表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世は大聖女でした。今世は普通の令嬢として、泣き虫騎士と幸せな結婚をしたい!  作者:
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/63

東へ

「お姉様、次はお姉様もお泊まりしてね。エレンやスージィやメルル、アンドリューお兄様もみんなで一緒に。だから、無事に帰ってきてね」


 私はキャスリンをギュッと抱きしめた。


「もちろんですよ、キャスリン様。約束しますわ」


 小さな手と指切りを交わすと涙をこらえながらも笑顔を見せてくれた。


 それから私は持ってきたローブを着て仮面を付けた。


「どう? 私だとわからない?」


「お姉様、全然わからないわ! 謎の魔法使いみたい! 声もおばあさんみたいに変わってる!」


「ローブに魔法をかけておいたの。これを着ている間はこの声になるように」


「私の声も変えてくれ」


 言われて振り向いた私はアンドリューを見てびっくりした。


「あら! アンドリュー、そんなのどこで見つけてきたの?」


 アンドリューは金属製の兜をすっぽりと被っていた。目と鼻を覆う面甲は尖っていて、呼吸がしやすいように口だけが見えている。頭上には角やトゲの飾りが付いていた。


「……廊下に飾ってある古代の甲冑から取ってきた」


 もう少しシンプルな兜は無かったのかと思ったけれど、本人は満足そうなので黙っておく。


「重くない?」


「大丈夫だ」


 アンドリューは騎士の服装に着替え、マントを付けていた。見た目では王子とわからないが、バレないように声も変えたほうがいいだろう。彼の声は高めだから、低い声になる魔法をかけておいた。



「じゃあヒューイ、よろしくお願いします」


 無口なヒューイはコクリと頷くと、開いた窓から風を呼び込んだ。私は姿を隠すための呪文を唱える。


隠れよ(ナスコンデレ)


 アンドリューと私の姿が消えた。


「わあ、二人が見えなくなった……!」


 エレンがそっとキャスリンの肩を抱いて寄り添う。双子もキャスリンの側から離れない。


 ヒューイは私の肩に止まり、風を操ることができる強力な魔法をかけてくれた。私とアンドリューの足が床から浮き上がる。


「おいアイリス。どういう体勢で飛んで行くんだ?」


 低く渋めの声でアンドリューが話し掛けてくる。耳元で響くその声に、私の記憶が呼び覚まされる。


(しまった、リカルドの声と同じになっちゃってる……! そういえばあいつも低い声だったわ。顔も隠れてるし、まるでリカルドがそこにいるみたい)


 動揺を隠して老婆の声で答える私。


「ん? このまま、立ったままよ」


 アンドリューは大きくため息をつくと、私を抱き上げた。


「ちょ?! ちょっとアンドリュー、何するの!」


 突然のお姫様抱っこに慌てる私。


「ドレスの中が下から見られたら困るだろう」


「魔法かけてるから見えないのよ。大丈夫だって」


「いいから。行くぞ」


 ここで喧嘩している暇はない。仕方なく、首に腕を巻き付けて、抱かれたまま出発することにした。


「じゃあ、キャスリン様。行ってきます」


 キャスリンは懸命に手を振っている。


「見えないけど、行ってらっしゃい! 無事に帰ってきてね!」


 私は呪文を唱えた。


飛べ(ヴォラーレ)


 私たちは風に乗って窓から外へ出た。そして東へ向かってひたすら飛び続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ