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アークロック  作者: 加鳥このえ
第三章 女子校潜入編
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第69話 風呂敷の端っこは不明瞭

 捜査三日目が始まった。


 僕らはいつも通り潜入したのだが、なぜか僕だけ肩に手を置かれる。


 何してんの陽向(ひなた)さーんと言おうと振り返った時、そこにいたのは警備員さんだった。


 僕は仲間を探す。彼女たちは走って逃げていた。


 素晴らしい判断である。


 これで、全滅は(まぬが)れた。


「じゃないよ!!」


 警備員さんはガシッと僕の襟元(えりもと)を掴んで、引っ張っていく。


 僕は必死に対抗しながら「ちょ、ちょっと待てーっ!」と暴れるが、警備員さんは鋼の意志で僕を引っ張った。


 三日目にして、僕の正体はバレたらしい。


 でも、アークロックのパズル理論を忘れるなかれ。欠点を仲間で補うのがアークロックなのだ。


 みんな、僕はこれで終わったけど、あとは……任せたぞ。


 おっと、自己紹介が遅れたな。


 僕の名前は空錠鍵斗(くうじょうけんと)。『鍵使い(キーユーザー)』であり、アークロックのリーダーだ。


 □■□■□


 突然ですが自己紹介を!


 私の名前は陽向灯里(ひなたあかり)。アークロックの一員です。


 そんな私は今、腕を組んで頭を悩ませていました。


「ひ、ひ、ひ、ひ、陽向(ひなた)先輩ぃ! 空錠(くうじょう)先輩が連れていかれちゃいましたっ!」


 とっさに校舎の影に隠れた私たち。そこで、穂火(ほのか)ちゃんは当たり前のように焦っていた。


 (れい)くんは「どうします?」と冷静を装って喋っていたが、足はガクガク震えていた。


 私は「むー」と考えた後、鍵斗(けんと)くんの話を思い出し、みんなにこう伝えた。


「助けに行きたいけど、助けられるプランもない! だからここは、リーダーを信じて鍵斗くんは見捨てる!」


「え、ええー!?!?」


 私はドヤ顔でこう続けた。


「鍵斗くんならなんとかなるよ!!」


「……ほ、本当ですか?」


 零くんが肩を落としてそう聞いてきた。私は、「まあ多分、おそらくもしかすると、助かるんじゃないかな」と返す。


 零くんは「ダメじゃないですか」と言った。


 でもさ、鍵斗くんは多分助けてもらうことは期待していないと思うんだ。


 だから私は、パズル理論を片手にこう述べた。


「とにかく、できることをしよう! 各々、事件について捜査する。鍵斗くんのことは大丈夫。だって鍵斗くんの長所は、考える力、だもんね!」


 零くん、穂火ちゃんはそれに納得したのか、していないのか、渋々頷いていた。


 対する私は、燃えていた。


 なぜなら、今日はいい情報が手に入りそうな予感がするからである。


 そしておそらく、鍵斗くんなら大丈夫だからだ!


 □■□■□


 申し訳ないが、この状況から逃れる術を思いついてはいない。


 僕の名前は空錠鍵斗(くうじょうけんと)。『鍵使い(キーユーザー)』だ。


 そんな僕は、警備員の指導を受けていた。


「まったく! あり得ないぞ! 女子校に女装して潜入するなんて! 何を考えているんだ! 警察には連絡させてもらうからな!」


「ちょ、ちょっと待ってください! これには事情が!」


 警察という単語に反応してしまい、僕は咄嗟(とっさ)に言い訳を並べようとした。だが寸前で、アークについては言えない、と止まってしまう。


 それが何かを刺激したのか、警備員さんの通報欲求はさらに上がり、もはや止められなくなった。


 僕は


 もはやここまでか!


 と、目を閉じて警察が来た後のことを考え始めていたが、その刹那でトンッと音がした。


 なんだと思い、ゆっくり目を開くとそこには……師匠がいた。


「師匠!?」


「悪いがアークを使わせてもらう」


 どうやら師匠は警備員さんを手刀で気絶させたらしく、無防備にしてから頭に触れてアークを使っていた。


 久しぶりに目の前で師匠のアークを見た。


 師匠のアークは『記憶操作』であり、アークロックの活動がみんなに忘れられるのも師匠のおかげなのだ。


 僕は「ら、乱暴にしないであげてください、彼は仕事をまっとうしただけです!」と言うが、師匠からしてみればそれはお門違いの言葉だったらしく、こう言われた。


「だったら捕まらない努力をしろ。警察まで出てくれば、どれだけ記憶を(いじ)らなきゃいけなくなるか……」


 ため息を吐くようにそう言われて、僕は「うっ……」と言葉を詰まらせてしまう。


 それはそうとして、助かった、と僕は安堵した。


 師匠はこう言う。


「鍵斗を見つけた記憶を少し弄り、鍵斗の立場を猫に変換しておいた。シャミィ!」


「にゃー」


 師匠と行動を共にしていたのか、シャミィがどこからともなく現れる。そんなシャミィは机の上に体を丸めて寝転んだ。


 師匠はこう続ける。


「シャミィにはここにいてもらう。これで、警備員が目覚めても記憶の矛盾は起こらないだろう。


 それはそうとして、鍵斗、私がここに来た理由はわかるか?」


 僕はそう言われて、「僕を助けるためですか?」と返したがそうじゃなかったらしい。


 師匠は首を横に振ってこう言った。


「それもあるが、一番は被害者が増えたからだ」


「……被害者が!?」


 驚く僕を他所に、師匠は冷静にこう続けた。


「陽向が言っていた二日の法則だが、あれはおそらく間違っていなかった。一日を開けて現れる無気力な人間。8/17、8/19、8/21、と法則通り現れていたが、8/23は現れなかった。つまり、何か法則が違うと考えていたがそれは違ったのだ。


 17日から21日までの被害者は全て美佐校の生徒だったゆえの見逃し」


「それって、まさか……」


「ああ。ついに関係ないところから被害者が現れた。23日の被害者は、会社員であり、帰宅中に何かあったと思われ、24日の朝に無気力を発症していた。昨日と今日、会社を休んでいるらしい。ストレス性のものだと診断されていたよ」


 僕はそれを聞いて、真剣な表情でこう返した。


「美佐校限定の事件じゃなかった?」


「その可能性が高い」


「じゃあなんで、三人の被害者は美佐校の生徒なんだ?」


 師匠はフッと口角を上げて、こんなことを言う。


「それを調べるのが鍵斗の仕事だ。桃木島(ももぎじま)で成長した鍵斗の姿を見て、任せてもいいと思えたからな」


「……師匠」


 僕はなんだか認められて嬉しい気分になりながらも、こう述べた。


「でも、被害者のことを考えたら師匠がやったほうがいいんじゃ……」


 それを聞いて、師匠は僕の(ひたい)をトンっと指先で突く。


「な、何するんですか!?」


 困惑する僕を他所に、師匠はこう言う。


「それじゃあ後続が育たないだろ。それに、私は私でもっと大きな事件を追っているからな。こっちは任せる、鍵斗」


「……師匠」


 今度こそ、僕は心の底から納得と感謝を覚えた。


 さて、師匠は忙しそうだから、このくらいで会話を終わらせて仕事に移ろう。


 僕はそう思いこう伝えた。


「ありがとうございます。僕のほうは探ってみます」


「ああ、頼む」


 そう言って、師匠は警備室から出て行こうとした。だが僕はその背中を止めて、こう伝えた。


「師匠! 今日のご飯は酢豚の予定です! だから、お腹空かせて帰ってきてくださいね」


 師匠の表情は上手く見えない。でも、こちらを軽く振り返った時に見えた微笑みは、僕を更なる安堵へと潜らせた。


「ああ、楽しみにしているよ」


 師匠はそう言って、去った。


 警備員の人が「……ん」と目覚め始めたので、僕は焦ってシャミィに「やば! ごめんね、シャミィ! それとありがとう!」と伝えて急いで警備室を出る。


 ウィッグを付けてドアノブを回す僕の背中に、シャミィは「にゃー」と言った。


 なんだかそれが嬉しくて、笑みが溢れる。


 でも、今は事件だ。


 僕はスマホで『アークロック』というグループトークに、師匠から言われたことと、僕がこれからしようとしていることを書き込む。


 それは、


 『つまりそういうことだから、僕は学外を探る。学内は任せる』


 ということだった。


 陽向さんが真っ先に、ファイトー! というスタンプを送ってくれる。


 僕はそれを確認して、清々しい気分で美佐校を後にした。


 てか、本当になんとかなってよかった!!


 我の人生に、女子校侵入という汚点を残さず終わったことに、感謝ッ!!


 僕はそう思いながら、スカートをバサリと動かしながら、全力でダッシュした。

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