グルメなケビン。
俺が屋敷でだらけていると、ケビンがやって来た。
こいつは俺の幼馴染みだ。
俺の側近候補として、小さな頃からこの屋敷で暮らしている。
俺は屋敷に引きこもってるから、友達はケビンしか居ない。
皇子として、これではいけないのではないか?と思わないでも無い。
ケビンは俺の母クラウディアの実家、ミュラー伯爵家の寄子のチェルシー子爵家3男坊だ。
チェルシー子爵家には、娘しか産まれなかった。
そこで、ミュラー伯爵家の前当主の弟。
つまり、俺の祖父の弟が婿養子に入った。
だから、俺とケビンは親戚同士でもある。
ケビンは、良い言い方をするとグルメ。
悪い言い方をするなら、食いしん坊のポッチャリさんだ。
「チェスター。お小遣いを恵んでくれ~」
また、こいつはお小遣いを使い切ってしまったらしい。
毎月の事だから、別に驚かない。
そしてケビンには、公の場以外では、チェスターと呼ぶ事を許している。
「ケビン。お前は、また、お小遣いを使い切ったのか?計画的に使えと言ってるだろうが!」
こいつの趣味は、食べ歩きだ。
貴族家の人間ではあるが、俺の様に皇族では無い。
だから、俺に比べたら外出し易い。
外出する時は、貴族らしからぬカジュアルな服装で出掛ける。
まあ、貴族家の人間だから、護衛は付くが…
週に3日は外出し、食べ歩いている。
宮殿で、1日3度の食事をしっかり食べて、それとは別に外食しているのだ。
だから、こいつの体はポッチャリさんだ。
「何か?面白い話はあったか?」
ケビンは俺の情報源でもある。
外務長官のマーガレットは、帝国や貴族達との交渉役だ。
だから、帝国や各貴族の情報収集もしている。
それから商人のノア。
ノアは商人や、その護衛をする傭兵達とのパイプを構築して、情報収集をしている。
後は、ミアとエラ。
この2人は、バイオレットの眷属で、情報収集担当だ。
だが、帝国首都星には数え切れない程の人間が暮らしている。
豊かさを目指して首都星に密入国した不法移民や、その子孫達。
余りにも人数が多すぎて、正確な住民数は、帝国ですら掌握出来ていないのが現状だ。
ケビンは、そのポッチャリ体型からか?
それとも、貴族家の関係者とは思えない、ポワ~ンとした性格だからなのか?
人の懐に入り込むのが上手い。
街に出て食べ歩いたり、貴族なのに何の躊躇もなく、大衆食堂に入って食事したり…そして、そこで色々な人と会話し、庶民達から噂話を聞いてくる。
まあ、殆んどは、どうでも良い情報だったらりするのだが、その中に、たまに良い情報が混じってたりする。
ミアとエラも、一生懸命に働いている事は知っている。
だが、彼女やその眷属達だけでは、全ての情報を収集出来る訳ではない。
だから俺は、小遣いをやる代わりに、ケビンが庶民達から聞いてきた話を聞くのだ。
「ケビン。何か無いのか?」
「う~ん…今日はチェスターが開発した土地にある大衆食堂へ行ってきたんだ。行列が出来てたから、きっと美味しいんじゃないかな~と思って!それで行列に並んで…順番待ちをしている時に、周りにいた常連さんにお奨めを聞いて、食べてきた!」
「…それで?…」
「美味しかったよ!凄~く!!」
「…それだけか?」
「…ああ、そう言えば、最近はマフィアが居なくなったって言ってたなぁ~理由は知らないけど…」
「マフィア?」
「うん。チェスターが開発する前は、マフィアの縄張で、マフィアの構成員が街を徘徊してたんだって!」
「でも最近は、まったく見なくなったて、言ってたな~」
そう言えば以前、内務長官のマルティンが、警察組織を立ち上げて、訓練中だと言っていた。
現場に投入されたのかも知れないな。
「そうか、まあ良い。ケビン!小遣いをやる」
俺はタブレットを開き、ケビンの口座に送金する。
ケビンが自分のタブレットを開き、そして確認する。
「お~!こんなに!チェスターありがとう!」
ここで俺は閃く!
ケビンは将来、大きな手柄を立てて爵位を貰うか?
貴族家に婿入りするか?
または、帝国が認める規模の商会のオーナーになるか?
それが出来なれば、一代限りの貴族。
準男爵だ。
そして、当然、俺の寄子になる。
こいつが自立しないと、寄親であるこの俺が、ケビンの生活の面倒を見なくちゃいけなくなる。
俺の生活費は、基本的には領民達が納める税金から支出される。
俺には領主としての仕事がある。
少なくとも子孫に家督を譲るまでは…
でも、ケビンが自立出来ないと、こいつの生活の面倒を税金から払う事になる。
つまり、こいつに収入源が必要だと言う事だ。
生活するに必要な生活費を自分で稼げば、税金からの支出が減るからな!
「おい、ケビン!今まで食べた店の場所や店名。それから、どんなジャンルの料理で、味はどうだったとか、いろいろメモとかしてるのか?」
「いや。まったくしてない!」
「しろよ!!」
「よし、ケビン。良く聞け!今後は住所や店名。それから、味の評価を付けてバイオレットに送れ!味の評価は…☆印にするか…☆5つが最高評価だ。良いな!ちゃんとやれよ!」
「うん。分かったよ、チェスター。でも、そんな事してどうするの?」
「グルメ本を作る!本が売れれば、印税収入で生活出来るかも知れないぞ!そうだな…まず、俺が開発した街からだ。グルメ本を見て、俺が開発した街へ行こう!と思う人もいるかも知れないからな!」
「追加の小遣いをやるから、頑張れよ!」
「ああ、分かった。やってみるよ!」
ふふふ。
前世の記憶から、ミ○ュラ○ガイドの事を思い出した。
ケビンには文章能力が無い。
だから、バイオレット達に内容を纏めさせて、情報を売らせる。
上手く行けば、ケビンの生活費の足しになるだろう。
ケビンのグルメ情報を元にして、ノアが買収したテレビ局で放送するのもアリだな。
レポーターが店から中継する。
そのテレビ番組を見た市民が、店に食べに行く。
つまり、俺の領地に人がやって来て、お金を落とすと言う事だ!
食材等は、宇宙港経由で納品出来るし、良い事尽くめじゃないか?
俺の部下達は優秀だから、何とかするだろう。
俺が横から口出しすると、彼奴らもやり難いだろうから、大枠だけきめて、後の事は部下達に丸投げしよう!
その後、俺はバイオレットを呼んで、計画の大枠を説明をしたのだった。




