試験と炎
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ついに王都に到着し、難関の学園入試へ……!
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マーリンが出した馬車に揺られること丸1日。
レイクはついに、王立騎士学園のある王都へと辿り着いた。
しかし、街に足を踏み入れた瞬間、レイクは激しい衝撃を受けることになる。
「な……なんだよ、これ……」
見上げれば、青空を優雅に飛び交う人々。
大人はもちろん、小さな子供までもが、当たり前のようにホウキに跨って空中を移動していた。
(おれが半年かけて……死ぬ気で練習してやっと飛べるようになったホウキ移動を……みんな当たり前にやってんのか……!?)
田舎者の世間知らずだったと思い知らされ、がっくりと肩を落とすレイク。
だが、落ち込んでいる暇はなかった。明日に迫った試験に備え、レイクは受験生たちでごった返す手続き会場へと向かった。
◇
手続きの列に並んでいると、レイクの前に一人の少女が立っているのに気づいた。
栗色の髪を揺らす同い年くらいの女の子だが、周りから見ても引いてしまうほど、全身をカタカタと激しく震わせている。
(めちゃくちゃ緊張してんな、あいつ……)
その時、少女の懐から一枚の紙がハラリと落ちた。
しかし、少女はパニックになっているのか全く気づかず、そのまま受付の前へ進んでしまう。
「はい、次の方。願書か推薦状を出してください」
「えっ!? あ、はい! ええと……あれ!? ない……ないないない!? どこに行ったの私の願書ー!?」
カバンの中を必死にかき回し、半泣きで大慌てする少女。
レイクは拾い上げた紙を手に、ひょいと少女の肩を叩いた。
「おい、落としてたのってこれだろ?」
「ふぇ……? あっ!! わたしの願書!! ありがとうございます……っ!」
涙目でお礼を言ってくる少女。
「ふぅ……すみません、私、緊張するとすぐ周りが見えなくなっちゃって……」
「まあ気にすんなって。実を言うとさ…おれもめちゃくちゃ緊張してる」
そう言って、レイクはカタカタと震える自分の手を見せた。
「本当だ…」
少女は安堵した表情を浮かべる。
「お互い頑張ろうな!」
「……! はいっ!」
レイクの飾らない言葉に、少女はパッと顔を輝かせ、小さく微笑んだ。
◇
翌日、始まった試験だったが、レイクの緊張をほぐした爽やかな空気は第一の試験で一瞬にして吹き飛んだ。
「——これより、筆記試験を開始する」
「……は?」
配られた試験用紙と問題集を前に、レイクは固まった。
(座学……!? 筆記試験なんてあるのかよ!? あのクソジジイ、一言もそんなこと言ってなかったぞ!!)
賢者マーリンへの激しい殺意が込み上げるレイク。
当然、実技しかやってこなかったレイクの筆記試験は、目も当てられないズタボロな結果に終わった。
◇
「くそ……こうなりゃ実技試験にかけるのみだ……!」
続いて行われた実技試験の会場。
そこでは、全国から集まった天才たちがその才能を遺憾なく発揮していた。
魔力を纏わせた剣で、特大の石の的を目にも留まらぬ速度で粉々に切り刻む少年。
「うぇ〜すげ〜〜〜。」
レイクが呆気に取られていると。
ドーーーン!!
一詠唱で凄まじい魔法を放ち、的を跡形もなく粉砕する男。
「ま、魔法パネェ〜……」
圧倒的な才能の差を見せつけられ、呆然とするレイク。
やがて、審判の声が響いた。
「次、レイク!」
「はいっ!」
前に進み出たレイクに、試験官は冷ややかな視線を向けた。
「では、得意な魔法を披露しろ。……なんだそれは?」
「ホウキに乗ります!」
堂々とホウキを構えるレイク。
その瞬間、会場全体からドッと爆笑が巻き起こった。
「ハハハ! ホウキだってよ!」
「受験会場で掃除でも始める気か!?」
嘲笑の声が刺さる。
「くっそ……見てろよ!」
レイクはホウキに飛び乗った。
しかし——緊張のせいか、魔力の出力調整が狂ってしまう。
暴走するホウキ。制御を失ったレイクは、桁違いの猛スピードで会場内を飛び回り——
ドッガァァァァン!!!!
凄まじい破壊音とともに、試験会場の頑丈な外壁に頭から一直線に激突。
石造りの壁には、レイクを中心にクモの巣状の大きなクレーターが刻み込まれていた。
「……あいたたた……」
壁から真っ直ぐ落ち、頭を押さえるレイク。
会場全体が一瞬にして静まり返り、試験官は呆れたように首を振った。
「不合格だ。筆記も最悪、実技も論外。……おい、さっさと連れていけ」
「待ってくれ……っ!」
土煙の中から這い出し、レイクは諦めずに試験官を睨みつけた。
「待ってください!!!おれには……おれには夢があるんだ! おれは英雄を超えるために、ここに来たんだ!!」
「何を夢みたいなことを……」
呆れる試験官。だが、レイクの瞳に宿る異様な熱量に気おされ、ため息をついた。
「……いいだろう。そこまで言うなら、もう一度だけチャンスをやる。何をしても不合格は変わらんがな」
レイクは深く息を吐き、立ち上がった。
(イメージしろ……魔力を手に集めて、出したいものを強く思い描け……!)
脳裏に蘇るのは、別れ際に賢者マーリンが言っていた言葉。
『多くを教える時間はない。イメージじゃ。そこにあると思え』
(そこにあると思え……イメージだ……!)
頭に浮かぶのは、あの洞窟。
ドラゴンと対峙したメドロードが放った、あの圧倒的で、世界を焦がすような巨大な炎。
(あの炎を……今、おれのこの手の中に!!)
レイクは両手を空へとかざした。
その瞬間——ゴオオオオオッ!!
「な……何だこの魔力量は!?」
会場の空気が爆発的に膨れ上がる。
レイクの手のひらの上に現れたのは、会場全体を包み込むほどの巨大な超特大の炎球だった。
「これでも……喰らええええええっ!!」
レイクが手を振り下ろすと、太陽のような巨大な炎が的に向かって炸裂した。
ドッグォォォォォン!!!!
凄まじい衝撃波と熱風。
煙が晴れた後には、頑丈な石の的どころか、後方の壁ごと削り取られ、跡形もなく消え去っていた。
「よっしゃああああああっ!!」
はしゃぎ倒すレイク。
しかし次の瞬間、魔力を使い果たしたレイクは、そのまま白目を剥いてバタンと倒れ込んだのだった。
◇
気づけば、レイクは宿屋のベッドの上にいた。
「うう……頭が痛い……」
身体を起こし、机の上に置かれた合否の通知書に目をやる。
(終わった……。筆記は絶望、おまけに実技も暴走して倒れたし……絶対落ちた……)
絶望に打ちひしがれながら、震える手で封筒を開けるレイク。
そこには——
『王立騎士学園 合格』
賢者マーリンの推薦状の力か、あの規格外の破壊力が評価されたのか。
ボロボロになりながらも、レイクはついに王立騎士学園への門をこじ開けたのだった。




