第六話
「散々あんたの壁打ち相手になってやったんだから、次はこっちの話を聞きなさいよ」
丸氷の入ったグラスをカラカラ鳴らしながら人差し指を向けてくる。
「紬に悩みなんてあるの?」
「あるに決まってるじゃない。あんたと違って人間なんだから。あー、あんたももう人間になったんだっけ」
彼女は彼女でそれなりに酔っているらしい。私は二杯しか飲んでないけど、もう六回ほどグラスが変わっているのを見た気がする。
「いつでも構いませんので、またいらしてください。次はお食事でも」
多少お腹は減っていたけど、すぐに話し始めてしまったので食べ損ねてしまった。メニューを見るとパスタやサンドウィッチ、シチューなど食事も充実していることがわかる。
「ありがとうございます、すごく気に入りました。次はビーフシチューをいただこうと思います」
ぜひ。と、彼女は紬と似た顔で。でも、紬よりも落ち着いた笑顔を見せてくれる。
こんなに長く一緒にいたのに、姉妹がいたことすら知らなかった。
もっと紬とも向き合わないと。そんな風に思った。
◇
紬に別れを告げ帰路に就く。
火照った体にあたる夜風が気持ちいい。
紬に話を聞いてもらって良かったと思う。結局答えは出ていないけど、とてもスッキリした。
スマホに一件の通知。今、一番見たかった名前が映っていた。
『お疲れ様です!打ち上げのお店、決まりました!次の金曜とかどうでしょう??』
『金曜なら大丈夫だよ。楽しみにしてるね』
頬が緩む。二杯だけど久しぶりのアルコールだったし、ずいぶん酔っているらしい。
多分、仕事はしばらく落ち着くだろう。葉山さんだって週明けには出張から帰ってくる。お土産を多めに貰わないと。
週末には打ち上げが待っている。そこで芹羽とどんな話をするのか、自分がどう変わっていくのかはまだわからない。
でも、楽しみだ。とても。すごく。
紬の言葉を借りるなら、久しぶりに人間らしい気持ちになった気がしている。
コンビニで普段は買わないスイーツを買い、上機嫌で我が家へ足を進めた。




