↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アークロック  作者: 加鳥このえ
第三章 女子校潜入編
PR
86/97

第85話 『無気力症候群事件』議事録③

「と、とりあえず。いつもの会議を始めよう」


 僕の名前は空錠鍵斗(くうじょうけんと)。『鍵使い(キーユーザー)』であり、アークロックのリーダーだ。


 そんな僕はアークロックの基地で、みんなに向かってこう訊(き)いた。


「みんな、今日集めた情報はある?」


「ないです」


「ないです」


「ないでーす!」


 当たり前である。なぜなら今日は……。


「まあそうだよね。ずっとプラネッツと戦ってたんだし」


 そう、捜査自体を進めていないのだ。


 だがこれで、じゃあ会議終わりー!


 とならないのが今日のイレギュラー。


 僕はこう続けた。


「でも、棚ぼたである情報を得られた」


 みんなはそれを聞いて頷く。僕はこう話した。


「プラネッツに勝ったことで、プラネッツが仕掛けていたカメラの情報を得て、陽向(ひなた)さんのひらめきでその正体まで掴めた。その結果、バスケットボール型のカメラを発見できて、事件当日の映像を手に入れることができた。詳しく見た結果、右下に小さく8/17と書かれていることがわかり、これは当初想定していた事件の始まりの日でもある」


 僕はこれまでの会議で出た情報をまとめておいたノートを開き、こう語った。


「今出ている情報を整理しよう。


 事件が始まったのは8/10。ただしこの日付は他の事件日と違って、ルールの矛盾がある。これはおいおい整理するとして、


 残りの事件日は、8/17、8/19、8/21、8/23の四つ。


 この事件は一日おきで起きており、これが何かの法則と考えられる。でも、前述した通り、8/10はこの法則に該当しない。なぜなら事件の始まりが8/10だとすると、8/12、8/14、8/16に事件が起こっていないのは謎であり、そもそも発見できていないならそれでいいのだけど、明らかに、偶数日が事件日に変わるため、ここは矛盾点となる。


 昨日の8/25の被害者も見つけられていないけど、これまでの法則を考えると、見つけられなかったと考えるのが妥当だと思う。


 そしてこの事件の被害者は、8/10、8/17、8/19、8/21の四件の被害者が美佐校の生徒だった。

 これまでは僕たちも美佐校の生徒が狙われていると仮定していたけど、8/23になって急に美佐校と関係ない会社員が狙われた。これも矛盾点だ。


 そして、ここからは容疑者リスト。


 8/17の一時に残っていたと情報があったのは、七名。


 『シロちゃん』『宮弐(みやに)先生』『昂月(たかつき)さん』『忍者ちゃん』『巳鶴(みつる)』『バスケットボール』『保健室の先生』


 このうち不明瞭なのは、『忍者ちゃん』と『保健室の先生』。『忍者ちゃん』は夜遅くまで残っていたらしいが、一時までいたのかは不明。『保健室の先生』はシンプルに、昨日捜査線上に浮かんだ人物なため、まだ調査不足だ。


 そして『宮弐先生』は一時にいたと『シロちゃん』による目撃情報があったが、当の本人である『シロちゃん』は8/17の夜、詳しく言えば0〜3時限定で売られていたグッズを持っていたため違和感が残る。


 『昂月さん』『巳鶴』、この二人はあの日夜まで学校にいたと供述。『巳鶴』に至っては朝まで泊まっていたと言っていた。


 最後に『バスケットボール』だけど、彼は事件現場にいて僕たちに情報を与えてくれた。



 今までで出ている情報はこんな感じかな」


 アークロックのみんなは僕の声を聞いて頷いてくれる。


 僕はそれに自信を貰い、こう続けた。


「そして今日の映像によって分かったことをこれからまとめよう。


 まず、アークリオンの正体。


 この事件の犯人は……いや、あえて凶器と言わせてもらうと、この事件の凶器は、


 まるで食事を楽しむかのような、スーツに白いナプキンという礼装で身を包んでいる謎のアークリオン。便宜上、ここからは『捕食のアークリオン』と名付ける。


 『捕食のアークリオン』は、人から光る何か、おそらく被害者が願いを失ったように無気力になっている点から推測して、願いを奪って食べている。


 理由は不明であり、とにかくそういう行為をしているのは確かだ。


 そしてこの『捕食のアークリオン』を凶器と言った理由は、


 この映像の最後」


 僕はバスケットボールをいじって、映像を流し最後の部分で止めた。そしてこう続ける。


「最後に映った、この『捕食のアークリオン』の横を、悠然(ゆうぜん)と歩いている女子生徒の足」


 映像には、スカートから下の部分だけが映っており、顔は見えない。だが、襲われる気配がなく、驚く気配もなく、ただ歩いている姿が見えた。


「この態度は明らかに、知っている側。つまり……犯人の可能性が高い」


「じゃあつまりこの人が……」


「うん。アークの持ち主なんだ。本来なら考えづらい、アークリオンと協力している状態だけど、陽真(ようま)が天然のアークリオンとして研究していたのも特例だからだと推測できる」


 正直言って、悔しいよ。


 こんな、プラネッツが集めていた情報を棚ぼたで獲得して、一気に推理を進めるのは。


 でも、この事件は被害者を実際に出しているんだ。


 僕の脳裏をよぎるのは、あの無気力になった親を救おうと頑張っていた小学生の姿。


 変な意地で止まっている場合ではない。


「プラネッツに勝って、報酬で得た情報で捜査は大きく進んだ。悔しいけど、プラネッツのおかげだ。でも、実際に被害が出ている事件。そんな意地は捨てて、すぐに解決しよう。事件解決までに残された日数は、残り四日。でも、リミットを待つ必要はない。


 明日までに解決だ。


 僕には鍵を開けられているかどうかを判断できる『鍵使い(キーユーザー)』としての力がある。


 あした、容疑者に片っ端から触れて、開いているか確認するよ」


 みんなはそれを聞いて頷いた。そして僕はこう言う。


「そしてこの作戦の最大のネックは……僕が触ると悲鳴が上がるという点だ」


「……お、おう?」


 陽向さん含め、みんなの失望の顔が僕に刺さる。だけど苦手を補い合うのがパズル理論でありアークロックだろ!?


 僕はそう自分を励ましながら、こう続けた。


「だからお願いします。場を作ってください……」


 みんなの呆れた視線が僕を襲う。


 そう思いながら、僕は目を閉じたんだ。


 でも、ゆっくりと開いたその先にいたのは、やる気と尊敬、そして少しの笑いが詰まった、明るい表情だった。


「え……」


 当然僕は困惑する。思っていた反応じゃなかったからだ。


 でも、みんなはこう言ってくれた。


「鍵斗先輩が全てを背負う必要はないですよ。僕たちがいるんですから」


 零くんに続き、穂火ちゃんも口を開く。


「正直、アークロックの最弱は私です。でも、そんな私が失敗しても、空錠(くうじょう)先輩は嫌な顔せずに接してくれた。なのに嫌なんて言えませんよ!」


 そして最後に、陽向さんが立てた親指を見せながらこう言った。


「まかせろり!」


 約一名訳のわからない奴がいたが、それでもみんなが受け入れてくれて、僕はこの温かいチームに感謝した。


 陽向さんがこう続ける。


「頼っていいよ! 鍵斗くんは無敵じゃない。みんな弱点があって、補い合うのがアークロックなんだから」


 僕はその発言を聞いて、笑みをこぼした。そうだな、そうだった。


 僕は彼女にこう返す。


「ありがとう、みんな。そして陽向さん。


 君があの時、捜査が白紙に戻りそうになった時。頑張った時間は無駄じゃない、考え方が違うだけと言ってくれた。そのおかげで迷わず来れたんだ」


 陽向さんは頷いた。その顔は、溌剌ではない。真面目な話を聞く時の、少し口角が上がっただけのものだった。


 穂火ちゃん、零くんも頷いてくれる。


 本当に、アークロックは素直な子が多い。僕はそれに助けられながら、こう続けた。


「ありがとう、みんな。このまま事件解決まで行こう」


「おー!!!」


 僕はみんなの掛け声を聞いて、手を鳴らした。そしてこう返す。


「それじゃあ今日はお開き! また明日! 朝の八時に、例の公園で!」


「了解!」


 そうして、今日の活動を締めくくる会議が終わった。


 でも、この時の僕は大切なことを忘れていたんだ。



 アークリオンの反応が不自然に消滅した



 これがこの事件を難解なものにした原因であり、そして、次々と現れる証拠に隠れた……重大なピース。


 僕たちは何か、根本的な勘違いを……しているのではないだろうか。


 それに気づかないまま、この日を終える。そして……明日も……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。