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アークロック  作者: 加鳥このえ
第三章 女子校潜入編
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第94話 『無気力症候群事件』議事録④

「ちょっと早いけど、今日も情報共有を始めていこうか」


 僕の名前は空錠鍵斗(くうじょうけんと)。『鍵使い(キーユーザー)』であり、アークロックのリーダーだ。


 そんな僕は今、みんなの前にホワイトボードを持ってきて話していた。


 陽向さんの表情は明るいものに戻っていたが、その目の下に広がる赤いものを見逃すことはできない。


 だが、今は穂火ちゃんと零くんもいるため、彼女へのフォローはあえて後回しにした。


「さて、今日もいつものように今日調べてわかったことを共有していこう。おそらく一番成果がないのは僕だ。だから僕から言わせてもらうけど、


 とりあえず、鍵が開いている人は一名を除いていなかった」


「一名?」


 零くんが興味深そうにそう言ってくれた。僕は頷いて、こう返す。


「陽向さんと病院に行った時にわかったんだけど、ゼロ人目の被害者である『九条麻菜(くじょうまな)』さんのアークが開いていた。


 まだ確証はないけど、彼女が『捕食のアークリオン』に関わっている可能性は大だと僕は踏んでいる。


 それと、九条さんは三時間に一回の巡視で寝ているところを確認されているのと、8/11に美佐校の生徒が見舞いに来ていたらしい。誰かまではわからないけどね。


 僕の方はこんな感じかな」


 それを聞いた陽向さんはウンウンと頷いてくれた。しかし穂火ちゃんは、口をあんぐり開けて呆然とした後、こう言ったのだ。


「全然成果あるじゃないですか……。ちなみに私はゼロです!」


 自信満々にそう言う彼女からしか得られない栄養はあるのだろう。僕たち全員は失望などせずに、穂火ちゃんを可愛い妹のように受け止めた。


 さて、今回のメインとなるのは陽向さんと零くんだろう。僕は穂火ちゃんに「ありがとう」と伝えて二人の方を見た。


 しかし陽向さんは口を開こうともせず、ジェスチャーでおちゃらけたように零くんを指した。


 その結果、零くんは語り始める。


「僕たちのほうは多くのことを知りました。それを今から伝えます。


 まず、


 容疑者であった『シロちゃん』『宮弐(みやに)先生』『昂月(たかつき)さん』『忍者ちゃん』『巳鶴(みつる)』『保健室の先生』には共通点がありました。


 それは、イジメについて。


 そして、一人目、二人目、三人目の被害者である『暁幸代(あかつきさちよ)』『東雲羅針(しののめらしん)』『曙民莱(あけぼのみんらい)』の三人にも関係するものです。


 わかりやすくまとめるとこうなります。


 三人の被害者は容疑者の一人である『シロちゃん』をいじめていました」


 僕はその話を聞いて、今日見た彼女の頬の傷を思い出した。


 あれはイジメにより刻まれたものだったのか。


 そして零くんの語りは続く。


「『忍者ちゃん』『昂月さん』は『シロちゃん』のクラスメイトであり、『昂月さん』は深くは関与してませんが『忍者ちゃん』はイジメを止めようと暴力沙汰を起こした記録があります。


『宮弐先生』はイジメの相談を『シロちゃん』からされていた様子が目撃されている。『巳鶴』は被害者の一人と友達、しかし今は縁を切っていると供述あり。


 そして『保健室の先生』は『シロちゃん』を不登校に追いやった負傷事件の現場である保健室にいた、との情報あり。


 そしてこのイジメ事件は、去年の夏に起こったことである」


 零くんはいつものように美しい立ち姿で歩きながら、僕の横に来る。そしてホワイトボードにこう書いた。


「つまり、こういう関係ですね」



『シロちゃん』=『昂月さん』=『忍者ちゃん』=同じクラスの生徒


『シロちゃん』相談を持ちかける→『宮弐先生』


『被害者の誰か』=『巳鶴』=友達


『保健室の先生』←『シロちゃん』を不登校に追いやった事件の目撃者



 僕はそれを見て頷いた。


 零くんはそれを書いた後、ペンを置いてこう言う。


「僕たちが調べたことはそれくらいです」


 僕は「おー!」と拍手しながらこう言った。


「凄いよ! ここまで調べられているのなら、動機はかなり読みやすくなった」


「いえいえ、そこまででは」


 謙遜する零くん。だが、僕にはわかる。プラネッツとの戦いで活躍できなかったことを後悔しているのか、今の零くんは内心誇らしい気持ちでいっぱいになっていそうだった。


 僕まで嬉しい気分になりながら、僕はその流れに乗ってこう述べた。


「ありがとう、零くん。つまり、この事件に隠されたもう一つの事件、イジメ事件を探っていくことで今回の犯人は見つかる可能性が高いってことだね。


 怪しいのは『シロちゃん』かな?」


 穂火ちゃんが不思議そうに、こう言う。


「でも、まだ解決してない謎がありますよね?」


 僕は頷いてこう返す。


「うん。まだ、ゼロ人目の被害者である『九条麻菜(くじょうまな)』のアークが開いていたこととこの事件の関連性を結びつけられていない。僕の課題はそこだね」


 これに関しては、僕にしか解けない気がするから。


 僕がそう言うと、みんなの発言がスッと止まる。会議が終わることを悟り、こう言った。


「それじゃあ、この事件の概要を、今日得た情報も入れて、改めてまとめよう。


 事件が始まる一年前に、『シロちゃん』へのイジメがあった。この事件の容疑者は三人。『無気力症候群事件』の被害者三名でもある、『暁幸代(あかつきさちよ)』『東雲羅針(しののめらしん)』『曙民莱(あけぼのみんらい)』。


 なんの因果か、彼女たちは僕たちが追っている事件の被害者となる。



 その事件の始まりだった可能性があるのは8/10。


 これは公になる前であり、ゼロ人目の被害者である『九条麻菜(くじょうまな)』が『捕食のアークリオン』に襲われた可能性がある日である。


 ただ、この日についてはまだ曖昧であり、深く言及することはできない。


 そしてこの日に、病院に運ばれた『九条麻菜(くじょうまな)』のもとへ誰かが見舞いに来ていた。


 そして僕たちが最初から把握していた、事件の始まりの日だと思われていた8/17。


 一人目の被害者である『暁幸代(あかつきさちよ)』が早朝に発見される。その姿は願いを失ったような、呆然としている姿であり、以降の被害者は全てこの症状で現れる。


 そしてその二日後、8/19。


 二人目の被害者、『東雲羅針(しののめらしん)』が現れる。


 ここで、事件に法則性が現れた。一日おきに、被害者が現れるようになったんだ。


 8/21。


 三人目の被害者『曙民莱(あけぼのみんらい)』が現れる。


 これによって、被害者は全て美佐校の生徒と仮定できたが、四人目によってそれがひっくり返る。


 8/23。


 四人目の被害者『会社員の男性』が現れた。発見されたのは同じ美佐校の近くだが、それでも、美佐校に関係ない人が狙われたという事実が増えた。これは師匠に確認をとってもらったから、美佐校に関与していない人であると確定している。親族ですら美佐校の出身者ないし在校生はいなかった。


 美佐校の生徒だけが狙われる、という前提が崩れたところで、


 8/25。


 容疑者の一人であった『忍者ちゃん』が被害者の一人となる。これは僕と陽向さんで被害にあったと思われる『忍者ちゃん』を見たから、疑う余地はないだろう。


 そして今日、8/27。


 まだ被害者は発見されていないが、これまでの流れからして、すでに被害が出ている可能性が高……」


 僕がそう言おうとした刹那、絵美さんが勢いよくアークロックの基地に入ってきた。


 バンッ! と大きな音を立てて入ってきた彼女に視線が集まった時、絵美さんはこう言ったんだ。


 彼女はただの『鍵屋ガッチャン』の店員である。アーク使いらしいが、詳しい素性は不明。そう思っていた彼女が、最後に大きなピースを運んできた。


「アークロックのみんな! 急いで! アークリオンの反応だよ!」


「……!?」


 その反応の詳しい事情は聞かなかった。でも、それでも、本能が叫んでいる。


 事件に関する重要なことである可能性が高いと。


 僕たちは急いで会議をやめて、出撃の準備をする。


 なにかが、急かすような音がした。

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