二、不可解な現象
いったい、何が起こったというんだ?
スズキのGSX-R1000といえば、
優に二〇〇キロを超える大型スポーツバイクだ。
それが高さ五メートルのポールに引っ掛かるって、
まさか、多摩地方に古くから言い伝わる
魑魅魍魎の類が……。
バカげた妄想を打消すように私が慌てて頭を振っていると、
中島が困り果てた様子で戻ってきた。
「いや~っ、さすが、治安のいい田舎というか、
どこにも防犯カメラがないんですよ」
「そうか、事情聴取も不発だったしな」
「ええ、二人とも口を揃えて
“気づいたらこうなってまして……”でしたね」
深い溜息を吐く私たちを尻目に、
鑑識員たちは手分けして事故現場を手際よく調べていた。
「巡査部長、鑑識の方はこの事故をなんて言ってるんですか?」
中島の質問に私は上野主任の見解を掻い摘んで説明した。
ちなみに、上野とは同期入庁である。
上野主任によると――
BMWが交差点を右折しようとした際、
反対車線から直進してきたバイクと激しく衝突。
現場に残されたBMWは左フロント部分が原形を留めないほど大破しており、
衝突時に極めて大きなエネルギーが加わったことを物語っている。
おそらく、バイクの過度な速度超過と前方不注意が原因と推察される。
「――ということだ」
「ぶら下がったバイクのことは?」
「今のところ、まったくわからんそうだ」
「えーっ、何っすか、それ? そんなの俺にだって言えます。
ちゃんと、仕事してくださいよ」
「まあ、そう言うな。近日中に何らかの見解を出すと言っている」
不満を漏らす中島を、なだめていると、
同期の上野がやって来て、立てた親指で後ろを指した。
「おいっ、桐野。野次馬たちが騒ぎ出してるぞ。
何とかした方が、いいんじゃないか」
「そうだな」
上野に促された私は中島を連れてザワ付いている野次馬たちの下に向かった。




