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チェスターの初陣。

コルテン伯爵とガーランド伯爵が、ゲルハルト派を離脱してから数ヶ月後、フォルクス侯爵を中心とした連合艦隊が出撃したと報告を受けた。


ブラウン侯爵から救援要請があった場合に備えて、俺の派閥貴族達の艦隊が、第一惑星周辺に集結済みだ。


第一惑星から、帝国首都星まで約1ヶ月と言う、かなり近い距離だったから、帝国首都星を警備する近衛艦隊から問い合わせが来た。


だから、合同軍事演習だと回答した。


まあ、俺の領地には、帝国軍主力級の軍艦を建造する設備がある。


俺とソフィアの婚約祝いとして、皇帝陛下から賜った物だ。


設計図を見たドンガ達が、それを改良しまくった。


かなり性能アップされているそうだ。


派閥の貴族から、古い軍艦を引き取り、ドンガ達が改良した最新鋭の軍艦を渡して、軍事力を引き上げた。


特に優れている点は、情報の共有化能力だ。


何時、何処で、誰が、どんな敵と、どの様に戦っているかの情報が共有される。


だから、自分がどう動けば良いか、判断が可能だ。


それと、新型艦を渡す条件として、年2回の合同軍事演習への参加を義務付けている。


だから、連携もバッチリだ!


近衛艦隊には、定期演習だと回答したが、帝国軍の偵察艦が、俺の領地外れに陣取り、警戒中だ。


作戦の立案や、その作戦に必要な艦隊や補給物資を用意したりするのが、統合作戦本部である。


統合作戦本部長のマレーネからの報告では、俺の派閥に所属する上位貴族とその寄子達の艦隊が集結しているそうだ。


俺の元には、6家の上位貴族がいる。


だから、6家の上位貴族と、その寄子貴族達の艦隊。


第一惑星周辺に、現在30個艦隊が集結している。


1個艦隊が1万5千隻だから、合計45万隻が集結していると言う事だ。


それに、補給艦やら、偵察艦やら…まあ、それだけの大艦隊が首都星から約1ヶ月の距離に展開すれば、近衛艦隊が警戒するのも当然だな。


やはり、今後の事を考え、俺が公爵になった時には、旧シューマッハ男爵領を俺が住む本拠地にした方が良さそうだ。


本拠地の惑星だから、約して本星と呼ぶか?


先程から何度も、フォルクス侯爵が率いる艦隊の情報がもたらされ、第一惑星にある俺の屋敷に、貴族家当主や軍人達が集まり、会議中だ。


当然、俺は発言しない。


素人が横から口出すると、やり難いだろうし、全体の足を引っ張り兼ねない。


人の命が懸かっているし、プロに任せるのが一番だ!


「では、総大将のチェスター殿下には、このまま第一惑星で待機して頂きます!それで宜しいですね?」


「意義なし!」


「ちょっと待ってくれ!私も出撃するぞ!!」


「チェスター殿下!戦場では、何が起きるか分からず危険です!」


そうか…そうだよな~。


俺が転移門を開いて、ヤバくなったら、逃げられる事を知ってるのは、俺の眷属の悪魔達だけなんだよな~。


だが、貴族家当主として、何時かは軍を率いて先陣に立たないと行けない場面が、やって来るかも知れない。


それに、この歳で初陣を済ませておいた方が、貴族社会で箔が付く。


「総大将の私が後ろに引きこもっていたら、臆病者との謗りを受けるかも知れない。だから、私も出撃するぞ!」


「殿下!殿下は、まだ、成人前。ですから、臆病者などと言う者はおりませんぞ!」


「そうです!その通り。殿下の安全が最優先です!」


「皆の気持ちは有り難く思う。だが、もう決めた事だ。それを踏まえて、陣形を考えて欲しい」


俺が退かないと理解した様だ。


そして、総大将として、俺が出陣する前提で、会議が再開した。



★★★★★



予想通り、ブラウン侯爵家から、救援要請が来た。


まあ、予想していたから別に驚かない。


マーガレットからも聞いていた。


だから事前に準備していたからな!


俺が乗る、旗艦ビスマルクは現在、不在だ。


旧ホフマン男爵領へ向かわせたからだ。


そこで今回は、ビスマルクの姉妹艦ディルピックに乗船している。


この船は、ビスマルク型戦艦の2番艦だ。


2番艦を建造させておいて良かった。


備えあれば憂いなしだな!


俺がブリッジの豪華な椅子に座っていると、バイオレットが俺の後ろに立ち「チェスター様。お願いします」と耳打ちする。


俺は総大将として、全軍に指示する立場だ。


「全軍、出撃せよ!」



★★★★★



俺は戦艦の中に設置された、豪華な椅子に座っている。


日頃から訓練している軍人達が、テキパキと仕事をこなす。


だから、やる事がない。


俺の左後ろにバイオレットが、右後ろに護衛のヘルマンが立つ。


宇宙艦隊司令長官のハインリッヒが、艦隊に指示を出す。


執事のクレストンが、お茶を運んで来る。


俺はお茶を飲みながら、ハインリッヒに質問する。


フォルクス侯爵が率いる艦隊は、どれくらいの規模だ?


「はい。強行偵察艦隊からの情報では、およそ16個艦隊との事です」


24万隻らしい。


こちらは、45万隻。


フォルクス侯爵が、よほどの無能でなければ、撤退してくれるだろう。


血を流さずに済みそうで何よりだな!


続々と情報が入って来る。


フォルクス侯爵の艦隊が、ブラウン侯爵の艦隊と睨み合っているそうだ。


ブラウン侯爵には、援軍に駆け付けると連絡したから、フォルクス侯爵から圧力を掛けられても、降伏はしないだろ。


「チェスター様。次の短距離ワープで、戦場付近に到着致します」


「そうか、分かった!作戦通りにな!」


「承知しました!」


ハインリッヒが頭を下げた。



★★★★★



「何故だ?何故ブラウンは降伏しないのだ?」


フォルクス侯爵は、ブラウン侯爵に無条件降伏を薦めた。


無条件降伏では、ブラウン侯爵が降伏しない事は、分かっていた。


これは、ディールである。


少しづつ降伏条件を緩めて、相手との合意点を探す。


しかし、ブラウン侯爵は、どの様な条件を出しても、降伏に応じようとはしなかった。


フォルクス侯爵は、苛立った。


余り時間を掛けすぎると、自身の能力を疑われる。


戦争になれば、勝利は確実である。


しかし、自軍に予想以上の損害が出れば、それはそれで、嫌みを言って来る貴族もいる。


少しでも油断すると、同じゲルハルト派の貴族であっても、足を引っ張る者はいるのだ。


そこが、チェスター派との決定的な違いであった。


ゲルハルト派の貴族は、上を目指す。


同じ派閥に属しいる貴族であっても、蹴落とし、自分が出世しようとする。


しかし、チェスター派の貴族は、現状で満足している。


無理してまで、上を目指さない。


その違いであった。


フォルクス侯爵は決断する。


「ブラウン侯爵に最後通告を行う。返答の猶予は3時間。返答無し、又は交渉決裂の場合は、戦闘を開始する!」


こうして、フォルクス侯爵から、ブラウン侯爵へ最後通告が行われた。


ブー!ブー!ブー!


艦内に緊急ブザーが鳴り響く。


「何ごとだ!」


「何ものかがワープして来ます!その…膨大!」


「なに?なにが起こった?誰か、報告せんか!!」


フォルクス侯爵が怒鳴った。



★★★★★



「チェスター様。ワープ終了です。およそ4時間で戦場に到着します!」


「う~ん…よし!ハインリッヒ。陣形を維持しつつ、ゆっくり堂々と進軍しろ!」


「急がなくて、宜しいのですか?」


「ああ、構わない。見たところ戦闘は始まっていない様だ。だから、フォルクス侯爵に逃げる時間を与える」


「しかし、チェスター様。我が軍の勝利は間違いありません。この際です、敵対派閥のゲルハルト派を殲滅されたら如何かと…」


「そんな事をしたら、ゲルハルトと完全に敵対するだろう?攻撃されたら反撃するが、向こうが逃げるなら見逃せ!目的は、ゲルハルト派を倒す事ではなく、ブラウン侯爵を救済する事だ。目的を見失うなよ!」


「承知しました!全軍に徹底させます」


この後、チェスターの思惑通り、フォルクス侯爵は全軍の撤退を決断した。


貴族として、自身のプライドは大切だ。


たが命の方が、もっと大切である。




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― 新着の感想 ―
 コルテン伯爵とガーランド伯爵は、ゲルハルトが主人公の婚約祝いに『嫌気物』をプレゼントした場で、まともな反応をされた方々でしたかねー。  だけど、今時で顔を潰されたゲオハルトはどんな仕返しを考えるので…
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