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翔子たちが乗ったエレベーターのドアが閉まる。
沢田は、冷や汗を拭いて、一息ついた。
「真鍋くん、誰と結婚するんだろう。」
そんな声が聞こえて、沢田ははぁーとため息をついた。
「佐藤さんとに決まってるだろ。」
「でも、指輪なかったよね。」
「仕事中に佐藤さん拉致ったんだろ。外してるに決まってる。」
まあ、そりゃそうか、と皆納得する。
「えー。私だったらつけてるなー。」
そんな声で沢田の脳裏に、一度だけ見た、翔子のエンゲージリングを思い出す。
デザインにこだわらない翔子と、流行に疎い壮太の二人らしい、ただただでっかいダイヤモンドがついた指輪だった。小指の爪ぐらいあった。
沢田は口にしなかったが、もし無理に連れて来た事が問題になったら、ここにいる連中全員、警察に事情を聞かれる事になる。
どうか佐藤さんが、というかあの女傑揃いの伯母様達が、そんなにご立腹になりませんように。
一緒に行った、池野と吉田と加藤が、どうかどうかうまくやってくれますように。
その三人は、車の中でちょっと居心地が悪い。
壮太は、マスターから連絡を貰って、すぐ場所はここだろうと検討をつけたらしい。
どの年度の卒業生も、同窓会は大抵ここでやるからだ。
すぐ会社を飛び出したが
「タクシーに乗ったら、渋滞しててさ。しくじった。」
「そっか。」
翔子は、冷たくなった手を温めようと、こすっている。
「遅くなってごめんな。」
「大丈夫。沢田君がいたから。」
あー、あいつな。
壮太はつぶやく。翔子が新人の頃、結構名前を聞いた。
「役にたつ事もあるんだ。」
ふふっと翔子は笑った。
「今日は助かっちゃった。」
「さてと、お前たちだけどな。」
壮太は、隣に座る池野を見た。
「親父が警察呼んだからな。一応、同窓会の確認はホテルに電話して取ったから、そんなに心配はしてないと思うけど。」
「あのー。それならもう、警察帰ってるんじゃないッスかね。」
「どうかな。お前ら、小林に聞いてないのかよ。」
「え、あれですか。佐藤さんが、経済界のフィクサーの愛人になったとか。」
「なんだそれ。」
壮太は呆れた。
「翔の母方の親戚が見つかったって事だよ。会社の経営者だし、こういう悪ふざけは許してくれないかもしれない。」
三人は青ざめた。
「ホントに?」
「まあ、一生懸命謝ったら、被害届は思いとどまってくれるかもしれないが。」
壮太の言葉に、三人はようやく沢田の言葉の真意を悟った。
前科持ちになりたくなかったら、頭を地面に擦り付けてでも謝って来い。
そう言う事だ。
壮太の実家に近づくと、赤色灯がピカピカしているのが見えた。
「パトカー止まってんな。」
ポツリと池野が言った。
「あのー。佐藤さん。今日は本当にごめんなさい。」
「すいませんっした。」
「申し訳ない。」
翔子はぎゅっと壮太の手を掴んだ。
「今日は?」
車は、パトカーの後ろにゆっくり止まった。
「今日『は』ごめんなさい?」
もう一度繰り返したので、三人の脳裏には、小学校時代はもちろん中学時代にも様々あった「いじめ」の記憶が、走馬灯のようによぎった。
「あのー。」
冷や汗が噴き出る三人を横目に、壮太はドアを開けた。
「降りるぞ。翔。」
警察官が駆け寄ってくる。
「佐藤翔子さんですね?連れ去りの犯人は?」
「あっちの三人です。」
翔子は、無表情に指差した。警官は三人に車を降りるように指示した。
「はい、君たち。免許証見せて。」




