第11話 ピアノやってなかったっけ
アタシから言ったんだから、最後までやんないといけないのは分かる
分かるけどさぁ…………赤く潤んだ瞳とか犯罪級にキレイなんですが!!
これ、仲良くなりたいビーム出し続けてたら届くかな?
「じゃ、じゃあ。右目からやるから、下まぶたに触れるよ」
泉さんの顔に触れてしまった……人差し指を添えただけなのに、全感覚が人差し指に集まってしまう。
ほんの少し苦しそうに顔を歪ませて、小さく口が開いていく、泉さんの色気エグっ!!
まつ毛長いし、ノーメイクなのに透明感ある肌。さすがクール系イケメン女子。
マスカラ塗って、ピンセットで、まつ毛に束感出したい!
そしたら、目力が今以上に出て、顔面強すぎ問題発生しちゃうわ
「八乙女さん? 」
「ご、ごめ。この態勢も疲れちゃうよね」
あっぶな。時が止まってた。
下を向くとアタシの髪も泉さんの顔に掛かりそうで、邪魔だから、耳に掛けた。
下まぶたを軽く下げて、まつげや目の表面に付かないように、容器を近付けた。
「ねぇ。これ、撮りたい! 動画撮って良い? 」
気付けば周りから視線が集まっていた。
遠巻きにギャラリーが出来ていて、集中が出来ない。
『アタシもアタシも』って、次々に声があがるけど
「ちょっと、勘弁してほしいなぁ。皆の瞳に焼き付けて、アタシたちの一瞬の。輝きを」
謎にドラマチックに言ってしまったけど、泉さんが嫌かもだし、何よりこの状況を独り占めしたい!
アタシだって、焼き付けるんだから!!
あぁ でも、やっぱ客観的に見たいかも。後でいつでも見返せるように……いや、ダメだ。ここは、しっかりと任務を遂行しなければ
凄い視線が絡み合うから照れる。でも、泉さんの目を見ないと出来ないし。
「泉さん。行くよ、天井見てて。入れちゃうね」
「フフッ」
なぜ、叶乃は笑ってるんだ
「フフッ、フフフフッ、ブフォ。フフフフッ」
途中で豚鼻になるほど笑ってるじゃん。何が、そんなに面白いのよ?
「叶乃? 」
「昨日、読んだBLの主人公も同じこと言ってた」
はぁ〜? TPO考えて。別にその趣味嗜好は否定しないけど、言うのは今じゃない!
思ったとしても『何でもない』とかで隠してよ。
クラスメイトも笑っちゃってるじゃん!
「バカ。少し黙ってて」
気を取り直して、目薬をさしてあげた。
「少し鼻の上、つまむから目を閉じてて」
鼻筋のラインが美し過ぎて芸術作品!
「ハイ、目開けて良いよ。パチパチして」
叶乃が『目に焼き付けさせてもらったよ』と、言いながら拍手を始めた。
他のクラスメイトも拍手してるけど、その、パチパチじゃねーし、謎に一体感あるクラスになってしまった。
泉さんは泉さんで目をパチパチしてるけど可愛い。いつもは見られない角度だし、瞳が綺麗だし、得した気分だ。
「じゃ、次は左目やるね」
左目の下瞼を下げて……叶乃のせいで『行くよ』とか、言いづらくなっちゃったじゃん!
「い、泉さん。もう一回」
なんて言えば良いんだろ? 逆に難しくなっちゃう
「だ、出すよ」
ヤバっ! ワードチョイスミスったかも!!
さっきより、叶乃の笑い方が下品になって、机叩いてるし
「そ、それも言ってた!! くるしー」
誰か助けて欲しい。アタシからしたら、泉さんに目薬をしてあげるのは神聖な行為だったのに。
こんなロリに汚されてしまうとは……
「はい、目パチパチして良いよ」
素直にパチパチする泉さんは可愛いなぁ。
どさくさ紛れに髪の毛を整えて上げたけど、どの角度で見てもカッコ可愛い。
ってか、叶乃のせいで『班から抜ける』言われたらどうすんのよ!
「どう? まつ毛、大丈夫そ? 」
「大丈夫。ありがとう」
「こっちこそ。叶乃が変な事言って、ゴメンね」
「あぁ……」
なんか怒ってない? 大丈夫??
「なにが、そんなに面白いのかな。って」
真顔で目をパチクリさせたあと、真っ直ぐにアタシたちを見据えた、イケメン泉さんの瞳はキラッキラしていた。
「イズミン。そんな無垢な瞳で言われると、こっちが恥ずかしい」
「ほら。面白いのは叶乃だけだって、実際ハズいし」
「いつ、ふっか〜いキスするのかと思って観てたよ」
「は? 意味不過ぎ」
クラスメイトも、さすがにざわついてるじゃん!
誰かが『そんな見方もあったんだ』って、興奮気味に言ってるの聞こえてきたけど
「き、気分転換にもなるし目薬……使ってね」
泉さんの目薬を手渡したけど、叶乃が変な事言うから意識して目が見れない
「そうする………ありがと」
ほら、泉さんも変な感じになっちゃったじゃん!!
自分の席に戻るも、濃密なアイコンタクトした後に、あんな事言われると、普通に話すの恥ずかしくなる。
さっきの物理的な距離の近さ。と、精神的な距離の近さ。って、どれくらい違うのかな?
もっと、アタシは泉さんに踏み込んでも良いの??
そんな事を考えてしまう自分に、少しだけ戸惑った。
「ただいま。何、この雰囲気? 事後?? 」
「優梨……おかえり。もう良いって、それ」
優梨は泉さんに『そのまま座ってて良いよ』と、伝えると、持ち帰ってきたプリントを机に置いた。
「課題曲決まったんだけどさ、金曜までにピアノ伴奏者と指揮者を決めることになって」
決めることになって。と、言われても……課題曲が気になり、プリントを観た。
『いのちの歌』……中学の時にも、どこかのクラスでやってたような
「立候補者がいれば良いけど、いなかったら、指揮者と伴奏者は推薦形式かな」
アタシ歌下手だから、ピアノ出来ればピアノやりたいけどなぁ。
「泉さん、ピアノやってなかったっけ? 」
「……中学生の頃に辞めた」
「そっか」
そうなんだ、残念。
また、泉さんのピアノ観たかったなぁ




