第27話 片想いの行方2
ベッドに寝転び、ぼんやりと天井を見つめた。霧がかったモヤモヤは、シャワーを浴びても消えてはくれなかった。
スマホを手に取り『同性の女の子を好きになった、どうすれば良い?』……打ってはみたものの、すぐに打ち消す。
AIに聴いてみたところで、アタシが欲しい答えが見つかる訳でもない。それに、AIに教えてもらうのも、なんとなく嫌だ。自分の感情くらいは、何とか自分で決着させなければ。
ボディクリームでも塗って、落ち着くか。
とは、思ってみるものの、落ち着ける訳ないじゃんね。当事者になってみたら、ハードモードだって。相手がいるんだし、アタシの気持だけ押し付けても上手くいかない。
オープンにして関係が壊れるのも、隠すのも嫌だ。ストレスでメンタルやられそう。
アタシが泉さんを『好き』なのは間違いない。これが恋で、恋愛対象として『好き』なのも、間違いない。初恋だから戸惑うけど、この感情を否定はしたくないし、大事にしたい。
でも、泉さんは? 友情と愛情の違いってなんだろ?
少しずつ反応をみて確かめたいけど、そんなのアタシに分かんのかな?
頑張って、少しグイグイ行ってみたり、それとなく、恋愛系の冗談を言っても、泉さんの反応って分かりづらいんだよね。
スマホをタップしホーム画面に戻れば、アタシと泉さんがハートを作っている。
お風呂上がりの泉さん。いつもより幼い感じが、かわよ。
アタシの照れ顔って、分かりやすいな……頬赤いの丸わかりじゃんね。
お泊りした時に『ツーショ撮ろ』言っといて良かった。めちゃくちゃお願いして、このポーズにしてもらったけど。ワンチャン、バックハグとかでも行けたか? メルチポイントの時は勢いで出来たのに、意識しちゃうと出来ないんだろうな。
会えなくてもスマホには泉さんがいる。泉さんも、この写真観てたり……ないか。ってか、泉さんって、妙にセクシーになる時あるよね?
目薬とかドライヤーの時とかもそうだし、あのセクシーさは、アタシの心臓に悪いって。
はぁ〜 夏休み明けにしか会えないのかな? もう一ヶ月近くも会ってないんですけど! RINEや写真の送り合いはするけど、景色とか、お馬さんしか送ってくれないもん。
確かに良い風景だし、お馬さんも可愛いけど、ぜんぜん物足りない!! アタシばっか自撮り送ってるじゃん! って、言ってトーク履歴とか見返して、ニヤニヤしちゃうんだけどね。
何回も電話しようと思ったけど、久しぶりのパパとの時間を邪魔するのも悪いから、電話はしにくいし。でも、限界来てるって、せめて声だけでも聞きたい!
今が、23時前でしょ。電話するには遅いかな? 今日もRINEのみ。
うぅ……電話してくれたって良いじゃん!!
起きてても、いらないことまで考えちゃう。早朝シフトで疲れてるし、ボディクリーム塗ったら寝ようかな……でも、泉さんから借りてる本も続きが気になるし、夏休み終わったあとに感想を言いたい。
モヤモヤを振り払うように丹念に脚をマッサージしていると、枕元に置いたスマホの通知画面に『泉 真琴』と出てきてので「ひぃ」っと声が漏れた。
なにこれ? 通じたの?? なんか前より通話するのがドキドキしてしまう。
深呼吸してから、おそるおそるタップした。
『あっ。八乙女さん』
『ど、どうしたの? 』
ちがう! どうもしなくても良いんだって!! 電話くれたのが嬉しいんだから。
『どうしてるかなって? 』
『アタシも! 今、電話しようとしてた!! 』
思考シンクロしちゃってんじゃん! 泉さんの声だ! わーい!! テンションと声のトーンが上がってしまう。
『ね、泉さん。ビデオ通話にしない? 』
『少し恥ずかしいから、照明は暗くして良い?』
『ぜんぜん良いよ! 』
おっ! 泉さん。ターバン風のカチューシャしてる。スマホの明るさも抑えてるのか、表情があまり分からない……ってか、ビデオ通話にしたら、目を合わせてくれないんだけど。
『や、八乙女さん。お風呂上がり? 』
『そ。ゴメンね、マッサージしてボディクリーム塗ってた』
『あのさ……ボディクリーム終わったら、八乙女さんも照明暗くしない? 』
『別に良いけど、なんで? 』
『その方が、私は話しやすい』
『おっけー。じゃあ、もう間接照明だけにするね』
同じようにスマホの明るさも抑えてっと。
え? なんかエモいな!?
スピーカーにしてるから、薄暗い部屋に、泉さんの小さい声が漏れる。
『ねぇ、泉さん。なんか、お互い淡い光の中にいるみたいだね』
『夢の中で待ち合わせしてるみたい』
『アタシは、夢の中でも会いに行くよ』
照明を暗くしていると、不思議に自然と声も小さくなっていく。
内緒のコソコソ話しをしているみたいで、どこかくすぐったい。この雰囲気に流されて、恥ずかしい言葉も言えてしまう。
アタシ、深夜テンションになっちゃってる?
『待ってる。八乙女さんの方が先に眠っちゃいそうだけど』
『じゃあ、アタシが待ってる』
必死に泉さんの表情を探したけど、薄暗くて分からない。
アタシはいま、ニヤけてますよ。だって、泉さんとのお話は楽しくて嬉しいから。電話繋ぎっぱなしでゴロゴロとかハッピー過ぎる。
…………あれ? 何してたっけ?? 寝てた???
今、何時だろ?…………って、ヤバっ! 泉さんと電話してたよね!?
スマホ何処にいった? ベッドの上にはなく、床にスマホは転がっていた。
最悪! 泉さん、ごめんね……せっかく電話くれたのに、アタシのバカ!! なんで、寝落ちしちゃったんだよ。早朝シフトで疲れてても泉さんからの電話は特別なのに!!
え? 待って。 これ、まだビデオ通話のままじゃん。今が1時30……って、ことは2時間くらい、寝落ちしてたのかよ!アタシ!!
『泉さん? 』
少し小声で呟いてみるも反応は無し……なんだろ?画面端に映ってんの、カチューシャかな?
暗くて良く分からないけど、泉さんの顔の近くにスマホは置いてありそう。
スマホの角度変えたら、ワンチャン泉さんの顔見えないかな! 前にお泊りした時もアタシが先に寝ちゃって、泉さんの寝顔見れなかったし。見たい!!
って、スマホを色々と傾けたところで、何も変わらないのは、分かってるのに……
『おーい。泉さん? 』
もしかして、夢の中に会いにきちゃってる? アタシ起きなきゃ良かったかな。
夢の中で合うために、もう一度、頑張って寝ようかな……薄暗い静かな部屋。泉さんの規則正しい寝息が溶け込んで行く。
これだけで、離れてるのに一緒に眠ってる気分になる。
ドキドキもするけど、それ以上に心が安らぐ。
泉さんASMR……最高かよ。
イヤホンにしてノイキャン付けて聴きたい……それくらい、良いよね? 通話してたんだから、盗み聞きじゃないよね??
普段は大人っぽいのに、小動物みたいな寝息立ててる泉さん。かわちい。
好きピへの恋が無限に湧いて来て、ニヤニヤが止まらんて。ちょい前から思ってたけど、アタシが良く笑ってる時って、たいていは隣に泉さんがいるんだよな…………もう確定演出だ。
泉さんが、アタシのことを友達以上に見てくれるかは分からない。
考えても答えが出ないことは、一旦、置いておこう!! どうせ優梨にも言ってるけど、答えなんて簡単に分からないし、質問さえ出来ていない。
やっぱ、そのうち「なんとかなる!」のマインドで行こ!
もう、好きだよ。好ーき。涼し気な目元が好き。綺麗で広げると少し大きい手が好き。静かに笑う顔が好き。
優しいとこが好き。真面目で不器用なとこが好き。
一緒に歩く時、アタシに歩幅合わせてくれるのが好き。既読無視しないとこが好き。
ストーカーから守ってくれた時の声が好き。アタシだけにピアノ弾いてくれた音が好き。オムライスを美味しく作れちゃうとこも好き。ドライヤーで髪を乾かしてくれたことも好き。
もっともっと、言い足りないし、これからもっともっと『好き』が増えていくと思う。
……なんか、深夜テンションになって来ちゃった。
まっ、深夜だし良っか。
目が合うと嬉しいし恥ずかしい。
返信や電話が来るだけで、心臓がバクバクする。
泉さんは、アタシがそんな事思ってるってミリしらだろうけど……気づかれたら終わっちゃうのかな。気付かれない安心感と、少しは気づいて欲しい寂しさ。
どうしてくれるのよ? 泉さんのこと
「好きになっちゃった」
『……わたしも……好き』
トゥルン♪
え? 瞬間的に切っちゃったけど、起きてたあぁぁぁぁぁ??
つい、声に出ちゃってたけど、聞かれてた!? ミュートしとけば良かった!!!
いや、聞かれてないよね? 起きてないよね?
寝言だよね? ……え? いや、待って。
ノイキャン付けてるから、めちゃくちゃハッキリ聞こえたんですけど!?
どうしよう!? 気持ちバレた? いや、『好きになっちゃった』しか言ってないはず……泉さんの『わたしも』って、何のこと!?
もう、ぜんぜん寝れなくなっちゃったじゃん!
どうしてくれるのよ? 泉さん!!




