ゲルハルトは焦る。
いま、ゲルハルトは、自身の執務室で、側近のエドワードから、派閥貴族達の現状報告を受けていた。
「不味いな…このままでは、私の派閥貴族達の中から、国税庁から追徴課税されると言う、不名誉な家が出てしまう…」
「はい。殿下。その様な事になれば、派閥の長であるゲルハルト殿下の評判にも関わって来るかと…」
「エドワード。何か良い案は無いか?」
「そうですね…宇宙港建設の為、購入した南半球の土地に住まう住民を、派閥の各貴族領へ強制移住させましょう!」
「でも、その様な事をしたら、役人連中が煩いのでは無いのか?」
「秘かにチェスター殿下の状況を探っていた時に判明したのですが…チェスター殿下は、帝国市民権の無い不法移民達に、自領の市民権を与え、その上で住民を移民させた様です。その方法なら可能かと…」
「チェスターの真似をするのか?気乗りせぬが…」
「殿下!その様な事を言っている場合ではありません!このままでは不味い事態に陥るかと…」
「仕方無いか…では、その様に進めよ」
「それと、確実に住民達を移住させる為、南半球に購入した土地を封鎖するのが良いかと…今は1人でも多くの労働力が必要ですから」
「各貴族の私兵を大量に首都星に集めると、帝国軍が黙っておるまい。皇帝陛下がお住まいの首都星だ。謀反を疑われる」
「殿下が購入した土地は広大です。その土地を閉鎖するには、確かに多くの兵士が必要です。ですから土地の敷地内に兵を配置すれば良いのです!貴族街や国の重要施設には近寄らせません!貴族の屋敷の警備に、私兵を投入するのと同じイメージです」
「うむ…分かった…それ以外に方法が無いのなら仕方あるまい」
「では、手配致します!」
そう言って、エドワードは部屋を出て行った。
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「エドワード。宇宙港建設の件は、どうなっているのだ?」
「現在、建設長官と宇宙局の引き継ぎが始まった所です。慣例により、権限譲渡が行われるのは1年後となります」
「引き継ぎに1年か…長いな…だが仕方無いか…」
「はい。慣例ですから。ですが、権限が手に入るのは確実。先行して着手されたら如何かと…派閥貴族達の資金に余裕のある、今のうちに資金を集めるべきかと…」
「ああ、そうだな。では、エドワード早急に進めよ!」
「承知しました!」
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「ヒューズ男爵。お久し振りで御座います」
「アデミール。挨拶は良い。早速に用件を話す。そちに依頼して購入した、あの南半球の土地だが、この度、開発される事が決まった」
「あの広大な土地ですか!」
「ああ、そうだ。今回の開発に付いては、わしが責任者に志願した。そこで、今回もそなたを使ってやる事にした。だから、わかっておるな?」
「はい。そう言う事ならお任せ下さい。決して殿下に損はさせません!それで、予算はいかほどで御座いますか?」
「ああ、予算はこれだけの金額を預かっておる。前回と同様で、追加予算は無い。よろしく頼む」
こうして、不動産コーディネーターのアデミールが、開発予算の一部をヒューズ男爵にバックする事が決まった。
ヒューズ男爵は、前回で味を締めたのだった。
アデミールに丸投げするだけで、不動産の購入に成功し、ゲルハルト派の上位貴族に誉められた。
更に、購入資金の一部がバックされ、自身の懐も温まった。
だから、今回は開発責任者に、自ら志願したのだった。
開発費の一部は、アデミールと繋がりのある、帝国三大マフィアが設立した、ペーパーカンパニーに流れるとも知らずに…
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それから数ヶ月後、ヒューズ男爵家の屋敷に、アデミールがやって来た。
「どうした?アデミール。何かあったか?」
「はい。殿下。開発用地3ヵ所のうち、2ヵ所の土地で問題が発覚しました」
「何だと!いったい何が起こったのだ?」
「はい。地盤確認の為、ボウリング調査をしたのですが、1ヵ所は元々砂漠地帯だった場所を宅地造成した土地でした。それから、もう1ヵ所は、海を埋め立てた土地。どちらの土地も地盤が弱く、巨大な構造物を建設するには、大規模な地盤改良工事が必要だと判明しました」
「なに!それでは建設が出来ないと言う事か?」
「いいえ、殿下。現在の技術を使えば、建設は可能なのですが、とても予算が足りません…」
「ふざけるな!今さらそんな報告が出来る訳が無いだろう!何とかせよ!」
「残念ながら…追加予算が無ければ、どうにもなりません。お気に召さないなら、私を外して頂いて構いませんが…」
ヒューズ男爵は思案する。
他に建設の専門家の知り合いは居ない。
それに、今から探したのでは、上から指示された工期に間に合わない恐れがある。
前回の不動産購入時と違い、今回は自ら志願した。
上手く行かなかったら、自身の面目丸潰れである。
そこで、男爵は、自身の懐から追加の資金を提供せざる得なかった。
前回の不動産購入時に、バックさせた金額の数倍の金額を吐き出した。
大赤字である。
結局、利益を得たのは、アデミールとマフィア達だけだった。




