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立ちはだかる巨壁

 王宮。


 ガルドの身体から、黒い魔力が噴き出していた。


「……貴様!」


 ガルドが拳を握り締める。


 レイクは拳を構えたまま、睨み返す。


「へっ……やっと本気になったか」


「後悔するぞ、人間族!」


 ガルドが地面を蹴った。


 ドォン!!


「うおおおおっ!!」


 レイクも迎え撃つ。


 拳と拳が激突した。


 ドゴォォォォン!!


「ぐっ……!」


 レイクの身体が大きく弾き飛ばされる。


「くそっ、ガルドを囲め!これ以上王宮を荒らさせるな!」


 巨人族の一人が叫ぶと巨人族の兵達が家ほどもある巨大な戦斧と槍を構えて一斉にガルドへ殺到する。


 一人一人が地上の軍勢を軽々と蹴散らすほどの剛力。


「……まだまだ!」


 レイクも地面を転がりながらも、立ち上がる。


 その瞬間、巨人族たちが一斉に攻撃を仕掛ける。


「今だ!」


「食らえぇぇぇ!!」


 巨大な武器達が次々とガルドへ迫る。


「邪魔だ!!」


 ドゴン!!


「ぐあっ!」


 巨人族達を次々と弾き飛ばす。


「ぬおおおっ!!」


 背後から迫った巨人族の拳を、ガルドは片手で受け止めた。


「なっ……!?」


「この程度か!」


 そのまま押し返す。


「ぐおおおおっ!!」


 巨人族が後退する。


 レイクはその光景を見つめていた。


「……こいつら、一人一人でも相当強ぇのに……」


 巨人族たちは再び立ち上がる。


「まだだ!」


「俺たちで押さえるぞ!」


 再び一斉に襲いかかる。


 しかし、ガルドはそのすべてを真正面から迎え撃つ。


 拳。


 蹴り。


 体当たり。


 そのすべてを圧倒していく。


「ぐあっ!」


「ぬおおっ!」


「くそっ……!」


 巨人族たちが次々と吹き飛ばされる。


 ガルドがゆっくりと振り返る。


「どうした、人間族!」


 ガルドが突っ込んでくる。


「うおおおおおっ!!」


 レイクも走り出した。


 ガシィィン!!


 二人の拳がぶつかる。


「ぐっ……!」


 レイクの腕が震える。


 力が、違う。


「これが……巨人族の力かよ……!」


「まだ理解していなかったようだな!」


 ガルドが拳を押し込む。


「巨人族の中でも、我は強者だ!」


「ぐあああっ!!」


 レイクが吹き飛ばされる。


 ドォン!!


 壁へ叩きつけられる。


「レイク!」


「大丈夫だ!」


 レイクは壁から離れ、瓦礫を蹴って跳躍した。


「出し惜しみしてる場合じゃねぇ!」


 レイクは右手のひらに魔力を限界まで練り上げ、極限まで圧縮する。


「一発で沈める!」


 ドォォォォォォン!!


 螺旋を描く魔力が高密度の巨大な轟炎へと変貌し、太陽のような熱量を放ち始めた。


 レイクはガルドの眼前へ一直線に肉薄すると、その炎を叩き込んだ。


「『地獄の轟炎(インフェルノ・バースト)』!!」


 ドッッッッッカァァァァァンッ!!!!


 視界が真っ白に染まるほどの大爆発が巻き起こり、凄まじい熱風が広間を吹き荒れる。


「ぐおおおおおっ!!」


 直撃だった。王宮が炎に包まれる。


「やった……!」


 巨人族の一人が声を漏らす。


 しかし――。


 炎の中から、ゆっくりとガルドが姿を現した。


「……!」


 身体には傷が刻まれている。


 だが、倒れてはいない。


 ガルドは自分の身体を見下ろす。


「……なるほど」


 そして、レイクを見た。


「貴様の力……確かに侮れんな」


 ガルドの身体から、さらに黒い魔力が噴き出す。


「だが、これでは我を倒すには足りぬ!」


 ドォォォォォォッ!!


 黒い魔力が王宮全体を覆う。


「な、なんだこの力は……!」


 巨人族たちが後退する。


 床に亀裂が走る。


 ガルドの身体を包む黒い魔力が、先ほどとは比べ物にならないほど膨れ上がっていく。


「……マジかよ……さっきより……さらに強くなってやがる……!」


 レイクが息を呑む。


 ガルドが拳を握る。


「ここからが、本当の戦いだ」


「……!」


 レイクは構える。


(どうする……!?このままじゃあいつのパワーに押し潰される……!)


 巨人族達は、すでに立ち上がるのがやっとだった。


「くそ……」


 レイクは拳を見つめる。


 ふと、脳裏にこれまでの戦いが蘇る。


 絶体絶命の瞬間。


 何度も自分を救ってきた、あの光の力。


「……あの力なら」


 レイクは拳を強く握り締め、体内の魔力へ必死に意識を潜らせる。


(来い……!出てこい!どうやって出した……!怒りか?集中か?)


 だが、狙って出そうとすればするほど、あの白い光は微塵も顔を出さない。


 レイクは眉をひそめる。


「どうやれば……」


 答えは出ない。


 それでも、ガルドが迫ってくる。


「考える暇など与えん!」


「くっ……!」


 レイクは再び拳を構えた。


「やるしかねぇ!」

◇

 ――地下神殿。


「行きます!」


 バルドルが駆け出す。


「うおおおおっ!!」


 ジークが振り下ろした拳を、バルドルが両腕で受け止めた。


 ドゴォン!!


「ぐっ……!」


 床が大きく沈む。


 しかし、バルドルは踏みとどまった。


「今です!」


「任せろ!」


 ゼノンが手を掲げる。


「『地裂大津波(ガイア・タイド)』」


 ドゴォォォォン!!


 大地が隆起し、ジークの足元を大きく崩す。


「今だ、エギル!」


「ああ!」


 エギルが一気に距離を詰める。


「『聖煌一閃』!!」


 ズバァァァン!!


 斬撃がジークへ叩き込まれる。


「グガァッ!!」


 ジークが大きく後退する。


「やった!」


 バルドルが声を上げる。


 しかし――。


「グ……」


 ジークが顔を上げる。


 身体から、さらに黒い魔力が噴き出した。


「グガ……ガァァァァァ!!」


「……!」


 エギルが目を見開く。


「まただ……!」


 ジークの魔力が膨れ上がっていく。


「こいつ……力が増している!?」


 ゼノンが顔をしかめる。


「黒い力が暴走してやがる!」


 ジークが咆哮を上げる。


「グオオオオオオオオッ!!」


 ドォン!!


 床を踏み砕き、一気に三人へ突っ込んでくる。


「来るぞ!」


 バルドルが前へ出る。


「僕が押さえます!」


「無茶をするな!」


 エギルが叫ぶ。


「いや、いい判断だ!」


 ゼノンが手を掲げる。


「バルドル!そのまま頼む!」


「はい!」


 バルドルがジークの腕を掴む。


「うおおおおおおっ!!」


「グガァァァ!!」


 二人の力がぶつかる。


「今だ!」


 ゼノンの魔法が炸裂する。


「エギル!」


「ああ!」


 エギルが斬り込む。


 しかし――。


 ガシッ!!


「なっ……!」


 ジークがエギルの剣を掴んだ。


「馬鹿な……!」


 そのまま振り払う。


「ぐっ!」


 エギルが吹き飛ばされる。


「エギル!」


 ゼノンが叫ぶ。


 その隙にジークがバルドルを弾き飛ばす。


「うわああっ!」


「クソっ!」


 ゼノンが魔法でジークを押し返す。


 しかし、ジークは止まらない。


「グオオオオオオオッ!!」


「くっ……!」


 ゼノンが後退する。


「三人でも……止められないのか……!」


 その時――。


「エギルさん!」


「ゼノンさん!」


 神殿の入口から声が響いた。


「バルドル王子!」


 三人が振り返る。


「ミリア!リゼット!」


 二人が駆け込んでくる。


 ミリアは戦場を見渡した。


「……あの人」


 黒い魔力を撒き散らしながら暴れるジーク。


「もう……普通じゃない」


 リゼットが短剣を構える。


「ミリア様。あれは危険です」


「うん」


 ミリアが杖を握る。


「みんな、下がって!」


 エギルたちが距離を取る。


「何をするんだ?」


 ゼノンが尋ねる。


 ミリアはジークを見つめる。


「止めます!」


 杖を掲げる。


 魔力が一気に膨れ上がった。


「『星屑の絶対零度(グラシエ・ステラ)』!!」


 パァァァァァン!!


 凄まじい冷気が神殿を駆け抜ける。


 ジークの身体が一瞬で氷に包まれていく。


「グ……ガ……!」


 次々と氷が重なり、巨大な氷塊となってジークを封じ込める。


 ――シン……


 神殿が静まり返った。


「……止まった?」


 バルドルが呟く。


 誰も動かない。


 ミリアも息を整えながら、氷塊を見つめる。


「これなら……」


 その瞬間。


 ピシ……。


「……え?」


 氷に一本の亀裂が走った。


 ミリアの瞳が揺れる。


「嘘……」


 ピシピシピシ……。


 亀裂が一気に広がっていく。


「なっ……!」


 ゼノンが目を見開く。


 バキィィィィィン!!


 巨大な氷塊が砕け散った。


「グオオオオオオオオオオッ!!」


 ジークが咆哮する。


「そんな……!」


 ミリアが息を呑む。


 ゼノンも驚愕の表情を浮かべた。


「あの氷を……!?」


 エギルが剣を握り直す。


「……まだ終わっていないようだな」


 バルドルも拳を握る。


「僕たちも、まだ戦えます!」


 リゼットがミリアの隣に立つ。


「はい。ここからです」


 再びジークの黒い魔力が、神殿を覆い始めた。


 その咆哮が、天空の大地を震わせる。


「グオオオオオオオオオオッ!!」

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