第1皇子派の会合再び。
「忙しい時に集まってくれて感謝する」
ゲルハルトの挨拶で会合が始まった。
今回も司会進行は、ゲルハルトの側近のエミールである。
「先日の宇宙港建設に付いて、進展がありましたので、皆様にご報告と、ご意見を賜りたく。本日お集まり頂いた次第で御座います」
「まず、チェスター派からの返答ですが、現在、首都星で行っている開発計画が終了してからなら、ポストの交換に応じる用意があるとの事です」
「これは恐らく、我々が建設長官のポストを得た後で、チェスター殿下の開発計画の承認取消等を危惧した措置だと思われます」
「チェスター殿下も案外、視野が狭い様だ…我々がそんな事をする訳が無い」
「まあまあ、チェスター殿下はまだ幼い。多少の事は目を瞑ろうでは無いか!」
「確かに貴殿の言う通りだな。ポストの交換が出来るなら問題ないか…」
エミールが更に話を続ける「それから、見返りを要求しております」
「それは仕方なかろう。我々の方から申し入れたのだからな。それで、何を求めてきたのだ?」
「はい。惑星の譲渡を求めておいでです…」
「…私の記憶では、現在、人が居住可能な惑星に空きは無かったと思うが…」
「場所は何処なのだ?」
エミールがタブレットを操作し、スクリーンに投影する。
「場所は現在、チェスター殿下が開発中の惑星と、先日、ゲルハルト殿下が婚約祝いとしてチェスター殿下に贈られた、旧ホフマン男爵領との中間付近にある、こちらの惑星で御座います…」
「ここは、シューマッハ男爵領となっておるが…シューマッハ男爵とは誰だ?聞いた事の無い家名だが…」
エミールがタブレットを操作し、シューマッハ男爵の資料を投影した。
そして説明を始める。
「元々はチェスター殿下の親戚筋に当たるシュナイダー伯爵家の寄子でしたが、寄親シュナイダー伯爵の指示に従わず、絶縁されました。その後、寄親となる上位貴族を探しましたが見付からず。現在は、アドルフ殿下の派閥に属している男爵家です」
「ゲルハルト殿下には、関係無い話では無いか!」
「はい。それは我々も筋が違うと申し入れたのですが…それなら、アドルフ殿下と交渉し、建設長官のポストをアドルフ派に渡してもかまわないと…」
「何と!まったく、いまいまし…」
今まで発言を控えていたゲルハルトが口を開く。
「誰か?良いアイデアは無いか?」
「それでは、こう言うのはどうでしょう。まず、私がシューマッハ男爵と接触し、寄親になると話します。そして、寄親の私がゲルハルト殿下の派閥。従って、シューマッハ男爵にはアドルフ派を抜けて貰います」
「その上で、領地をゲルハルト殿下に譲らせ、シューマッハ男爵には、帝国の…何処かの役所にポジションを用意し、彼には法衣貴族になって貰いましよう」
「当然、総てが片付いたら、私は寄親を辞めさせて頂きますが…」
「おお!良いお考えだ!」
「流石はランスベルク伯爵だ!」
そう。
ランスベルク伯爵は、ハルベルト派の重鎮で、ハルベルトの婚約者、エリーゼの父である、ボーデン公爵家のスパイである。
彼は、ハルベルトとチェスターの仲が良い事を知っている。
そこで、チェスターの希望通りに進む様、知恵を働かせたのである。
また、彼は、ハルベルト派が、軍の納入物資の随意契約を500年延長する事が、ポスト交換条件にされている事を事前に聞かされていた。
そう、ボーデン公爵は、事前にその事を伝えただけ。
だが知恵の回る彼は、意味をきちんと理解していた。
だから、世間に知られる前に、第1皇子派貴族に関連する商会の株式を購入。
そして、随意契約の延長が発表され、株価が上昇したら売却し、売り抜ける予定である。
ランスベルク伯爵は、表向きは、ゲルハルト派の重鎮である。
従って、株の売買で利益を得ても、疑う者はいない。
これは、危険なスパイ行為に対する、ボーデン公爵からの臨時報酬である。
だが、ハルベルト派が、アンドロイドやロボットの使用を制限する法案を準備中である事までは、知らされていなかった。
司会進行役のエミールが「では、ランスベルク伯爵の提案に反対の方はいらっしゃいますか?」と聞く。
「異議なし!!」
こうして、ランスベルク伯爵の提案が採決されたのだった。
★★★★★
議題が次に移る。
エミールが「では、次にハルベルト派との折衝に付きご報告致します。ハルベルト派は、現在、我々が帝国軍と行っている随意契約を向こう500年間の長期契約を結ぶなら応じても良いと…」
「但し、ポジションを譲るのは、10年後だと申しております。如何致しますか?」
「ふふふ。ハルベルト派は、統合作戦本部長の椅子を我らに奪われたのが、よほどショックだったと見える」
「確かに!だから再び奪われない様、随意契約の延長を申し入れたのでしような」
「今契約を延長しておけば、少なくとも、500年は安泰だと考えたのでしよう」
「600年を考えていた。だから予定より100年も短くて済みましたぞ!」
「確かにそうだな!」
「ワッハッハ~」
ゲルハルト派の貴族達は上機嫌だった。
「では、次の議題に移ります。南半球に購入する建設用地の件です」とエミールが述べる。
すると「そんな雑事は、下級貴族にでもやらせておけば良い!」
「確かにそうですな!我々は、いろいろと忙しい」
「確かに、その通りだ!!」
「資金の大枠を決め、その枠の中で処理させれば良い」
こうして、下級貴族のヒューズ男爵が、この任に当たる事とされた。
ヒューズ男爵本人が、その事を知るのは、この数日後の事だった。




