国税庁官の視察。
ソフィアとの婚約式から10年が経った。
初日は、貴族家当主夫妻。
2日目は貴族の関係者。
そして、3日目からは、会場を一般公開し、各貴族領地の特産品の宣伝を行った。
後日、収支報告書の確認をしたら、黒字決算だった。
一般公開した時は、チケットの購入希望者が、予想より多かった。
そこで、急遽、開催期間を延長し、チケットを追加販売する事態になったのが原因だった。
まあ、どうせ会場のドーム施設を使用する予定も入ってなかったから、ちょうど良かった。
まあ、そんな感じで、無事に婚約式も終わらせる事が出来たのだった。
それと、宣伝も上手く行った様だ。
土星の月に設置した、各貴族領の特産品を取り扱う売店と言うか…アンテナショップ?みたいな店は、今も大盛況だ。
俺が、帝国首都星に建設した宇宙港から、毎日の様にツアー船が出航している。
前世で言う所のバスツアーみたいな感覚だろうか?
俺の領地、第一惑星への移住も一段落した。
内務長官のマルティンからの報告では、1000万人が暮らす都市を幾つも作り、そして、その都市間を繋ぐ交通網を整備したそうだ。
まあ、それでも、惑星1つと言う規模で見たら、まだまだ、住民の数が少なく、未開発の広大な大地が広がっている事態だ。
引き続き首都星で、移民を募集しているが、やっと住民が20億に人を越えたばかりだ。
俺の予想通り、ゲルハルト派の新興貴族達が、首都星で大規模な移民募集を行っている。
最近は仕度金を払うと宣伝しているそうだ。
相当焦っている様だ。
一人っ子政策の失敗だな。
バイオレットから「我が領でも仕度金を用意して、移民の募集をしますか?」と聞かれたが、そこまでしなくても良いと断った。
来たい人だけ来てくれれば、それで良い。
私設宇宙軍の整備も順調だ。
上位貴族は、4個艦隊以上の保有が帝国法で義務付けられている。
1個艦隊が1万5千隻。
つまり、最低でも6万隻を揃えないとならない。
軍務長官フリードリヒによると、現在4万隻体制だ。
俺が成人して、公爵位を得るまで、まだまだ時間があるから問題ない。
そして、今日は、帝国国税庁ボッシュ侯爵が視察に来る日だ。
俺が公爵に相応しい領地をちゃんと持ってますよー!と、今のうちからお墨付きを得て置く為に招いたのだ。
アンドロイドやロボットの使用を制限する法案が帝国議会を通過し、来年から施行される。
施行が来年だから、納税が再来年。
税務調査は、更にその後になる。
男爵以上の領地持ち貴族は、惑星を1つ以上を有している。
だから、1つの家の税務調査をするにも数年かかる。
まあ、まず最初にターゲットにされるのは、ゲルハルト派の貴族達だろう。
ボッシュ侯爵は、ハルベルト派の重鎮だし…
だから、ボッシュ侯爵は、法律が施行されたら、税務調査で忙しくなる。
それに、何時までもハルベルト兄上の派閥貴族が、国税庁官の職にあるとは限らない。
だから、俺からハルベルト兄上に、ボッシュ侯爵の視察を依頼したのだ。
無事に視察が終われば、ボッシュ侯爵から、帝国宰相に話が上がり、そして、皇帝陛下の耳に入る。
事前準備が大切だ。
★★★★★
俺は第一惑星の宇宙港でボッシュ侯爵を出迎える。
「ボッシュ侯爵!わざわざ足を運んで頂き感謝する!」
「これは、チェスター殿下!殿下自らお出迎え頂き感謝致します」
挨拶も終わり、場所を内務省に移す。
ボッシュ侯爵を応接室へ案内した俺は、内務長官のマルティンを紹介する。
「では、侯爵。後の事はマルティンと話してくれ。マルティン頼んだぞ!」
「承知しました」そう言って、マルティンが頭を下げた。
後の事は、マルティンに丸投げだ。
俺は屋敷に戻り、ソファーに寝転び、だらけた。
★★★★★
秘書のバイオレットから、視察は順調だと報告を受けた。
そして、今日は第三惑星の視察日だ。
第二惑星は、まだ、手付かずの状態だから、今日は開発が終わっている第三惑星を視察するそうだ。
そこで、俺はボッシュ侯爵より先に、第三惑星へと赴いた。
「おお、来たか。ボッシュ侯爵!」
「はい。殿下。この短い期間でのご領地の発展具合。素晴らしく思います。殿下が皇帝陛下から爵位を賜る時には、正式に公爵領と認められると思われます!」
「そうか!それは良かった。」
挨拶も終わり、俺はボッシュ侯爵に「この惑星は丸ごと私の別荘だ。だから、この惑星には屋敷の管理人と、庭師しか居ないんだ!」と言う。
するとボッシュ侯爵が「……殿下…お言葉では御座いますが…見た処、遥か彼方まで続く馬鈴薯畑に見えますが…」
「いいか、侯爵。馬鈴薯の実が出来る前には、馬鈴薯の花が咲くんだ!貴族の屋敷の庭に、花が咲いていて当然だろう?」
「殿下…その様な言い訳が通るとでも?」
「では、あそこで作業している、大量のロボットに指示を出しているアンドロイドと農夫は?」
「ああ、あれは庭師だな…別荘の庭が広いから、ロボットに雑草の引き抜きでも指示してるんじゃ無いか?」
そのタイミングで、同行していたマルティンが「チェスター様!そう言えば、ボッシュ侯爵殿下に、帝国法務局に供託した資金の説明を忘れておりました!申し訳御座いません!」と、白々しく言う。
「ああ、あの資金の事か。あれほど重要な事を忘れるとは…ボッシュ侯爵。申し訳ない」
「法務局に供託とは…いったい何の話で御座いますか?」
「ああ、私は本来なら納税の義務が無い。まだ、まだ皇帝陛下から爵位を得ていない。皇子の身分だからだ。だが、私の領地惑星には既に20億人近い領民が住み、領民から納税されている」
「そこで、集めた税金を国税庁官宛に、帝国法務局に供託したのだ。帝国財政も厳しいと聞く。だから少しでも帝国の為に役立ててもらいたいと思ってな!」
「当然、ボッシュ侯爵の手柄にしてもらって構わないぞ!」
「…成る程。そう言う事ですか…帝国の為、有効活用させて頂きます!」
その会話を聞いていたマルティンが「では、そろそろ次の場所へ向かいましょう。木星の物理センターと、月に建設した商業施設で御座います」
「左様か。では、殿下。失礼致します」
そう言って、ボッシュ侯爵は、マルティンの案内で宇宙港へと向かって行った。
「バイオレット。上手く行ったな!」
「はい。チェスター様!流石で御座います!!」
ボッシュ侯爵は、国税庁官として、本来は納税の義務が無い俺の領地から、毎年税金を徴収すると言う手柄を上げる事が出来る。
そして俺は、この惑星を丸ごと別荘だと認めて貰う事が出来た。
1家の農家に、北海道程の広大な土地を任せている。
超~巨大農家だ。
それが、惑星全体の規模で農作業が行われている。
農家を補佐するアンドロイド。
アンドロイドから指示を受けて、24時間年中無休で働き続ける大量のロボット。
これらをアンドロイドやロボットの使用を制限する、法律の適用除外にする事が出来た。
この惑星は丸ごと俺の別荘だとな!
爵位を得る前から認められたのが大きい。
後になってからだと、認めて貰うのが困難だからな!
帝国の重鎮、ボッシュ侯爵が認めたものを他の貴族が覆す事は出来ない。
もし、そんな事をしたら、ボッシュ侯爵の面目丸潰れだ。
貴族は名誉を重んじる。
だから、下手をすると、ボッシュ侯爵との間で戦争になる。
ボッシュ侯爵は、ハルベルト兄上の派閥重鎮でもある。
ハルベルト派を巻き込んだ、大戦争の危険さえある。
だから、もう、この件に触れる貴族はいないハズだ。
ふふふ。
上手く行ったな!
これで帝国首都星に、食糧を安く安定供給が可能になる。
首都星で、食糧問題に起因した、暴動だけは避けなければ…




