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ブラウン侯爵と面会する。

大艦隊が、ゆっくりと、そして堂々と進軍したのを見たフォルクス侯爵は、俺の思惑通り、戦わずに撤退を決断した。


急な撤退命令で、混乱した敵艦隊が、接触事故を起こしたりしていて、まるで連携が取れていなかった。


それに、複数の貴族が参加していた。


だから、使っている軍艦も、現在の帝国軍の主力級から、1世代前や2世代前。


もっと古いの軍艦まで混じっていた。


移動速度から、主砲の射程距離まで、てんでバラバラだ。


あれじゃあ、連携に問題があるのも頷ける。


移動する場合でも、一番遅い船に歩調を合わせないといけない。


だから、進軍速度も遅くなる。


司令官のフォルクス侯爵も、参加した貴族の艦隊を置いて行く訳にも行かない。


やはり、俺の派閥貴族達の軍艦を、主力級に統一しておいて、正解だったな!


ドンガ達が改造して、能力も向上しているそうだし…


俺の領地にある、帝国軍主力級の造船設備は、常にフル生産中だ。


古い軍艦を引き取り、代わりに新品の艦隊を渡して入れ替えている。


派閥貴族達の軍艦を総て入れ替えるには、まだまだ時間が必要だ。


今度、手に入れた本星の近くにも、造船設備を新設するか?俺がそんな事を考えていると、撤退したフォルクス侯爵率いる艦隊の後を追跡していた偵察艦から連絡が入った。


どうやら、完全に撤退したらしい。


撤退したと見せ掛け、相手が油断したタイミングで艦隊をUターンさせての奇襲攻撃を警戒していたが、その心配は無用だったみたいだ。


「チェスター殿下。ブラウン侯爵から通信が入っております」


「分かった。通信を繋げ!」


「はっ。承知しました!」


ブラウン侯爵との通信が繋がり、艦橋にある大画面のモニターに投影される。


「チェスター殿下!殿下自らの援軍、感謝致します!」


そう言って、ブラウン侯爵が頭を下げた。


そして「我が領地で、お迎え準備を整えて御座います。是非、お立ち寄り下さい!」


俺が部下達を見ると、部下達が頷いた。


「侯爵自らのお誘いだ。お邪魔させて頂こう」


こうして、俺が乗る戦艦ディルピックが、ブラウン侯爵領の宇宙港に入港した。


俺に続いて、ワグナー公爵やミュラー伯爵等の重鎮達を乗せた戦艦が入港する。



★★★★★



俺が戦艦ディルピックから宇宙港に降り立つ。


宇宙では、先に船を降りた派閥貴族達と、ブラウン侯爵や、ブラウン侯爵の派閥に所属する貴族達。


それから、今回の騒動の発端のコルテン伯爵とガーランド伯爵が俺を出迎える。


ブラウン侯爵が一歩前に出て「チェスター殿下。今回は救援感謝致します!」そう言って頭を下げた。


「歓迎の準備が整っております故、是非、我が屋敷へ足をお運び下さい」そう言って、俺を先導した。


ブラウン侯爵の屋敷に到着し、歓迎の宴が始まった。


俺は未成年だから、飲酒はしない。


まあ、飲酒をしても、皇子である俺に注意出来る人間は、ここには居ないのだが…


異世界に転生しても、日本人だった時の概念がなかなか消えない様である。


バイオレットが俺を呼びに来る。


俺はバイオレットの後に付いて、別室へ移動した。


別室では、ブラウン侯爵が率いる派閥の上位貴族達と、俺の派閥に所属する上位貴族の当主達が、既に待機していた。


どうやら、派閥同士の話が付いた様だ。


ブラウン侯爵が一歩前に出る。


そして「我々は、チェスター殿下に忠誠を誓います。是非、我々を殿下のお側に置いて頂きたく…」そう言って頭を下げる。


俺を永年に渡り、支えてくれている貴族達との間で話が付いている。


ここで俺が断ったりしたら、彼らの面目を潰す事になる。


それに、そもそも断るつもりなら、最初から救援艦隊を出撃させていない。


だから俺は「分かった!よろしく頼む」と答える。


すると、ブラウン侯爵達が安堵の顔をしたのだった。


ブラウン侯爵率いる派閥貴族は、領地を持たない法衣貴族が多い。


だから軍事力と資金力に劣る。


だが、彼らは帝国官公庁の要職に就いている。


だから政治力には定評がある。


今まで俺の派閥には、法衣貴族が少なかったから、何かと役に立つだろう。


こうしてチェスターは、新な仲間を手に入れた。



★★★★★



時は少しだけ遡る。


ここは、フォルクス侯爵が乗船する旗艦の中である。


今しがた、ブラウン侯爵に最後通告を行った所であった。


ブー!ブー!ブー!


艦内に警報音が鳴り響く。


「何事だ!」


「何者かがワープして来ます!その数…膨大!!」


「何処の誰だ!!」


「識別コード確認…第4皇子チェスター殿下の艦隊です!」


「間違い無いのか?」


「はい!間違いありません!」


「侯爵殿下。通信が入っております…撤退せよ!さもなくば攻撃を開始する。以上です!


「…仕方無い…撤退する…」


「お待ち下さい!叔父上!殿下自ら戦場に赴くハズがありません!我々を欺く敵の策略に違い無いのです!」


彼の名前はハリソン。


フォルクス侯爵の甥である。


将来、フォルクス侯爵が幾つか所持する爵位の中から男爵位を貰い、フォルクス侯爵家当主を補佐する予定である。


年齢は、チェスターと同じ。


彼も初陣を飾る為、叔父のフォルクス侯爵に頼み込んだ。


フォルクス侯爵も、勝利を確信していた為、旗艦への乗船を許可したのであった。


「良いか、ハリソン。他人が皇子の名を語る事は帝国法で固く禁じられておる」


「では…そうです!今のうちにブラウン侯爵の艦隊を撃破してしまいましょう!」


「バカを申すな!流れ弾が殿下の艦隊の方に行き、皇子への攻撃と見なされでもしたら、どうするのだ!撤退だ!撤退せよ!」


総司令官フォルクス侯爵からの急な撤退命令を受け、艦隊は大混乱した。


軍艦同志が接触する事故も多発する。


「遅い船は置いて行け!」


こうして、大混乱の中、フォルクス侯爵が乗る旗艦は、仲間の船を置いて撤退した。


チェスターは、まだ、成人前である。


従って、皇帝陛下から爵位を得て、独立していない。


つまり、チェスターは、まだ、皇族籍である。


皇族への攻撃は、謀反を疑われる。


下手をすると、朝敵となりかねない。


従って、フォルクス侯爵の判断は正しいと言えよう。


しかし、納得しない者もいる。


甥のハリソンである。


俺の初陣が敗戦で終わるとは…チェスターめ!余計な事をしやがって!


彼もまた貴族である。


貴族は、名誉を重んじる。


こうして彼は、一方的にチェスターに対し、敵対心を抱く事になる。

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