るやつ」


 大事に受け取りバックに仕舞う。アタシも何かお返ししたいなぁ……って、なんも買ってないなアタシ。


「八乙女さん? 帰らないの?? 」

「あぁ……ごめん。帰ろ」


 何あげようか考えてフリーズしてた。久しぶりに泉さんと帰れる……






 最初こそ緊張してたけど、久しぶりに話すと楽しくて、少しでも遠回りしたくなる。

 借りてた本の事、アタシがオススメしたアニメの事。たくさん泉さんと喋ったし、夏休みに行ったカフェにも、今度行く約束をした。



「八乙女さん。これも……お土産。渡すか悩んじゃってたけど」

「可愛い!! キーホルダー? なんで悩むの? 嬉しいよ! 」

「少し、子どもっぽいかなって」

「そんな事ないよ! 可愛いし、ありがと!! めっちゃ大事にするね! 」

「うん。なんか、八乙女さんっぽいなって」


 泉さんがくれたのは、馬の上に可愛い猫がグデっとしているキーホルダーだった。

 アタシっぽいって、グデッてる姿が。かな? そんな風に思われてるの??


「ホントありがとう!! バックに付けちゃおっと!! 」


 泉さんから貰った物なら何だって嬉しい。さっそくバッグに付けたキーホルダーを見ては、ついニヤけてしまう。


 こういうので、お揃いとか出来たら良いのにな。


 …………今なら、聞ける。

 夏休みの間、離れてても泉さんの事ばかり考えてた、怖くても聞きたい。

 大丈夫、泉さんとの関係性はどうなっても壊れない。



「あ、あの。泉さんさ……」 

「どうしたの? 」


 恥ずかしくて泉さんの方を向けない……大丈夫、大丈夫。普通に聞けば良いんだよ。


「前にビデオ通話したじゃん」

「……えぇ」

「ご、ごめんね。寝落ちしたみたいで……」

「大丈夫……早朝シフトで疲れてたでしょ」


 ダメだ……心臓バグりそう。心拍数エグいって。なんか、地面しか見れないんだけど!


「でさ……アタシ。途中で起きたみたいなんだけど」

「……ごめんなさい。私も途中で寝ちゃってたみたい」

「だよね……なんとなく、そうは思ったんだけど」



 実は起きてて、アタシの声を聞いてた?……いや、聞いてたらどうするんだよ。

 もし泉さんも意思を持って『わたしも好き』って言ってくれてたら?鼓動が爆走して、もう何も考えられない。


 ハイ、詰んだ。  えーい、聞いちゃえ!


「あれって、起きてたりしてないよね? なんかアタシ言ってたの聞い」

「ごめんなさい。寝ていたから……本当に分からない」 

「……アハハ……だよね。泉さんも毎日、朝早い言ってたもんね……眠るの早くなっちゃうよね」




 食い気味で否定されちゃったけど……う〜〜〜〜〜〜ん………ホントか嘘か……これ、どっちだ??

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