残念なお知らせ
それから、私はキャスリンに力の使い方を毎日教えた。キャスリンはとても熱心で、早くちゃんと使えるようになりたいと一生懸命だった。
「まずは結界を張れるようになること。自分の身を守れるようになるのが一番大事よ。聖女はね、騎士に守ってもらうのではないの。自分の身を自分で守りつつ、騎士の力にならなくてはいけないのよ」
まだ、キャスリンの結界は他人まで守れる大きさではないが、それはここが安全な場所だからなのかもしれない。キャスリンの潜在能力なら戦場に出れば……誰かを守りたいと思えばきっと、大きな結界を張ることもできるようになるだろう。
(本当は、戦場に出ることなど無いのが一番だけど)
レッスンを終えて家に帰ると、エドガーからの手紙が待っていた。
「アイリス様、お待ちかねのお手紙ですよ」
「わあ! そろそろ休暇の知らせかしら?」
私はメラニーから手紙を受け取ると、急いで封を切った。ところが、中に書いてあったのは残念なお知らせだった。
『親愛なるアイリス、元気に暮らしていますか?私も病気などせずに元気に過ごしているよ。
ところで以前知らせていたようにそろそろ休暇がもらえるはずだったのだけど、今週になってこの辺りに魔物が多く出現するようになってしまってね。瘴気を出さずに一撃で魔物を倒せる者が私しかおらず、かと言って聖女様を派遣してもらうほどの魔獣でもないので、私は北部を離れることができなくなってしまった。
早く君に会いたいと毎日考えているのだが、私にしかできない任務を放り出すわけにはいかない。だから、今回の休暇はここに残ろうと思う。とても残念だけど。
君と暮らしたい場所は三つくらい絞り込めたよ。湖の近く、川の近く、山の麓。どこも例年なら自然が素晴らしく、落ち着ける場所だそうだ。家は町の中心部に構えて、これらの美しい景色の中に別荘を持ってもいいなと思ってる。あと五ヶ月、君と暮らせる日を楽しみに待っているよ。
ではアイリス。寒い季節だが身体に気をつけて。愛してるよ、世界中の誰よりも。
エドガーより』
「メラニー……エドガー、帰って来れないんですって」
「まあぁ……アイリス様、ものすごく楽しみにしてらしたのに、残念ですね」
口を尖らせて拗ねている私の頭を、メラニーはヨシヨシと撫でてくれた。
「魔物が多くなってきたのに、エドガー以外の人はちゃんと一撃で倒せないんだそうよ。だからエドガーが残らないとダメなんですって」
「ということは、エドガー様は騎士団になくてはならないお方だということですよね! 素晴らしいですわ。出世間違い無しじゃないですか」
「そりゃあね、出世してくれたら嬉しいけど……それより、いつも一緒にいられるほうがいいわ」
「あらま、ご馳走様です。元気出して下さいませ、アイリス様。結婚式まであと五ヶ月じゃないですか」
そう、あと五ヶ月。準備は着々と進んでいる。だけどディザストロが現れなかったら……
(婚約解消?! そんなの絶対に嫌。結婚延期?! それもどうかと思うわ。キャロライン・バーリィあたりにあることないこと言われそう。残るは……白い結婚……)
エドガーに正直に話すしかないだろうか。生まれ変わりだなんて、信じてもらえるかしら。
ううん、エドガーはきっと私のことを信じてくれるはず。ディザストロを倒せばもう聖女の力は必要ないんだから、終わったらすぐにエドガーに私の全てを捧げる。
(早く来なさい、ディザストロ。大聖女アデリンがサクッとやっつけてやるわ)
呑気にそんなことを考えていた私だった。




