8. べてらん の ぼうけんしゃ
よろしくお願いします。
「やあ、賑やかだね」
声をかけてきたのは、中年の男性冒険者。
長身で引き締まった体つきをしていて、ガンユさんと似たような軽戦士の装備と腰に剣、背中には短弓を背負っている。
彼の後ろには僕と同じか、少し下くらいの年齢の冒険者風の子が3人。
2人は男性でそれぞれ革鎧を着た戦士姿と、ローブを着た魔法使い姿。もう1人は女性で動きやすそうな軽装姿。腕に籠手を付けているので武闘家だろうか。
3人共そろってつまらなそうな顔でこちらを見ている。
「アークさん、久しぶり。これから依頼かい?」
「ああ。またムオの方で魔物の駆除にね。君達は……キョウは別行動かい?」
中年冒険者さんの問いに、リヴが答え難そうに首を横に振った。
「いや、こないだ受けた依頼でちょっと大物の魔物に出くわしちゃって……やられて死んじゃった。北の方にホウロって町あるでしょ?そこに埋葬してきたの」
「……!そうか、それは……残念だったね。えーと、こちらは?初めて顔を見る人達だけど」
一瞬驚いた表情を浮かべてからこちらを見てくる彼に、ケイが僕達を紹介してくれた。
「ああ、その依頼の時に知り合ったんだ。彼がコタロウで、こちらがアリサさんとユーナさん。コタロウとアリサさんが3級で、ユーナさんがもうすぐ2級だって。キョウをやった魔物も、この人達が討伐してくれたんだ」
ケイの言葉に、再び驚きの表情になる中年冒険者さん。
僕達はそんな彼に、3人で名乗って会釈をする。
「ほお……まだ若いのにそれは大したものだ。俺は……」
「なんだ、やられたのか情けない。アークを見習ってもっと鍛えとけば良かったのに」
「へっ、何が出たのか知らねえが、俺がもしその場にいたら速攻で倒してやったぜ!」
「ねえ、いつまでもしゃべってないでもう行こうよ。駆除依頼なんてさっさと片付けて早く帰りたいし」
中年冒険者さんが自己紹介をしようとしたところで、後ろにいた魔法使い、戦士、武闘家の子達が口々に声を上げた。
彼は「あ……ああ、そうだな」と彼らに応え、
「それじゃ悪いがもう行くよ。大物の魔物については、また会った時にでも詳しく聞かせてくれ。またな」
と言って、3人に連れ出されるようにしてギルドの出口へ歩いて行く。
リヴの「ギルドに報告してあるから、なんならそっちに聞きなよー」という声に片手を上げて応えながら出て行ってしまった。
「あの人は?」
「アークさん。3級冒険者でこのギルドでも古株なんだ。昔は凄腕で鳴らしてたらしくてさ、他の冒険者からも一目置かれてる人なんだぜ?」
「確かに、ベテランて感じがするね」
ケイの説明に、ユーナが感心したように頷く。
ランクは同じ3級でも、僕達とは年季の入り方が違うのが見てわかる。
すると彼と一緒にいたあの子達はパーティメンバーなんだろうか?
それにしては若いし新人ぽい感じだけど?
そう思った僕がケイに尋ねようとすると、先にアリサが口を開いた。
「アークさんは、一緒にいた彼らとパーティを組んでいるのか?こう言ってはなんだが、だいぶ年齢にも力にも差があるように見えるんだが」
「ああいや、アークさんは前に元々組んでたパーティが魔物にやられて、アークさん以外全滅しちゃったそうなんだよね。それ以来討伐とかは止めて、新人の指導なんかをメインにやってるんだよ」
アリサの問いにはリヴが答える。
そんなことがあったのか。
死はどこにだって転がっていて、ほんの僅かな隙を狙って襲いかかってくる。
たとえランクや身分が高いからって、手加減して軽く噛みついたりなんかしちゃくれないのだ。
僕達も肝に命じよう。
「アタシらも駆け出しの頃は世話になったよな」とケイ。
なるほど、新人研修か。
なんでも彼ら、男の戦士がヒルスという名前で、魔法使いがマクト、女の武闘家がキャリー。
3人で『進撃の聖剣』とかいうパーティを組んでいるのだそう。
なんていうか、随分と大仰なパーティ名だな。
リヴの説明にアリサが
「ほう、魔法使いで冒険者というのは珍しいな」
と、出口の方に目をやりながら呟いた。
まあ確かに珍しいけど、いないわけではない。
あの3人は元々の友達で、一緒に冒険者になってそのままパーティを組んだ感じなのかな?
まあ、威勢が良いというかなんというか。
でもあの態度はちょっとどうなのかなあ。
僕が腕を組んで考えていると、その様子を察したケイが苦笑いで声をかけてきた。
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次回、説明回になります。




