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アルノス・トリニティ ーId:Venisー  作者: もふもふラリアット


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第十三話 「アフルの決意」


(おれの魔術失敗しちゃった……)


 考えたいことぐるぐるしすぎて、よくわからない。

 なのに、もっとよくわからない黒い人が来た。


 刃と刃の衝突ーー甲高い金属音。

 キーンと耳奥まで届く。


「はぇ……?」


 黒い人は、いつの間にかフォルスの目の前にいた。


 フォルスは短刀で片手の小さい鎌を防ぐ。

 続けて、もう片方の手に握られた小さい鎌が揺れて、空を斬る音が鳴る。

 ほぼ同時、銀色がピカっと後ろに動いて、攻撃をかわしていた。


(どうしよう……動きが見えない)


 フォルスは簡単そうに避けてるのに。

 そもそも、なんでこの人と戦ってるの?


「いいネ君! 他2人はモンスター達で殺せるけド……キミはおそらく無理だろうネ」


 フォルスもアルノも険しい表情で黒い人を見る。

 急にピリピリタイムが始まっちゃった。


「なんの用だと聞いている。お前と遊んでいる暇はないんだがな、言葉は通じないのか?」


「おい、お前さっきから何なんだよ。殺し合いでもねーのに人に刃を向けるな」


 黒いローブの人はアルノとおれをそれぞれ見ると、


「ン? それに比べテ、君とそこのちっこいのは全く歯がたたないよネ! 役立たずだネ!」


「は、話通じてねぇ……」


「こ、この人……なんか変!」


「まだまダ、ここからだヨ!」


 また消えたーー


 それにフォルスも反応する。


(……すごい、瞬きするごとに、フォルスと変な人の場所が変わってる)


 ちっちゃい火が何度もパチンってなって、剣と草刈りの鎌がぶつかる音だけが響く。


 訳もわからず進む戦闘、ただ立ってることしかできない。

 続く撃ち合いを待っていると黒い変な人がズザザって後ろに下がった。


「キミは面白イ! そんな魔力コントロールをしているやつは見たことないネ!」


「退け、このままいけば俺はお前を殺しかねないだろう。こんな殺しに意味はない」


「そうだネ〜。じゃあ、殺しに意味があるとした、ラー?」


 そう言う変な人は、フードを被って見えづらい視線をおれに向けるーーどこか笑ってるような気がした。


 直後、フォルスから放たれた息が詰まるほどの重圧。


(わ……フォルスの顔が怖い。怒ってる? 変な人に?)


「これだヨ! これこレ! そこのゴミクズ共とは違う本物の強サ!」


「それを嘲るお前は、ただのゴミクズより鬱陶しいだけの雑草か?」


(あ、ほんとだ……手に持ってるの草刈るやつだもんね)


「はイ? ボクが雑草? あっははハ! あまりボクを笑わせないでくれヨ」


「でもさ、でもさ、その手に持ってるやつ草刈るやつだよ? 雑草大好きなの?」


 おれを見る視線が一気に冷たくなった。


「チッ、弱いやつが喋るなヨ。魔術もろくに扱えない出来損ないと、剣を持っても何も斬れない役立たずに用は無いんだよネ、生きる雑草以下の屍がお似合いだヨ」


(む……こいつムカつく)


 言われた言葉にカチンとくるけど、言い返す気になれない。

 それはアルノも同じ、静かに手をギュッと握ってた。


(おれは出来損ない……? 違うもん)


 おれだって、おれだって魔術好きなのに……

 もっとすごい魔術撃ちたいのに、でも……出来ない。


 ししょー、おれはどうすればいいの?

 ししょーならどうするんだっけ。


 ーー記憶の底に触れる。


 ありし日の出来事。


 どこの場所か、よく覚えてない街の片隅にある木の家。

 ドタドタと家の中にいるししょーを探す。


「みつけた! ししょー!」


 ししょーはソファで横になりながら、退屈そうにあくびをかく。


「ふぁ〜、どうしたアル坊……? 俺は今、とてつもない眠気に襲撃されてんだ、後にしてくれ〜」


「ちょー強い魔術教えて!」


「午前中教えただZzz……」


「教えて!!」


「あーもう、わかったよ、しょーがねーな……」


 ししょーは腕で目をゴシゴシすると、呆れたようにおれを見る。


「お前ほんと懲りないな。俺はこれからやらなきゃいけないことがあるってーのに」


「でも、いつもソファとかベッドに横たわってだらだらしてる」


「それはちがうぞー、アル坊。お前は知らないようだから教えてやる。実はな、こうやって目を閉じて精神と魔力を研ぎ澄ます修行をしてるんだぞ。精神統一ってやつだ……」


「なにそれすごい! おれにもおしえて!」


「Zzz……」


 ただのいびきだった。

 容赦なくボコボコとししょーのお腹を殴りつける。


「ししょーのうそつき! はたらけ暇術師(ひまじゅつし)!」


「グハッ……! わ、わかった……わかったから、人の腹を思いっきり殴る……な」


 ししょーはソファでノックアウトした。

 その後、体を起こし、あぐらをかいてソファに座り直す。


「コホン、それで? 強い魔術を撃ちたい。だったか?」


「だからそう言ってるです」


 ししょーは魔術教えるモードになった。

 どこか顔がシュッとなった気がする。


「簡単な話だ。噛み合わせればいい、そんだけ」


 やっぱ気のせいだった。


「いいかアル坊、魔力や魔術ってのはーー思い描く力だ」


「思い描く、力……?」


「思いは頭の中の想像だ、描くはそれを魔力、魔術に定着させる」


「要は使う魔力、魔術に必要な要素を頭の中で思い浮かべてそのまま貼っつける、だ。アル坊、小さい風を出してみろ」


「うん、わかった!」


 片手に魔力が集まり、見えない形を保ちながら風へと変化させて、留める。


「歪だが、球体を保っているだろ? 今度はそれをもう片方の手を使って分裂させてみろ」


「分裂!」


 歪な球体を保った状態から動かそうとした時、風はブワァっと消えた。


「あ、消えちゃった……」


「頭の中で想像できたか? それか想像をそのまま貼っつけるのが出来てないかの簡単なことだ」


「ししょー、できない! どうするの!」


「ふむ……よし、ここは1つ、裏技を教えてやろう」


「ほんとに!? 早く教えて!」


「それはな、今できる100%を続けること。それが新たな魔術を覚える近道にもなる」


「……」


 おれは顔をプイッと背ける。


「あれ、どした? アル坊?」


 聞いて損した。


(だって……だってそれ……)


「それ前普通に言ってたやつだもん! この詐欺師め!」


「あ、すまん……」


 ーー記憶から引き戻される。


 なんかパッとしない終わり方だったけど。

 今はそれでいいや。


(ありがとししょー。帰ったらお肉半分こしたのをまた半分こして、おまけにあと2回半分こしたお肉をあげよう)


 でも、あの時やってこなかったことを今思い出せた……!

 あとは何度でもやってみるだけ!


「はァ、興が冷めタ。それにボクも万全じゃないんだよネ」


 黒い袖を揺らし、左手の鎌をフォルスへと向けて高らかに言い放つ。


「だから、また会う時には仕上げてくるヨ。次、ボクの手でキミを殺ス」


「お前は……邪魔だ」

 

「せっかくダ、邪魔をいっぱい置いておくヨ! せいぜい楽しんでってよネ」


 変な人が目で追えない速さでどっかへ行った。

 同時、木陰、岩陰から怖い顔をしたモンスターの群れがうじゃっと出てきた。


「な……あれはッ……」


 フォルスが目を見開いて、いつになく取り乱す。

 額の横から汗が垂れる。


「なぁ、なんかこのモンスターの群れ、心なしかフォルスしか見てない……ような?」


「むむむ……ムカつくけど、操ってるみたいですごい……」


 突如、ガラガラと砕けた岩が擦れる音。

 視線の先ーー巨体の猪、フォドルボアが目を覚ます。


 群がるモンスター達。

 起き上がり、鋭い眼光でおれ達を捉える猪。

 敵ばっかだし、最悪なのに。


(はやく、魔術撃ちたい……!)


「アルノ、アフル、切り替えろ。ここからまた戦況が変わる」


 深呼吸をして息を整えたフォルスは、いつものちょっと鋭い目のフォルスに戻る。


「フォルス! あの猪おれに任せて!」


「いやいや、お前な……俺達の攻撃は全部通用してなかったんだぞ?」


「アルノも手伝って、おれ1人じゃ勝てない。けどアルノがいるなら勝てる!」


「なにか、手があるようだな」


「えっへへ、まぁね!」


(ししょーが言ってた今できることを続ける。前まではつまんないとか思って忘れてたけど)


 赤い裾を揺らしながら、左手に握った小さい杖をビシッとデカ猪に向けるーー


 今、ここからおれの100%をやる!


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