婚約式①
帝国議会も終わり、いよいよ社交界シーズンだ。
まず、派閥のパーティーが開催される。
派閥の力を示す為、多くの貴族が参加する…いや、正確に述べるなら、参加させるだな。
参加人数が少ないと、落ち目だと思われて、舐められる。
だから、少しでも多くの貴族を参加させる為、上位貴族の寄子貴族や、その関係者達も動員される。
議会に参加出来ず、投票権も無い、準男爵や騎士爵までもが呼び出される。
そして、派閥のパーティーが終わると、今度は、各貴族家が開催するパーティーだ。
この場合も同様だ。
参加人数が少ないと、落ち目だと思われて、舐められる。
だから、有力貴族のパーティーが、かち合わない様に家臣達が、事前に打ち合わせをして、パーティーの開催日を調整するのだ。
本当に面倒だ。
だから、俺は未成年を理由に、どのパーティーにも参加していなかった。
しかし、今回は別である。
何故なら、俺とソフィアの婚約パーティーだからだ。
出来る事なら、引き込もっていたい。
だが、今回ばかりは、そうも行かない。
「チェスター!準備は出来ているの?」母のクラウディアが心配したのか?
わざわざ、俺の部屋を訪ねてきた。
よほど嬉しいのか?
母がノリノリだ。
「大丈夫です!母上!」
「そうなの?それなら良いけど…今日は、貴族達への顔見せなんだから、シャキっとするのですよ!」
「ソフィアちゃんの方は、どうかしら?」
そう言って、母が部屋を出て行った。
★★★★★
「今日は、私とソフィアの婚約祝いに参加して頂き感謝する!細やかながら酒や料理も用意している。今回は、各貴族領の名産品を取り揃えた。これらは、宇宙に建設中の物流センターでも販売予定の品だ。存分に味わ頂きたい!」
お~!
パチパチ!!
俺の挨拶で、パーティーが幕を開ける。
俺はソフィアをエスコートしながら、舞台から降りる。
すると、まず、皇帝陛下の代理として参加している、宰相シュターデン侯爵が挨拶に来る。
慣例に従い、皇帝陛下は冠婚葬祭には参加しない。
従って、皇帝の代理としてシュターデン侯爵が、一番最初に挨拶に来る。
「婚約おめでとう御座います!」
「ありがとう!」
そして次は、ハルベルト兄上と、その婚約者エリーゼだ。
二人が親密さをアピールする為、腕を組んで近付く。
「チェスター。そして、ソフィア嬢。婚約おめでとう!」
兄上と、エリーゼから祝いの言葉を掛けられる。
次は、三大公爵家だ。
皇帝に跡継ぎが無い場合は、この三大公爵家から次期皇帝を輩出する。
但し、三大公爵家は、政治に参加出来ない事になっている。
分かり易く言うなら、各省庁の要職に就任する事が出来ない。
但し、帝国議会に参加出来るし、投票権も有している。
「お初にお目にかかります。マークス公爵で御座います。本日は、おめでとう御座います」
「ありがとう!」
次は、チェイサー公爵。
そして、クレスト公爵。
ルーベンス公爵。
ボーデン公爵。
そして、ソフィアの父であるワグナー公爵。
「チェスター殿下。ソフィア。婚約おめでとう御座います」
「ありがとう」
「お父様。ありがとう御座います!」
後ろを見ると、俺達に挨拶する貴族達の列が、遥か彼方まで続いていたのだった。
★★★★★
長い列に、やっと終わりが見える。
俺の寄子の騎士爵、ドンガと妻のランガ。
そして、最後がポールだった。
ポールが女性をエスコートしている。
ポールにも、婚約者が居ると初めて知ったのだった。
よし!
やっと終わった!
挨拶だけで、何時間も掛かった。
だが、これで終わりでは無い。
各貴族領地の名産品を取り揃えた売店?と言うか、屋台を多数出店している。
全部は無理だが、多少は口を付けなければならない。
俺はソフィアと腕を組んで、巨大なドーム内を歩く。
大盛況だった。
貴族達が「我が領地の名物を食べてみてくれ!」
「おお!美味ではないか!では、是非、我が領の名物も試食してくれ!」
「分かった!場所は何処だ?」
「案内しよう!」
貴族達が、互いの名物を薦めあい、そして、褒め合う。
とても良い雰囲気だな!
場所代は無料だし、持ち込まれた食材もすべて俺の買い上げ。
貴族達には、何の負担も無く、自身の領地の特産品を宣伝出来る。
俺とソフィアが腕を組んで歩いていると、次から次へと、参加する貴族達から声が掛かる。
「殿下!是非、我が領地の特産品を試食して下さい!」
余りにも多過ぎて、食べ切れない。
しかし、断り方にも注意が必要だ。
参加している貴族達のプライドを傷つけてはならない。
「後で頂こう!」
「是非、お願い致します!!」
こう言うやり取りが続く。
「ソフィア。疲れてないか?」
俺が聞くと、ソフィアが「大丈夫で御座います!」と返事をした。
…ソフィアが疲れている事を口実にして、引き上げる積もりだったが、まだ、会場を回らないといけない様だ。
そんな事を思いながら進んで行くと、ある人物達に声を掛けられる。
「殿下!お疲れで御座いましよう。是非、私のブースで一休みして行って頂けませんか?」
…政治の話か…でも、こいつらには興味がある。
「ソフィア。ここで、一休みさせてもらおう」
「はい。チェスター様!」
俺達が椅子に腰かけると、テーブルの上に飲み物が出される。
俺は要件を聞く事にする。
相手は2人。
そして、2人とも伯爵家の当主だ。
コルテン伯爵と、ガーランド伯爵。
俺がゲルハルトから、婚約祝を渡すと言って呼び出された時、心配そうに俺の事を見ていた2人だ。
土星の月に建設するブースに、彼らも出店すると、バイオレットから報告を受けていた。
ゲルハルトに忠誠を誓っていれば、断るハズである。
やはり、俺の見立て通り、彼らはゲルハルト派から、俺の派閥への鞍替えを考えているのだろう。
「さて、要件は何かな?」
「はい、殿下…単刀直入に申し上げます。是非、我々をチェスター殿下の派閥に加えて頂きたく…」
事前に、ガブさんから聞いていたから、別に驚かない。
また、ガブさんは、2人の派閥入りに賛成していた。
「私の派閥に入るには、ルールがある。派閥に入っている上位貴族の推薦が必要だ。私がルールを破る訳には行かない。後は、自分達で何とかするんだな」
「承知しました…しかし、2家同時となると、些かハードルが高いですな…」
どうやら、発想の転換が出来ないらしい。
「2家同時で無くても良いのでは無いか?加入出来る家から先に加入すれば良いのだ!」
「成る程…アドバイス。感謝致します!」
俺とソフィアは、ブースを出て、また、歩き始める。
今日の婚約式は、貴族家当主とその妻しか参加していないが、明日は貴族の子供達や関係者を招いている。
そして、その後は一般開放。
バイオレットによると、一般向けのチケットは完売したそうだ。
無事に終わる事を祈るばかりである。




