第2話 嘘・初・恋 ②
もう17時過ぎてるじゃん!
この後は泉さんと合流後、ストーカーの動きを探るためにカフェに移動だったよね
バイトの疲れを感じる間もなく、手早く着替えて更衣室を出た。
バイト初めて一カ月も経ってないのに、今日もストーカーは来てたし。ずっと見られてるくらいなら、いっそ告ってきてほしい。そうしたら、即断れるのに
店長から『出禁にしようか?』って言われたけど、まだ何か起こった訳でもない。って、何か起こってからじゃ遅いんだけど。
階段を駆け上がると、泉さんはお店の前で待っていた。ふと、昔を思い出す。
170cm越えの長身にショートボブ……小学生の頃から、大人っぽかったし大きかったもんな。
あの頃は公園とかで遊んだり、放課後に一緒に帰った記憶もあるけど、中学では3年間別クラスだったし
まさか、同じ高校で同じクラスになるとは。
……ってか、女の子たちと話してるっぽいけど。
「あ、あの泉さん。遅れてゴメンね」
相変わらず無表情の泉さんだけど、話してた女の子たちは、アタシを見るなり慌てて去って行った。
「今の子、友達? 」
どした? 泉さん虚無ってる??
「おーい。いっずみさ〜ん」
泉さんの顔を覗き込み手を振りかざしてみた
「ご、ごめ」
「どったの? ってか、女の子たち大丈夫そ? 」
「え? あ、あぁ。猫のキーホルダー観てたら、声掛けられて、知らない子だし。どうしようか困ってたから助かった」
「ふ、ふ〜ん。とりあえず様子見でカフェ行こう」
猫好き? それより、もしや逆ナンされてたのでは?
隣を歩く泉さんを横目で少し見上げる。
キレイめカジュアルに、普段とは違うマッシュヘア。
ってか、てかてかてか! 何処ぞのアイドルだよ。って、くらいにイケメンなんですけど
カフェに向かう間も、すれ違う女の子たちの視線が泉さんを追ってるのが面白いように分かる
それはカフェに入ってからも同じで、向かい合うように座ったのは良いけど、チラチラ見られる
「髪型のせいかもだけど、いつもと違う泉さんも新鮮だ」
「男の子っぽいか分からないけど」
前髪を形の良い指先で整える泉さんが、少しだけ照れたように見えた
「大丈夫、バリイケメン! 」
泉さんの前髪を整えていた指先が止まる。
「ありがとう。なのかな」
自問自答するように呟く泉さん。
アタシってバカだ。別に泉さんは好きで男装をしてくれている訳じゃない
アタシの為にしてくれているんだ
「八乙女さん、後ろ振り向かないでね。白のキャップ被ってる高校生くらいの男の子? 」
ストーカーの事だよね? やっぱり、アタシを追って付いてきたのかな??
「う、うん。いるんだ」
「少し前に入って来た」
「一回。断ったんだけどな」
「どうするの? 」
「大袈裟にしたくないし、穏便に行きたいから、どうもしない」
高校入る前のアタシだったら、直接ストーカーに『近付くなカス』くらい言ってたかも。でも、穏便に済むやり方があるなら、そっちから試した方が良いはず。
「アタシと泉さんが、彼氏彼女してるとこ見れば諦めるでしょ」
泉さんは視線を逸らすと、アイスコーヒーの氷をストローでツンツンと突いた。
その行動が、泉さんっぽくなさそう。と、思った。そんな、アタシの視線に気付いたのか
「普段、ブラックでは飲まないから」
「普段、何飲むの? 」
男の子っぽく振る舞ってくれてたのかな? 本当に申し訳ない
「ミルクティー」
「アタシも」
少し共通点が見つかったのは素直に嬉しく、ついニヤけてしまう。
「八乙女さん、出よう」
「もう? 」
「これで、男の子も出て来たら確定だよ」
「そっか。男の子は来たばっかだもんね」
店を出ようとすると、少し遅れて男の子も席を立つのが、視界の端に見えた。
「私に付いてきて」
「う、うん」
少し早歩きの泉さんに、必死に付いていく。身長差あるから仕方ないとは言え、脚の長さが全然違う。
アタシも別にスタイル悪いほうじゃないんだけどなぁ
比べる相手が悪すぎる、考えないようにしよう。
「泉さん、ごめん。手、貸して」
ガラス細工でも扱うかのように、優しく、そっと握ってきた泉さんの手は温かい。
そして、華奢で柔らかい……やっぱり女の子なんだ。と強く思ってしまう。
「八乙女さん。次の細い裏路地に逸れるよ」
言われるがまま頷いたけど、少し不安で泉さんの手をギュッと握った。
「こっち」
アタシの手を横に引っ張り、裏路地に逸れた。
ギリ2人が横並び出来る幅しかないし、向かい合えば、お互いの吐息さえも掛かりそうだった。
「大丈夫、安心して」
そう、言いながら繋いだ手を離すと、アタシを自分の後ろへと誘う
駆けてくる足音が聞こえてきたかと思えば、すぐに泉さんが飛び出した
「お前、何なの? この子、俺の女なんだけど」
ひえぇぇ! どっから声出したの!?
なんだそのイケボは!
少女漫画でしか聞けないセリフ頂きました!!
壁にドンッと追い詰めて、冷徹な声で脅す、泉さん。
「二度と近付くなよ」
男の子は呆気に取られたのか、何度も頷いていた
泉さんが掴んでた胸ぐらをパッと離す。
その瞬間、泉さんがアタシを振り返った。さっきまでの冷たい目が、嘘みたいに優しい目つきになった……
何か良く分かんないけど、彼氏っぽくてウケる……ってか、ドキドキしちゃってんじゃん、アタシ。そして、今は一秒でも早くこの場を離れたい!
「行こう」
今度はアタシが泉さんの手を掴み走り出した。
なんじゃ、この青春っぽいの!!




