8話
スキル”時の番人”の自動発動 魔王軍の襲撃まで残り30日。
俺は城下町の地図を管理職の一人に持ってこさせ、
地図に適当な線を引き、五つの区画に分けた。
管理者達に好きな区画を選ばせる。
各々が指を差し、残った区画が俺の担当になった。
こいつらは知っている、
どこのエリアを選べば有利なのかを。
あいつらは内心ほくそ笑んでいるのだろう。
俺は何も知らないと・・・
今はそれでいい。
「ルールについて説明しよう」
五日間の徴税金額で勝負。
徴税で家に訪問する人を雇う場合、
払った給与は、集めた徴税金額から引かれる。
訪問担当者の給与金額は自由に決めてよい。
各管理者は部屋に残り指示を出してもいいし、
自分で訪問に回ってもいい。
雇うのは部署内の者でも外部の者でも良い。
雇う人数に制限は無し。
以上となった。
平静を装っていた男達から笑みが零れる。
「五日後が楽しみだ」と言い残し、
四人は仕事に戻って行った。
俺は部署内から五人を見繕った。
この勝負の話の最中、手を止めずに働いていた者だ。
まずは、五人の名前を聞く。
テキパキと仕事をこなし、朗らかな雰囲気の青年エバン。
穏やかな笑みを湛える青年ハンク。
前髪で顔を隠す、控えめな少女マーシャ。
不安そうな面持ちの青年のヨグとロイド
明日からの勝負での訪問担当を依頼すると、
エバンは快く引き受けてくれたが、
他四名は少々強引に承諾を得る事になった。
引き受けてくれた事に礼を伝え、
まずは、住民税について話を聞く。
一世帯、月毎に銀貨十枚の定額。
払えない場合は滞納証が渡され、
支払いは任意のタイミングとなるそうだ。
支払い期限を決めないというのはどういう事なのか・・・
それでは、払うものも払わないと俺は思うぞ。
次に、訪問担当に支払う賃金について聞く。
訪問担当をやるとしたら、
一日の賃金はいくらぐらいが相場なのか聞いてみた。
大変な仕事だから銀貨一枚は出した方が良いと
エバンが教えてくれた。
更に、管理者達が君たちを雇った場合に、
いくら払いそうか五人の推測を聞いてみた。
皆は口を揃えて言う。
銀貨一枚の半分に当たる銅貨五十枚。
現場のスタッフと管理職で認識に乖離が有る。
これは良い事を聞けた。
きっと、低賃金の人海戦術を取って来るなこれは。
俺は皆に礼を伝え、仕事に戻させた。
窓から入る光が茜色に染まる。
徐々に静けさが訪れる部屋。
城下町に明かりが灯る頃、
徴税担当部署には俺以外誰も居なくなった。
俺は地図を眺め、
担当区画の道という道を頭に叩き込む。
担当区画の地図を細分化して、
手書きで地図のコピーを作った。
回収対象の住所を地図と照らし合わせる。
これが思っていたよりもキツイ。
集中力を要する地道な作業は疲労が溜まりやすい。
スキル”煉獄に耐えし者”の自動発動。
だが、残業一時間程度の疲労感だ。
城は静けさに包まれていた。
たまに、見回りの衛兵の足音だけが響く。
そういえば、食事を用意してもらったな。
豪勢な物は全て断り、パンと水だけ。
乾いた堅いパンを一口齧る。
不味い・・・
いつものパンを思い出し、俺は少し安心した。
スキル”堕天使の夜明け”が自動発動。
スキル”時の番人”の自動発動 魔王軍の襲撃まで残り29日。
徴税担当部署で俺は黙々と作業を進める。
気付けば部屋内は喧騒に溢れていた。
開け放たれた窓から鐘の音が聞こえる。
これは始業の合図か?
四人の管理者は各々二十名程の訪問担当を集めていた。
俺は昨日お願いした五人だけ。
管理者は乱雑に積まれた滞納証を訪問担当達に渡すと、
担当者達は我先にと一斉に部屋を出て行った。
その様子を五人が不安そうに見ている。
俺は五人に挨拶をしてから、
”高滞”と書かれた手書きの地図と、
仕分けた滞納証の束を渡す。
各々が渡された滞納証を鞄に仕舞う。
地図を手に持ったまま、俺の指示を待っている様だ。
すると、皆の気持ちを代弁するかの様にエバンが口を開いた。
「あの、銀貨を何枚集めたら戻っていいんですかね?」
「今日は無理をしなくて大丈夫。
出来る限りで頑張ってくれればいいから」
ハンクが遠慮がちに挙手をする。
「でも、そうしたら勇者様、負けちゃいますよね」
「そうだね、負けてしまう可能性もあるよね」
俺は笑顔で答える。
マーシャもそれが気になった様だ。
「じゃっ、じゃあ、今日からすごく頑張らないと・・・」
「それじゃあ、一個だけお願いをしてもいいかな?」
皆が頷く。
俺はこっそりと耳打ちをすると、
五人は目を丸くしていた。
「それじゃあ、みんな宜しくね。
きっと君達なら良い結果が出せるはず」
目一杯の笑顔で送り出す。
スキル”道化師の仮面”を自動発動。
走り出したロイドが遠くで手を振っている。
不安の払拭が出来た様で何よりだ。
いつの間にか、管理職四天王の姿が無い。
自ら訪問に向かったのか・・・
「自ら回収に動くとは。
管理職であろうと一人は一人、大きな成果は望めまい」
俺は机に向かい、
また黙々と作業を進める。
ふっと顔を上げる。
窓の外の夕焼けが眩しい。
朝と同様に部屋には活気が戻っており、
訪問担当者達は口を結んだ革袋を手に、
今日の成果を自慢しあっている。
うちのチームも既に揃っていた。
エバン達はどこか満足気な表情をしている。
頑張ってくれたんだな、みんなありがとう。
全ての人が集まったようだ。
さあ、初日の集計結果を見てみよう。




