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6話

 俺はかんむりを頭に乗せた面接官に問い掛けた。


「その、スキルについてどう話せば良いのか・・・」


面接官はひげでながら得意げに語る。


「スキルとは目に見える物もあれば、

 目に見えぬ物もある」


そうかもしれない。


職人や芸術家であれば作品を見せればその技量は分かる。

だが、PCスキルや対人スキルは見せ様にも面接では機会が無い。


「確かに・・・」


面接官は顎髭あごひげまでで始める。


「勇者のスキルを確認する方法は、

 ”スキルを見たい”と思えば見えるそうじゃ」


最後の一言が引っ掛かる。


「そうじゃというのは、そういった伝聞でんぶんがあると?」


「そうでは無い。

 使えるスキルは勇者にしか見えないのだ。

 昔の勇者はうんたらかんたら・・・」


後半の話には興味が無いのでスルー。


「そうでしたか」


面接官四世は随分と饒舌じょうぜつになった。

この話が好きなのか、それとも奇跡の一発逆転を期待しているのか・・・


「試させて貰っても?」


「よいよい、是非試してみてくれ」


俺は目を閉じ、”スキルが見たい”と念じる。

何かが浮かび上がる感覚で目を開ける。


前方六十センチ前、宙に浮く白い枠が浮かび上がっていた。


丁度良い距離感とサイズだ。

PCモニターを見ている感覚に似ている。


枠内に記載された文字を上から順に読む。


氏名と上にフリガナ、年齢は三十、

職業欄の記載がサラリーマンでは無い。


”月の終焉しゅうえんろくを食む者”と記載されていた。

確かに間違ってはいない。

うちの会社の給料は月末締め、月末払いだ。


緊急連絡先の記載は無い。

配偶者の有無も無い。

顔写真は有る。


その下には、

HP 1/60となっている。


そうか、これは六十人中一位。

つまり、営業成績についてだ。


次は、

MP 8/28


俺の記憶に抜かりはない。

勤続年数と創業年数だ。


ここからが難解だ。

ATK 20とは一体なんだ?


毎月の平均出勤日数にしては少なすぎる。

抱えている案件数?

それでも少なすぎる。


はいはい分かりましたよ、第一営業部の所在地ね。

確かにうちはビルの二十階だ。


この後のDEFとかも同じ様なものか。

次に行こう。


お目当てのスキルはここからか。


煉獄れんごくに耐えし者 ・・・ ”残業”からのダメージを90%削減


道化師の仮面  ・・・ ”表情”が与える印象を100%増加


不動明王ふどうみょうおうゆるし ・・・ ”商談相手の挑発・暴言”を無効化 


堕天使の夜明け ・・・ 6日連続の”完徹”が可能。7日目に即死


酒呑童子のうたげ  ・・・ 飲み会での”親密度上昇”が80%増加


機械仕掛けの神 ・・・ あらゆる通信の”回線速度”を50%増加 圏外無効


韋駄天いだてんの化身  ・・・ ”歩行速度”10~50%増加 任意で発動


時の番人    ・・・ ”納期”の期限を警告する 


これがスキルか・・・

結構色々あるものだな。


これは先天的な才能なのか、後天的に芽生えたものなのか。


しかし、凄いな・・・

自動生成のAR履歴書とは。

転職に革命を起こせそうだ。


さっきから、履歴書の枠外から視線を感じる。

それはご褒美を期待する浅ましい眼差し。


誰か、この室内犬四世におやつを与えてくれないか。



 スキルの欄にはまだ余白がある・・・

これは何を意味するのか?


静かな騒音に耐え切れなくなった俺は、

一旦、枠から目を外す。


スキルについてだけ包み隠さず話した。

可哀想に、室内犬四世の顔がやつれた老人の様だ。


あまりのあからさまな態度に、

浮かび上がる疑問を老犬四世に投げ掛けた。


「召喚した勇者が期待通りのスキルでは無い場合、

 問題への対処はどうするおつもりで?」


老犬四世は小さな声で吠える。


「考えていない・・・」


「はい?」


声が小さくて聞き取れない。

すると、次は大きな声で吠えた。


「考えておらんと言うておろうに。

 そもそも勇者であるお前のスキルが不甲斐無いのじゃ!!」


スキル”不動明王ふどうみょうおうゆるし”の自動発動。


身体の奥から感じる・・・


こっ、これが・・・スキル

凄いっ、凄いぞ!!


老犬からの責任転嫁の暴論。

これに怒りの感情が一切湧かない。


精神安定剤に頼らず、この胸の落ち着き。

ノーコストの保険証いらず。


良いじゃないかスキルというものは。

これなら、賠償金額の引き下げを検討してもいい。


「それで、どうするおつもりで?

 私に期待外れだと言われても結果は何も変わりませんよ」


「じゃあ、どうせいと言うのじゃ」


キャンキャンと吠える老犬四世は、

知性まで畜生に成り下がっていた。


「であれば、何が出来るかを考えるべきではありませんか!!」


俺はにらみを利かせた。

スキル”道化師の仮面”の自動発動。


老犬四世は青い顔をしてうつむき、

尻尾を丸め、大人しくなった。


だが、顔を上げる。

目の焦点がずれた愛想笑いを浮かべながら。


「そうじゃな、お主の言う通り、出来る事を考えるべきじゃな」


本位からかは分からないが一歩前進した。


「それで、魔王軍が攻めてくるのはいつ頃なのでしょうか?」


「あぁ、三十日後じゃ」


スキル”不動明王ふどうみょうおうゆるし”が自動発動した。

本作品を御覧下さり、ありがとうございます。

この物語を読んだ方で、


” 人間ドッグ ” を ” 人間と犬の半獣人 ” だと思っていた方は”★”


” 宝くじに当選!! ” が ” 今朝の夢 ” だった方は”★★”


自分は ” かなりの異常者 ” であるという ” 自覚 ” をお持ちの方は”★★★”


” 隕石 ” が落ちるなら ” 自分の会社 ” が良いという方は”★★★★”


” アルフォート ” を ” 同時に9枚 ” 食べるお金持ちの方は”★★★★★”


をお願い致します。

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