修行
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弟子入りを果たしたレイクを待っていたのは……まさかの「介護レベルの雑用ラッシュ」!?
10年間小石を浮かせ続けた少年に、賢者マーリンが授ける「次の修行」とは……?
ぜひ楽しんでいってください!
マーリンの家に弟子入りしてからというもの、レイクに課されたのは到底「魔法」とは呼べない雑用ラッシュだった。
朝から晩まで料理を作り、大量の衣類を洗濯し、屋根と壁と柱の修理をさせられ、さらには麓の街まで買い出しに走らされる毎日。
「介護か!!!!」
山奥の静けさを切り裂くように、レイクの絶叫が響き渡った。
心の中で大いに憤慨しながら、レイクは山盛りの洗濯物をかかえて走り回っていた。
◇
そんなある日の午後、茶をすすっていたマーリンが、ふぅと息を吐いて呟いた。
「……ふむ。そろそろいいか」
その言葉に、レイクはピクッと耳を跳ねさせた。
「え!? もしかして……ついに本格的な修行が始まるのか!?」
「うむ。この椅子もだいぶ古くなってでの。おい小僧、ちょいと街で新しいのを買ってきてくれ。あ、ほら、お前の得意な魔法でひょいと持ち運べば楽じゃろ。よろ。」
「このクソジジイーーーーーー!!!」
レイクの怒りのボルテージが最高潮に達した、その時。
「まぁまぁ怒るな。……よし、そろそろ戯れもおしまいじゃ。魔法を教えてやる」
「おー! ついに!!」
待ちに待った言葉に、レイクの目が輝く。
(長かった……本当に長かった! これまで訳のわからないキノコを採取させられたり、怪しい液体を混ぜさせられたり、激重の魔導書で掃除させられたり……つーか普段どんな仕事して飯食ってんだよ!?)
「ほれ、魔法を教えてやると言っとるのに、なにをボケッと突っ立っておる」
「おー! なになに!? なんの魔法!? すっごい攻撃魔法か!?」
鼻息を荒くするレイクに、マーリンは一本の古びた竹ホウキをひょいと差し出した。
「ホウキ??」
レイクは首を傾げる
「庭の掃除せぇ」
「舐めてんのかクソジジイ!!」
レイクはホウキを地面に叩きつける
「まぁ冗談はこの辺にしておいて魔法を教えてやろう。」
「おー!なになに!なんの魔法!!」
マーリンは一本のホウキを指さして言った。
「さて。そのホウキに跨って、ちょいと自分ごと浮上させてみぃ」
◇
ついに始まった、本当の修行——『ホウキによる空中飛行』。
自分の手元にある「石」や「家」を浮かせるのとはワケが違った。己の体重を乗せ、不安定なホウキの軸に魔力を均等に流す作業は、想像を絶する難易度だったのだ。
「うおおおっ!? 待て待て待て!! どこ行くんだこれーーーッ!?」
レイクを乗せたホウキは、制御を失ってあちこちの方向へビンビンと暴走した。
木々に衝突し、空中を旋回し、最後は——
ドッガァァン!!
勢いよく頭から地面へと激突し、真っ逆さまに突き刺さるレイク。
「……あ〜、まじでセンスないわこいつ」
頭から地面に生えているレイクを見下ろし、マーリンは心の底から呆れた顔で呟くのだった。
◇
それから、半年の月日が流れた。
フワー
「うおおおおおおおっ!! 飛べた! 飛べたぞおぁぁぁッ!!」
大空を颯爽と駆け抜け、見事な旋回を決めて着地したレイクが、両手を突き上げて歓喜の声をあげる。
半年間の血と汗と泥にまみれた繰り返しの末、ついにレイクは自由自在にホウキで空を飛ぶ技術をマスターしたのだ。
「やった……やったぞジジイ! これで王立騎士学園の試験だって余裕だろ!!」
興奮冷めやらぬレイクに、マーリンは懐から一通の封筒を取り出し、ひょいと投げ渡した。
「よく頑張ったの、レイク。……で、これが王立騎士学園へのわしの紹介状じゃ」
「おー! さんきゅー、マーリンの爺さん!」
「で、試験はいつだったかのう?」
「え? これ明後日って書いてるけど……」
ポン!!!
マーリンが魔法で馬車を出す。
「……よし、今すぐ出発しろ。ここから学園のある王都までは、馬車でも1日はかかる。」
「えっ……!?」
固まるレイク。
「なんで今言うんだよバカジジイー!?」
「ほら行った行った! 遅刻したら試験すら受けられんぞ!」
「覚えてろよクソジジイーーーッ!!」
賢者の推薦状を懐に押し込み、馬車に乗り込む。
こうして、泥臭い半年間の修行を終えた少年は、数々の天才が集う王立騎士学園の入試へと乗り込むのだった——!




