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女子高の王子様は、アタシにだけ重すぎる   作者: ちーよー
八乙女 める 確定演出
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23/51

第23話 インナーカラー

 ぶっちゃければ、期末テストの結果は詰んだ。

 明日から本気出す。の、無限ループで、怠け過ぎた。

 ガチで『習ったっけ? 違う世界線のテストだよね? 』と、思う事が何度もあったし。

 追試こそ回避したものの、順位的には下から数えた方が圧倒的に早かった。


 終わった事を悔いても仕方がない。そもそも悔いているのかすら怪しいけど、前を向いて進んだほうが圧倒的に面白い。


 そんな楽観的なアタシでも、バイブスが上がってようが初めて行く場所は、少なからず心臓がバクバクする。 

『行けば何とかなる。ピュアガールよ、恐れるな』のマインドではいたけど。


 目の前にはモノトーンを基調に、大きな窓を組み合わせたコンクリート打ちっ放し。

 それはそれは、スタイリッシュな……語彙力ないと言葉が出て来ない。なんか、都会的な感じ?

 人通りの多い街中にあるんだから、そりゃそうか。


 高一が来るには早そうな感じもする、ラグジュアリー感。

 雑居ビルの中にある美容院とは違った存在感が眩しい。


 舐められちゃ行けないと思い、勇気を出してランウェイを歩く気分で中へと踏み入れる。

 さすがに視線だけは下を向いちゃってるけど。


「お待ちしておりました。16時から、ご予約頂いてた、八乙女さんですね?」

「はひゅ」


 あっ。詰んだ……『はい』の一言すら言えず噛んでしまった。ランウェイ気分がすっごい恥ずかしい……って、この声は


「泉さん? 」

「いらっしゃいませ」

「何してるの? 」

「あ〜。レセプション」


 レセプション?って、受付みたいな感じだよね?? ってか、前にみた私服よりも大人だ。

 黒のロングワンピースに、ハイブランドのベルト……アタシよりランウェイが似合うのは当たり前だろうけど、モデルやってる女子大生か!?

 とにかく格好可愛いーー!!


 同じ高一だよね? なんかオフショルで来たアタシが恥ずかしくなってくる。


「レザー素材のミニスカに、オフショルとか八乙女さんっぽくて。可愛いね」

「アハハ……ありがと」


 うぅ……なんて、優しいんだ。もう一回聴きたいんだけど、『え? 』って、聴き返せば良かった。


 席に向かう中、素敵な美容師さんたちに「いらっしゃいませ」言われるけど、泉さんがダントツに輝いて見えた。



「こちらに、お座りください」

「初めて来る場所だから。少し、緊張する」


 半個室みたいな部屋で、鏡越しに目が合う。普段と違う泉さんにドキドキしてる事は分かる……


「八乙女さんでも、そいうことあるんだ」

「あるよ! 脳内お花畑だと思ってるんでしょ」


 実際、中々のお花畑が育ち中ではあるんだけどね。


「パワースポットだと思ってる」

「パワースポット? 」

「八乙女さんは、私に色々な力を与えてくれるよ」

「あーね。眼力による魅力とか……」


 思いっきり目を見開いたとこに、八乙女さんをもっと大人にしたエレガントな女性が近寄って来た。


 小学生の頃に授業参観で見掛けた事があるけど、ぜんぜん変わってない。

 失礼ですが、美しい魔女ですか?


 交代するように泉さんは一礼すると、受付へと戻って行った。


「いらっしゃいませ。今日、担当する泉です。宜しくお願いします」


 泉さんのお母さん……仕事場だからオーナーさんか。


「いつも真琴と仲良くしてくれて、ありがとう」

「え? いえ。アタシの方が迷惑掛けること多いですし……」


 泉さんって、アタシの事をお母さんに話してるのか。どう、伝わってるのかは怖いけど嬉しくもある。


「小学生の頃も八乙女さんの話を良く聞かされてたわよ」

「おかあさ……オーナー。次の予約もあるので、時間がなくなります」

「えぇ~。もっと、話したい。髪の事について、カウンセリングしないとだし」 


 慌てて駆け寄ってきた泉さんに、オーナーさんは口を尖らせていた


「じゃあ、早くカウンセリングしてください!!

 」

「真琴ちゃん怖い……誰に似たのかしら」

「スタッフさんからは、あなた似って言われますけどね! 」

「高身長で格好可愛いところはね」

「もう。いい加減にしてよ、恥ずかしいから」

「は〜い。ちゃんとやりますよ」



 ずいぶん泉さんには子どもっぽい喋り方になのにビックリなんだけど。

 泉さんはため息を付きながら戻って行った。


「インナーカラーとカットですよね? カラー剤は匂いは無し」

「はい。カラーはベールピンクで、カットは、くせ毛を何とかしたいなぁ。と……」

「ミルクティーベージュとピンク系って、相性良いものね。ブリーチは必要ないけど、親御さんは大丈夫かしら? 」

「え? 親ですか?? いまさらダメとか言われませんよ」


 オーナーさんは『そう』とだけ言うと、鏡台に置かれていたタブレットを手に取った。


「カットはこういう感じは、どうですか? 重めレイヤーなんだけど、くせ毛を上品な巻き髪風に活かせるわよ」


 めっちゃ可愛いー! これにインナーカラーも合わせたら、神過ぎる!! 出来上がったアタシを想像するだけでワクワクが止まらんて!  


「髪を耳に掛けた時に、さりげなくペールピンクの甘さが出たり、素敵だと思いますよ」


 何故か、髪をさりげなく耳に掛けて、上目遣いしたアタシがイメージ出来た……その視線の先にいたのは泉さんだった。


「こ、これで、お願いします! 」

「畏まりました。施術中、なんかあったら遠慮なく仰ってくださいね」





 シャンプーしたあとに、カラー剤を塗られるけど、あのツンとした臭いがしない。高いけど臭い無しのカラー剤を使ってもらった。

 しかも、オイルで出来てるからツヤがバグる。って、電子書籍で読んだファッション誌に書いてあった。

 仕上がりが早くみたい!!




「うちの子、真琴だけど。上手くやれてるのかしら? 」


 塗り終わったのか、手を止めたオーナーさんに聞かれた。


「はい。アタシと同じ班で、フォローしてくれて優しいですし。この前も皆でファミレス行きましたよ」

「そう、良かったわ。親の目から見ても、不器用と言うか。甘え下手だし、色々と我慢しちゃう子だから」

「あぁ……何となく分かります」

「私のせいでもあるけれど……これからも、仲良くしてあげてね」

「はい。こちらこそですよ!! 」


 なんか、凄い意味有りげな言葉だったけど、踏み込む事はさすがに出来ないよね。

 凄い母親の目になってたし、泉さんを本当に心配してる事だけは伝わって来る。



「30分待ってくださいね」


 オーナーさんが出ていってから少しすると、泉さんがやって来た


「ミルクティー、お持ちしました」

「ありがとう」

「どうなるか、楽しみだね」

「うん! すっごいワクワクしてる」

「私も。あと、お母さん。変な事言ってなかった? 」


 変な事は言われてない。気になる事なら言われたけど


「何か言われても、話半分に聴いてて良いよ。私から、変な事は言わないで。って、牽制はしてるから」

「アハハ、おけ。色々とアタシの知らない泉さんの事、聞いてみたいけどね」

「本当に辞めて」

「大丈夫。聞かないって」

「絶対だよ」



 泉さんに念を押されてしまった。あれだけ言われると、逆に聞きたくなってしまう。

 そのあと、何回かオーナーさんに色の入り具合を確認された。



 30分が経ちカラー剤を流して髪を乾かしてもらう。

 いつもお世話になってる美容院より、オーナーさんのシャンプーもドライヤーも心地良い。と、心から感動してしまった。

 泉さんは小さい頃から、これを味わっていたのかと思うと羨ましい。

 色の入りも綺麗だったし、テンションが上がって来てしまう



「カットしていきますね」


 一定のリズムで『サク、サク』と小気味よい音が聴こえる。オーナーさんのハサミを動かす指先や、髪を整える仕草に泉さんが重なる。気付けば、その姿を目で追ってしまっていた。



「こちらで、宜しいですか? 」


 まだ、仕上げをしていないにも関わらず、鏡に映ったアタシは、いつもより顔が小さい気がする。


「元から小顔だけど、顔周りにレイヤー入れてるし、アレンジも色々出来るわよ」


 自惚れと言われようが、今までで一番カワイイかも知れない。いや、カワイイ。


「凄い良いです!! ありがとうございます」

「素材が良かったからね。あとはシャンプーして仕上げに入りますね」


 素材に関しては、お宅の娘さんも素敵ですよ。学校の同学年や先輩に関わらず、わざわざ休み時間中に観に来る生徒もいるくらいですし。

『クール系イケメン王子』呼ばれてるみたいですよ。


 でも、アタシには泉さんが『クール系イケメン王子』だとは、思わなくなってきた。

 もちろん格好良いとこは多いけど、意外とポンコツなとこもあるし、優しいとこも可愛いとこも沢山ある。

 周りが勝手にビジュアルや雰囲気から、そう呼んでいるだけ。みんなが知らない泉さんをアタシは知っている。



「ハイ。お疲れ様でした。少し大人っぽくなったわね」


 これ、アタシ? 一番カワイイが早くも更新されてしまった。髪色も髪型も神過ぎる!


「ヘアケアは怠らない事。基本は太めのコテで『ふわっと』させて。巻き終わったらヘアオイルで馴染ませる」

「分かりました! 凄い良き!! ホントありがとうございます」


 アレンジも色々と出来そうだし、ルンルン気分でスキップしながら出口まで向かいたい気分だよ。

 バイト頑張って、このお店にして大正解!!



「お疲れ様でした。お荷物お持ちしま」

「あ、ありがとう」


 泉さんからバッグを受け取る。どうかな? なんて言ってくれるかな? カワイイ??


「凄い似合ってる。圧倒的ヒロイン感」

「あり……がと」

「可愛い」

「ござぃます……」


 いつもみたいに『知ってる』『でしょ』って、言えない。

 人から言われるより、アタシが自分で言うより、泉さんに言われるのが一番アガるし嬉しい。

 この、幸せ空気を溜めて持って帰りたい。家に帰っても幸せでいられるように。

 気付かないよね、インナーカラーに隠した恋心。


 「夏休み中は、会えないから、一番最初に観られて良かった」


 は? 夏休みなんてイベントしかないし、泉さんと夏祭りに花火大会、海や水族館とか、映画とかショッピングとか、とかとかとかとか!!! 


 バイト代の使い道も、色々考えちゃってたから、お金貯めようと、バイト頑張ってしたのに!

 

 マジで一気に萎えたんだけど。スンッ……て感じ。無理すぎ



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