表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世は大聖女でした。今世は普通の令嬢として、泣き虫騎士と幸せな結婚をしたい!  作者:
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/63

答えのない問い

 私は、安らかな表情で永遠の眠りについたニッキーの手を胸の上で組み直し、もう一度祈りを捧げた。


「……少しでも役に立てたかしら」


「ああ。きっと懐かしい故郷の海を見ながら旅立っただろう」


 涙を流し、鼻をすすりながらアンドリューに尋ねると、アンドリューもいつもと違うくぐもった声で答えた。もしかしたら泣いていたのかも? まさかね。あのリカルドが泣くわけない。


「これからニッキーはどうなるの?」


「おそらく神殿で葬儀を執り行い、王族専用墓地の隣に埋葬されるだろう。お前の墓もそこにあるぞ」


「うっ……あまり考えたくないわね」


 土の下で眠っている自分の身体(いや、もう骸骨よね)をちょっと想像して身震いした。


「……ねえ、ニッキーの亡骸を故郷へ帰すわけにはいかないの?」


「前例はない。だが、あれほどに故郷に帰りたがっていたのだから、そうしてやりたい気持ちはある」


「でしょう? もちろん、難しいとは思うわ。国王陛下や重臣たちに諮らなければいけないのよね。でももし叶うなら……そうしてあげて」


「俺はしがない第二王子だからな。あまり期待するな」


 アンドリューはそう言いながらも目はギラリと光っていた。こんな時のリカルド……いや、今はアンドリューだけど。こんな時の彼はきっとやり遂げるだろう。


「そろそろ戻るぞ。キャスリンも起きているかもしれない。俺はニッキーが亡くなったことを報告しに行くから、お前はもう帰れ」


「ええ、わかったわ。キャスリン様にご挨拶してから下がらせていただきます」


 アンドリューは国王陛下の所へ向かい、私はキャスリン様の部屋に戻った。


「アイリス様! たった今キャスリン様がお目覚めになりました。『お姉様はどこ?』と探してらっしゃいますよ」


 マチルダがニコニコして出迎えてくれた。急いで部屋に入ると、キャスリンはパタパタと走って私の胸に飛び込んで来た。


「お姉様!」


「キャスリン様! ごめんなさいね。アンドリュー様に王宮を案内していただいてたんですよ」


「良かったあ。目が覚めたらいらっしゃらないから、もしかしてお姉様のことは夢だったのかと心配したわ。お兄様とご一緒だったのね? それならしょうがないわ。でも、次は私も連れて行って下さいね!」


 なんて素直で可愛らしい王女様だろう。こんなに真っ直ぐに好意を伝えられたら、そりゃあ冷徹アンドリューだってメロメロになってしまうだろう。


「ねえお姉様。今日はお泊まりしていただけるの?」


「ごめんなさいね、キャスリン様。私は通いで王宮に来ることになっているんですよ。だから、今日はもうお(いとま)いたします。また明日の午後来ますから、一緒にお話ししましょうね」


「えー、そうなの? 寂しいわ。ずっと一緒にいられたらいいのに。でも、明日会えるとわかっているのなら、今日のお別れも辛くないわね。私はレディなのだから我慢するわ」


 ちょっと大袈裟な言い方をするのも子供らしくて可愛らしい。


「ではまた明日。失礼いたします」


「ええ! 待ってるわ、アイリスお姉様!」




 王宮から帰る馬車の中で、私はニッキーのことを考えていた。

 恋をして普通に生きていきたい。そう思って聖女であることをひた隠しにしてきたけれど、それはニッキーの犠牲の上に成り立っていた。その事実をまざまざと見せつけられた気がした。


(私の力があれば、また国中に結界を張ることができる。そうすれば、もう一人の聖女も普通の女性に戻してあげることができるだろう)


 だけど……そうしたらまた私は籠の鳥。


 前世ではそれが当たり前だった。だけど、外の生活を知った今、もう一度あそこへ戻るなんて耐えられない。エドガーと結ばれることもなく、また乙女として一生を終えるなんて。


(どうしたらいいの……? どうして、私はもう一度生を受けたの? 今度こそ、願いを叶えるためだと思っていたのに……)


 いくら考えても、答えは出そうになかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ