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アークロック  作者: 加鳥このえ
第二章 激突! 修行編!!
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第51話 学生のボランティア活動

 『支配のアークリオン』が倒されたことで、戦場に激震が走る。


 町に溢れようとしていた鬼たちも、一斉に動きを止める。


 それを見たのは、鬼を止めていた、陽向の師匠である宮島霊奈(みやしまれいな)と、陽向の姉弟子である鹿村信乃(しかむらしんの)だった。


 二人は、それを見て安堵する。


 同時期に、町にいた桃木躍兎(ももぎやくと)陽向灯里(ひなたあかり)も、漏れて町まで来ていた鬼の動きが止まったことを視認する。


 陽向は瞬時に、仲間がどうにかしたのだと理解した。


 躍兎も鍵斗(けんと)の顔を思い出し、こう言った。


 陽向は、それを聞いてグッと頷く。


「行け! 鍵斗兄ちゃぁぁぁぁん!!」


 同時刻、別の場所で、空錠鍵斗(くうじょうけんと)は自らの腕に付けていた『桃太郎の腕輪』が発光するのを目にする。


 目が(くら)むほど強く発光するそれは、鍵斗の腕からスッと抜け落ち、宙に浮かび上がった。


 鍵斗は、虚空から白の鍵を取り出し、それを掲げる。


 その鍵は、千年の悲しき物語に終止符を打ち、新たな桃木島の歴史を始めるためのものだった。


 不思議と、遠く離れた躍兎(やくと)の声が聞こえたような気がして、鍵斗はふっと微笑んだ。


 そして、思いっきり腕を動かし、目の前でフワフワと浮いていた『桃太郎の腕輪』に白の鍵を()した。


 そして、回す。


 ガチャン、という音と共に、桃太郎の『支配のアーク』は閉じられた。


 波及するその影響は、桃木島中に広がる。そして、この島にいたあらゆる鬼は、燐光(りんこう)のように広がって消える鬼の皮膚を見つめながら、涙を流した。


「ああ……あぁ!」


「戻る、戻っていく!!」


「お母さん、お父さん!」


 鬼の皮膚が少しずつ消えていき、姿を現したのは、桃太郎により姿を変えられ、洗脳されていた人々。


 燐光のようなそれは、桃木島を照らす妖精のようであった。


 祝福ともいえるその光景を見た、白衣を着た女は、ふと口角を上げこう言った。


「流石だな、鍵斗」


 そう、どれだけ桃太郎のアークが偉大でも、どれだけ桃太郎のアークが、時間をかけて根強いものになっていたとしても、空錠鍵斗ならそれを閉じられる。


 それが……『類い稀なる閉じる才能』なのだから。


 鍵斗はふと気づき、こんなことを言った。


「全部終わってから気づいたけど、(れい)くんさ、どうやってアーク開いたの?」


 鍵斗は思い出していた、自らがアークを開けていないことを。零は、現れた時からアークを使用していたことを。


 零は、ふと微笑んでこう伝える。


 そう、桃木島には、もう一人の鬼を抑えていた『鍵使い(キーユーザー)』がいる。


 そう、それは白衣を着た女。その名も、シーラ。


 彼女はすでに島に来ていた。そして、零に会い、古傷を押さえながらアークを開けていたのだ。


 そんなシーラは、鬼から人々に戻る彼らを見て安堵(あんど)する。


 シーラが抱えていた大きな問題の一つが、桃木島の失踪事件であった。そんな問題を、弟子である空錠鍵斗、そしてその仲間が解決してしまった。


 その事実に、シーラは笑わずにはいられない。


 鍵斗のことを自慢に思いながら、シーラはこう呟いた。


「成長したな……鍵斗」


 そして、当の本人である空錠鍵斗は「師匠が来てるの!?」などといつもの調子で答えながら、零と話していた。


 だがすぐに緊張が走る。


 『鬼神』の指先がぴくりと動いたのだ。


 警戒する鍵斗と零。だが、シュルシュルと縮んだ『鬼神』は、笑っていたのだ。


 スマートな筋肉になり、顔立ちも怒りが抜けたからか凛々しいものに変わり、零に一歩劣るレベルの面の良さになった。


 それを見て、鍵斗は警戒を緩め、こう言った。


「おかえりなさい、英雄」


 『鬼神』は、涙を流しつつも笑顔でこう返した。


「ありがとう、若き戦士よ」


 桃木島の呪いの物語は、これで終わりを迎える。


 洞窟から出て来た桃木虎太郎(ももぎこたろう)は、鬼の姿から少しずつ人に変わり、町を見つめた。


 空に広がるのは、黄色い光。


 美しく桃木島を彩るその光を見た虎太郎は、微笑んだ。


 桃木に伝わっていた復讐の物語は、閉じられる。


 最後に、その最大の功労者は息を()んでいた。そして、こんなことを言う。


「あっつ!!」


 帰ってきた『鬼の槍』を引き抜き、しばらく待っていたが、『想いの解放』によりオーバーヒートしており、『鬼の槍』はもはや熱すぎて持てる物ではなくなっていた。


 これは、大切な槍。


 それは十分にわかっている。だが、熱すぎて持てないものは持てない。ゆえに……『鬼の槍』は無情にも戦場に置き去りにされた。


 平和が戻って来た桃木島(ももぎじま)の上で、カラスが鳴く。


 もうじき沈む太陽に照らされ、潮風に当てられながら、ありきたりな物のようにポツンと置いて行かれた『鬼の槍』は、まるで穂火の帰りを待つように、この場に残る。


 それは、あまりにも功労者の武器とは思えない惨状であった。


 穂火はチラチラと後ろを振り返りながらも、持てないから仕方ないよね、と思いながら仲間の元へ向かった。


 『鬼の槍』は、太陽に照らされながら、沈黙を貫く。カーカーというカラスの声が無情にも響いた。


 そして、集合場所は自ずと合宿所である宿へと。


 『鬼神』に肩を片方ずつ貸していた鍵斗と零、『鬼の赤子』を抱きしめた陽向、何も持っていない穂火。


 その四名は三方向から再会を喜ぶ。


 この戦いは、改めて、アークロックの勝利で終わった!!


 そして、夜がやってくる。


 桃木島への合宿は七日間であり、修行の時間は五日間取られていた。そして、今日が五日目の夜であり、明日は帰る一日だけであった。


 つまり、今日が最後の夜ということだった。


 そんな夜を、祝杯で過ごす。


 アークロックは桃木島総出で祝われた。


 豪華な食事と、人々の絶えない笑い声。まさに勝利の祝福であるその宴の中心で、鍵斗たちはこれでもかとチヤホヤされていた。


 その経験は、アークロックという組織が認められたことを意味していた。


 この戦いはそれほどのものであり、鬼から解放された人々は感謝の意を示し続けるほどだ。


 そんな、鬼から解放された人々は昭和生まれから平安生まれまでおり、もはや戸籍もないものも多い。


 その者たちはツキバアが預かり、生活を支援することとなった。


 この事件に隠されていた神器である『桃太郎の腕輪』はシーラが回収することとなり、アークロックには勝利という名の報酬が与えられる。


 だが、アークロックに名誉はない。


 アークは広がってはならない存在であり、桃木島に元からいた住民だけではなく、空錠鍵斗により救われた人々の記憶からも、アークロックの存在は消される。


 唯一の例外は師匠たちと、戦闘に関わった数名であった。


 だが、アークロックのメンバーはそれを惜しまない。


 なぜなら、アークロックは名声を求めるチームではないからだ。


 アークロックの四人は横に並んで、山の頂上にある展望台からこの島を一望した。


 その背中は、どこか立派で、成長を感じさせる。


 そして、鍵斗が口を開いてこう言った。


「守れたね、幸せを」


「うん」


 そう、アークロックは幸せを守るチームであり、


 敵を倒すチームでも、英雄になるチームでもない。


 ゆえに、歴史に名を残さない。


 学生が放課後に行なっているボランティアに過ぎないのだから。


 そんな四人は、雑談を始め、笑顔を咲かせる。


「でもさー、ビーチでの鍵斗くんのセリフはダメだよね〜」


「え!? 今更それ蒸し返してくる!?」


「そ、そうですよ! あれには傷つきました!」


「鍵斗先輩、僕は味方ですからね!!」


 そんな彼らはアークロック。


 幸せを守るチームであった。



 桃木島の呪いのお話は、笑い声の絶えない宴で終わる。


 だが、アークロックのお話はまだ終わらない。


 夏休みだって、まだ終わらないのだから。

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