貴族達がやって来る。第1皇子派①
「皆ご苦労!今日は集まってくれて感謝する!」
ゲルハルトの言葉に、皆が頭を下げた。
ゲルハルトが着席する。
「皆も座ってくれ!」
ゲルハルトの言葉を待って、全員が着席した。
帝国の役職についていない、大部分の領地持ちの貴族達は、自身の領地で領地経営を行っている。
そこで、ゲルハルトの側近エミールが、この1年に起こった出来事をかい摘まんで説明する。
「この度、第4皇子のチェスター殿下と、ワグナー公爵家令嬢ソフィア嬢との婚姻が決定し、帝国から発表される事になった」
これを聞いた派閥の貴族達が怒り始める。
「何故?チェスター殿下なのだ?公爵家令嬢との婚姻は、ゲルハルト殿下こそ相応しいではないか!」
「そうだ!ワグナー公爵は何を考えているのだ!お歳を召して惚けたか?」
「物事には順番と言うものがある!チェスター殿下は礼儀と言うものを知りませんな」
「ゲルハルト殿下!もしよろしければ、我が娘ヴィクトリアは如何ですか?父親の私が言うのもなんですが、器量良しですぞ!」
「何を仰る、殿下!是非、我が娘を!」
「皆様!静粛に!」
エミールの言葉にで場が静まる。
「チェスター殿下とソフィア嬢との婚姻は、既に皇帝陛下がお認めになった事です」
「そう言えば最近、ハルベルト殿下とチェスター殿下が懇意にしていると聞く。何でも一緒に炊き出しに行ったとか…」
「2人が手を組むと、いささか厄介ではありませんか?」
「確かに、現在、我々はハルベルト派と激しく争っている最中。2方面作戦は良くない!」
「ならば、チェスター派の力を削ぐのはどうだ?弱い方から叩く。それが鉄則だ!」
「では、どうやって叩く?」
「そう言えば、我が家の御用商人から聞いたのだが、チェスター殿下が首都星に宇宙港を建設中だとか…現行の宇宙港では荷が捌ききれず、我が家が送った小麦や豆も、入港するのに数ヶ月待ちだ。チェスター殿下が建設中の宇宙港が完成したら、さぞかし儲かる事だろうな…」
「それはいかん!チェスター殿下は皇位継承権を辞退し、自分は公爵になると公言しておる。1貴族が富を独占するのは如何な物か…」
「確かに!チェスター殿下は、北半球に3ヵ所の宇宙港を建設する様だ!3ヵ所の用地の内、2ヵ所はアドルフ殿下が贈ったと聞いたが事実か?」
「はい。事実で御座います」エミールが答えた。
「全く…アドルフ殿下は、ろくな事をしませんな!敵に塩を送るとは…」
「確かに…ゲルハルト殿下と同じ血をひいているとは思えませんぞ!」
その発言を聞いて、場がし~んとなる。
不敬罪に当たるからだ。
「…私とした事が…口が滑りました…」
「まあ良い。水に流そう」
ゲルハルトが言い、派閥の仲間を救う。
「皆様!南半球が開いているとは、思いませんかな?」
「おお!確かに!」
「チェスター殿下だけに良い思いをさせる訳には行きませんぞ!」
「なら、我々が南半球に宇宙港を作ってはどうか?」
「おお!とても良いお考えだ!是非、私も1枚咬ませて下さい!」
「私も!是非!」
それを聞いたエミールが「では、皆から資金を預かり、派閥で宇宙港を建設するのは如何でしょうか?」
『異議なし!!』
こうして、ゲルハルト派が、南半球に宇宙港を建設する事が決定したのだった。
既にチェスターが、南半球に3ヵ所の土地を購入。
建設省と宇宙局から建設許可を得ており、もう建設する余地が無いとは知らずに…
貴族達は、チェスターの力を削ぐと言う当初の目的を忘れ、自身が利益を得る事に関心が移っていた。
エミールが「宇宙港建設の方法ですが、何か意見のある方はいらっしゃいますか?」と言う。
「用地の買収は、配下の下級貴族達にやらせれば良かろう。予算を決めて、予算内で購入させれば良い。それよりも問題は、建設長官はチェスター派。宇宙局長はハルベルト派。どうやって許可を取るか…」
「建設長官だが、後数年で任期が切れる様だ。」タブレットを開き、建設省の情報を確認した貴族が言う
「それなら、後任を我々の派閥から出せるかも知れんな」それを聞いた貴族が言う。
「宰相への根回しが必要だな…だが、宰相の事だ、派閥のバランスを気にして、難色を示すかもしれんぞ」
「それなら、交通長官のポジションを譲ってはどうだ?チェスター殿下は、自身の領地に物流センターを建設中と聞く。物流センターから首都星の宇宙港迄の航路が必要だろう。だから、関係省庁の交通省のポジションなら交渉可能では無いか?」
「確かに、ポジションをチェンジするなら派閥のバランスが崩れない。その方法なら宰相も了承するだろう」
「問題はハルベルト殿下だな…どうしたものか…」
「ならば、帝国軍の統合作戦本部長の席を譲ってはどうか?元々あのポジションは、ハルベルト派だったのを我々が奪い取ったハズだ。帝国は予算不足で難儀しておるからな」
「だから、我々が帝国軍に食糧品等の消耗品を随意契約で安く納める事を条件に、宰相に認めさせた。統合作戦本部長のポジションがハルベルト派に代わっても、引き続き我々が安く納めると言えば、宰相も納得するだろう」
ゲルハルトが発言する「随意契約は、何年間結んでいるのだ?」
「はい。残りの契約期間は約300年で御座います」
「そうか…問題無いのか?」
「はい。我々の領地では、アンドロイドやロボットが365日、24時間働き続けておりますからな!今の倍。600年の契約を結んでも、何の問題も御座いませんぞ!」
「そうか、それなら現行の条件で、最大600年間の随意契約を結ぶ事を条件に、帝国軍統合作戦本部長の席をハルベルト派に譲り、代わって宇宙局長のポストを得る交渉を宰相と行ってくれ!」
「承知しました!!」
彼らは知らない。
アンドロイドやロボットの使用を制限する法案をハルベルト派が用意している事を。
帝国宰相を始め中立派の重鎮達に、秘密裏に根回しを行っている事を。
彼らは知らないのであった。




